NIPT(ニプト)とは、Non-invasive Prenatal Genetic Testingの略称で、母体血を用いた出生前遺伝学的検査で、妊娠10~16週に採血を行い、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーについての確率(陽性、陰性、判定保留)を計算する検査です。
この検査、日本では約15~21万円する高額な検査であること、また生前遺伝検査を行い、結果による堕胎の可能性もあることから、倫理的な問題があるとして、あまり一般的ではありません。しかし、もし妊娠中にこの検査について医師から案内され、もう少し安価に受けられるとしたら、あなたは受けますか?
DNA |
NIPTで調べられること
妊婦から採血し、染色体異常について調べます。トリソミーとは、染色体が1本余分に存在し、合計で3本になった状態を言います。21トリソミーは、ダウン症の可能性、18トリソミーはエドワーズ症候群、13トリソミーはパトウ症候群の可能性を示唆します。ダウン症については、詳細は知らないまでも、名前は聞いたことがあると思いますが、エドワーズ症候群や、パトウ症候群については、あまり知られていないのではないかと思います。エドワーズ症候群およびパトウ症候群については、出産に至るのはごくわずかと言われ、妊娠中に亡くなってしまうか、出産後の生存率は低いといわれています。
NIPTのメリット
NIPTの結果は、(オランダにおいて、医師の説明によると)95%以上の精度であるといわれています。そのため、妊婦は結果に対する信頼から、妊娠・出産に対する準備をすることができます。また、ダウン症の検査として知られる羊水検査は外部から針で腹部を刺して羊水を摂取する検査であるため、母体への負担が高いのですが、このNIPTは採血のみであることから、母体への負担は低いことです。ただ、NIPTで陽性となった場合は、羊水検査などの検査を行います。
NIPTのデメリット
日本においては、保険の適用がないため、検査費用が高いこと。早い段階で赤ちゃんの染色体疾患がわかった場合、産後どのように赤ちゃんを育てていけばよいのか、大きなショックを受けて思い悩む時間が多くなると聞きます。さらに、陰性であっても仮陰性かもしれないという不安を持つ人も少なくないといいます。また、この検査では通常は3つの疾患しか調べることができません。(国によってはそれ以上を調べることが可能です。)NIPTの日本での状況
初婚年齢は、毎年上昇し、それに伴い高齢出産(35歳以上で初めて出産)の割合も増えています。一方で、日本では出生前検査の非確定検査は全体で、1.7%の妊婦さんのみが受けているという調査があります。倫理的な観点から、すべての妊婦さんに出生前診断の積極的な説明はされていないといわれています。NIPTの倫理的問題とは、「胎児が先天的な障がいをもっていると判明した場合、それを理由に中絶することは許されるか」という、選択的妊娠中絶の問題です。母体保護法により、身体的または経済的理由により妊娠と出産が母体の健康を著しく害する可能性がある場合には、中絶をすることが認められているものの※、胎児の先天的障害を理由に中絶することを認める「胎児条項」は日本の法律には存在していません。
今後、出生前検査が日本社会に定着した場合、障がいをもつ胎児を堕胎することが当たり前となってしまうこと、そういう風潮をつくるのではないかと言われています。
※日本での人工妊娠中絶の件数は、168,015 件(平成28年度)。
他国のNIPTの状況
欧米の国では、特に高齢出産である場合、新型出生前診断は一般化されつつあると思います。各国によりその費用負担額も異なりますが、国が補助を行うことで、妊婦の費用負担は抑えられるようになっています。
NIPTについて、看護師や、助産婦が妊婦に対して説明し、その後のことについては、相談するというシステムがある国が多く、検査とケアが一緒になっていることも特徴的です。それらの事情から、欧米の国では妊婦が積極的にNIPTを受けています。
また、人工妊娠中絶に関する法律も国によって異なりますが、中絶の条件制限がない国もあります。中絶の割合が増加する可能性もありますが、カウンセリングなども充実し、女性に自由な選択肢を与えることができるとも言えます。
NIPTについて、看護師や、助産婦が妊婦に対して説明し、その後のことについては、相談するというシステムがある国が多く、検査とケアが一緒になっていることも特徴的です。それらの事情から、欧米の国では妊婦が積極的にNIPTを受けています。
また、人工妊娠中絶に関する法律も国によって異なりますが、中絶の条件制限がない国もあります。中絶の割合が増加する可能性もありますが、カウンセリングなども充実し、女性に自由な選択肢を与えることができるとも言えます。
オランダの場合
オランダは、2014年から新型出生前診断(NIPT)が許可されていますが、胎児がダウン症候群の可能性がある場合に限られていました。しかし、2017年から、年齢や健康状態などにかかわらず、妊娠中の女性は誰でも希望すれば新型出生前診断(NIPT)を受けることができるようになりました。妊娠10週前後に病院や産婦人科で、受けるか否かについて聞かれます。パンフレットなどをもらい、また簡単に医師や看護師からも簡単ではありますが、説明を受けます。
調べられるのは、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミー、そしてその他の染色体異常についてですが、”その他”というのは、異常を見つけてもそれがどういうものであるのかまではわからないという程度のものです。つまり、検査をして、21、18、13トリソミー以外で異常が認められても、それが胎児にもたらす影響はわからないため、妊婦は、21、18、13トリソミーのみあるいは、その他も含めるのか、選択することができます。
費用は175ユーロ(約2万3千円)(2021年現在)で、これはその他を含めても費用は変わりません。安価とはいえませんが、近隣国のフランスでは、500ユーロ以上(保険適用外)、ドイツでは、300ユーロから400ユーロ、イギリスも同様の値段であることから、近隣国と比較すると支払い易い額です。検査の結果は2週間後に自宅に郵送されます。強制ではありませんが多くの妊婦は受ける選択をすると聞きます。
NIPTを実際受けてみて
日本では一般的ではないため、まずネットでどういうものか、また病院からもらってきたパンフレットなどを読み、夫とも話し合いました。「染色体異常が認められた場合はどうするか」でした。話し合いはそれほど難航せず、夫婦同意で「出産し、育てる」という結論でした。言うは易し、実際には難しいのでしょうが、授かった命なので、中絶は考えられないという結論でした。まぁ、夫はカトリックなので、教理的にも基本的には中絶はない!ことはわかっていましたが・・・「結果がどうであれ、決断を後悔しない」と自ら誓って受けました。
検査への同意しており、事前に医師に意思表示しておりましたが検査の当日に看護師から、「陽性であった場合、その後どうするのかは、また改めて考えましょう」と言われたことを思い出します。2週間後に届いた結果は、陰性でした。しかし、受けるにしても、受けないにしても心の準備はなかなか簡単ではないなぁとしみじみ感じました。
自らの経験や日本での議論から、日本でも保険適用にすべきと軽々とは言えないものの、検査の結果が直ちに堕胎の選択に結びつかないという調査もあること、日本では生殖に関わる医療が保険適用外であることが多いので、こうした検査も含めて保険の適用とするのか、それ以前に、少子高齢化、女性の社会進出に伴う社会の変化に立ち遅れた様々な仕組みを見直すときなのではないのではと思います。
関連ブログ
参照ウェブサイト
出生前検査に関する実態調査研究(概要)(厚生労働省) PDFファイルスポンサーリンク
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