機動戦士ガンダム「閃光のハサウェイ」ーフィリピン、ダバオがロケ地

ロボットアニメの金字塔と言われる人気作品「機動戦士ガンダム」の新作映画「閃光のハサウェイ」が6月11日から公開。ハサウェイの舞台となるのは、なんとフィリピン、ミンダナオ島の中心的都市、ダバオ!フィリピン関係者としては、ガンダムの物語と共に、フィリピン社会がどう描かれているのか、興味津々です。

Mobile Suit Gundam Hathaway” Trailer (EN sub)
(c) Ganduminfo

閃光のハサウェイとは

日本のアニメ監督、演出家、脚本家、ガンダムの産みの親富野由悠季監督が32年前に自ら執筆した全3巻からなる小説の映画化、映画は三部作で、今回はその一作目です。数多くのガンダムファンを魅了した「逆襲のシャア」の続編と位置付けられており、長年、映像化が期待されてきました。


主役は、ブライト・ノア准将の息子ハサウェイ・ノア。ハサウェイは旧シリーズにも度々登場しているので、ガンダムファンには知られた存在です。
「機動戦士Zガンダム」では、ハサウェイは母ミライ・ノアとともにホンコン・シティで誘拐され、「機動戦士ガンダム  逆襲のシャア」では13歳の少年として登場。第二次ネオ・ジオン戦争(シャアの反乱)に巻き込まれたハサウェイは、無断でモビルスーツに搭乗して出撃。目の前で最愛の人クェス・パラヤを失い、アムロの恋人チェーン・アギを殺害してしまいます。

ブライト・ノア准将とミライ・ノア、シャーミン(妹)、ハサウェイ
(c)創通・サンライズ
映画「閃光のハサウェイ」は第二次ネオ・ジオン抗争から10年が経過した世界。マフティー・ナビーユ・エリンと名乗る正体不明のテロリストが連邦軍を相手に数々のテロを仕掛けていきます。ハサウェイは第二次ネオ・ジオン抗争を経験したことを機にかつてのシャア・アズナブルの思想に傾倒し、反地球連邦組織「マフティー・ナビーユ・エリン」への参加を決意、のちにリーダーとなります。(映画ではそのいきさつに触れていません)

ハサウェイと直接対峙するのが、連邦軍のオーストラリア方面に所属するキルケー部隊、指揮官はケネス大佐、そして部隊のエースとして「ペーネロペー」に搭乗するレーン・エイム。物語の冒頭に出会う、少女ギギ・アンダルシアとケネス大佐との関係性を軸に物語が進んでいきます。


物語で描かれるダバオ

ダバオについて

そもそも、ダバオってどこ?という話ですが、フィリピン南部、ミンダナオ島の商業、金融、教育の中心都市です。現大統領のドゥテルテが大統領となる前に20年間市長を務めた市でもあります。ミンダナオ島は、危険・スポット・広域情報では、レベル2あるいは3の地域です。レベル2とは、「不要不急の渡航はやめてください」レベル3は、「渡航はやめてください」、所謂渡航中止勧告が出されている地域です。ダバオは、レベル2の地域に含まれていますが、他のミンダナオ地域と比較して治安は安定していると思います。
ダバオは日本とつながりが深いフィリピンの都市でもあります。20世紀初頭に移民としてマニラ麻を栽培するために日本人が移住しました。悲しいことに、移民たちの生活は、戦争により、切り裂かれました。戦中は、日本軍に協力を余儀なくされ、戦後は、日本に帰国、強制送還されるか、戦後のフィリピンの反日感情は強かったため素性を隠して生活せざる得なかった人が多かった、そんな場所でもあります。

アニメの背景として描かれたダバオ

街並みは、開発が進んだ地域とローカルが生活する地域が対比するように描かれていました。ローカルのマーケット、住宅地、海岸沿いの民家、フィリピンの国民的ファーストフード店ジョリビーで食事する様子なども実際の様子に忠実に描かれ、フィリピンの街並みの様子が伝わり、フィリピン関係者の話題になり、ローカルのメディアでも報道されました。
ダバオの市場の様子「閃光のハサウェイ」
ダバオの市場の様子「閃光のハサウェイ」
(c)創通・サンライズ
‘Gundam’ in Davao: Chickenjoy, familiar PH brand in new images of anime film
ABS-CBN News


関係者として面白いと思ったのが、ミヘッシャ・ヘンスがジョリビーで注文したのが、ジョリビー一番人気の「チキンジョイ」(フライドチキンとご飯のセットメニュー)、その隣にはローカルのミネラルウォーターブランド「SUMMIT」のデザインに似せたミネラルウォーターがさりげなく置かれていました。また、マーケットには、この地域の名産、ドリアンらしき果物も背景に描かれていたこと。独特の臭みがあるので、好き嫌いは分かれるのですが、ダバオに来たら、ドリアンは絶対に食するべし、と思っていたのでちらりと描かれていたのが面白かったです。

ジョリビーの「チキンジョイ」!アニメでの再現性が高い!!
(c)創通・サンライズ
ハサウェイが乗車したタクシー運転手との会話はフィリピン社会だけではありませんが、現在の社会を反映しており、興味深かったです。

ハサウェイ:・・・魚だってとれないだろ・・・
運転手:島のみんなぐらい食っていけますよ・・・
ハサウェイ:マフティは1000年先のことを言っているようだけど
運転手:暇なんだねぇその人、暮らしってそんな先のことを考えている暇はないやねぇ・・・

高い理想を掲げる反政府軍、しかし一般市民は今日明日をどう生きるかということに関心があるのでした。

ちなみに、ダバオには、物語に描かれる近代的な空港はなく、また主人公が宿泊した超高層ホテルはフィクションです。

なぜダバオ?

なぜ、ダバオ?これに対する明確な回答を見つけることはできませんでしたが、ダバオは、インドネシア等の近隣国にも近く、島が点在しており、ダバオから西、ミンダナオ島西部からインドネシアにかけての地域は、実際に反政府組織が島々に拠点を置いているということもままあり、物語との類似性があり、かつ現実味がある話にも聞こえます。

ガンダム世代ではないけど・・・

ガンダムは最初の放送からすでに43年!、40周年となる2018年には、NHKの特番で人気投票なども行われ、今も根強い人気です。私自身、「機動戦士ガンダム」をリアルタイムで見たことはなく、再々・・・放送(何度目かの再放送かわからないほど)などで観て、難しいアニメだと印象を持ちました。
まぁ、戦争の概念の理解がままならない小学生には、理解しがたいアニメだったと思うのと同時に、ロボットアニメを見慣れていなかったので、夢中にはなれなかった記憶があります。
しかし、年を経て、所謂ガンダム世代の方々と話す機会があり、結構面白いアニメだということを知り、近年Netflixなどでガンダムを見始め、小学校の時に理解できないのは無理はないなぁと思ったのと同時に、結構観るとはまるアニメであることに気が付きました。
そのため「ハサウェイ」映画続編楽しみです。アマゾンのレビューを読むと小説は文章が難解であり、楽しめない😓という評価が多かったものの、こちらも機会があれば読んでみたいと思いました。

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