12月2日は、奴隷制度廃止国際デーでした。1949年に人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約の採択された日にちなんで制定された国際デーです。「奴隷」などと聞くと、はるか昔の話にすら思えてしまうのですが、実は今も存在し、我々の身近にある問題です。
奴隷の考え方は啓蒙思想に相容れないため、年月経ち無くなったかに思われますが、現代までこの仕組みは残っています。奴隷同様な労働や性労働を強制されているような人、「現代の奴隷」状況を余儀無くされている人々が世界で約4,030万人に上ると推測されています。
その中の一つ、移民労働、中東における家政婦が現代の奴隷労働の一つの形態といえます。人権団体、ヒューマンライツウォッチの調べでは、サウジアラビアでは、150万人が家政婦として働いています。海外から出稼ぎに来た女性も非常に多く、斡旋業者を通じて中東の各世帯で家政婦として働くのですが、奴隷のように扱われるケースも多数報告されます。
彼女たちは、巷にあふれる斡旋業者に代金を支払い、職を提供されます。その金額は3,000米ドルから6,000米ドルとフィリピンの一年分の給与あるいはそれ以上にあたる額であるため、多くは親族に借金をするなどして、業者に登録して職を斡旋してもらいます。
斡旋業者は、求職者に対して「ホテル」等のサービス業で働けると約束するのですが、実際、中東の国に到着すると家政婦として、働くことを強いられます。
住み込みの家政婦は中東の国では「労働法」の対象にはならないため、労働者(それ以上に人間として)の権利が侵されても、訴える場所がなく、そのような基本的な制度すら存在しないことがより彼らの立場を厳しい立場にしています。
かりに(性的)暴力で雇用主を訴えようとしても、言葉の壁、制度の壁、文化の壁が立ちふさがります。中には自ら命を断つものや、雇用主にレイプされそうになり過剰防衛で、結果として雇用主を殺害してしまい、死刑となるケースもあり、労働者を送り出した国の政府も恩赦を求めるものの、聞き入れられず刑は執行されています。
また、家政婦は国に到着してすぐに、パスポートを雇用主あるいは斡旋業者に奪われてしまうため、雇用主からシェルターに逃げ込んだ後もすぐの帰国を果たせないというケースも多いようです。個人のパスポートを雇用主が奪うことは違法ですが、それらの人が罰せられることはありません。
オランダで出会ったフィリピン人女性は、中東の某国で家政婦として働き、機会があり中東の某国政府の大使公邸付き家政婦として欧州の大使館公邸で勤務していたそうですが、欧州にあっても公邸内は中東地域。休み、食べ物もろくに与えられず、病気でも病院には行けなかったと証言しています。
中東の家政婦に焦点を当てましたが現代の「奴隷」に関する問題は、日本にも関係しています。知らぬうちに、奴隷同様の雇用形態で働く人の労働によってつくられた製品を知らず知らずのうちに購入していることもあります。ブログ「フィリピンとバナナと日本人、バナナを食べながらフィリピンを想う」でも書いた通り、安くておいしいバナナを供給できる仕組みは、労働者たちの抜け出せない貧困の上に成り立っています。
じゃ、どうするの?となりそうですが、すぐに効果がある策が生み出せるわけでも、政策が発表されるわけでもありません。また、効果があると思われる政策が立案されても、実行する段になり既得権益が障害となり、政策も効果をあげないこともあります(参照ブログ「耕すほどに貧しくなるフィリピンの農民ー農村の貧困を考える」)。考えられるアクションはいろいろありますが、考え抜いて、政策立案者が一般市民を欺けないほどになることがたいせつなのではないかと思います。そんな意味でも、社会問題とその構造をウォッチし続けたいと思います。
山が消えて無くなるまで~ビコール地方と共産主義グループ新人民軍(NPA)~
https://news.abs-cbn.com/overseas/01/02/19/inaliping-ofw-nagsusulong-ngayon-ng-karapatan-ng-domestic-workers
Global Slave Index
https://www.globalslaveryindex.org
Execution of Filipino woman points to Saudi Arabia’s appalling record on work conditions, executions
https://peoplesdispatch.org/2019/02/02/execution-of-filipino-woman-points-to-saudi-arabias-appalling-record-on-work-conditions-executions/
Middle East Maids Committing Suicide
https://www.huffpost.com/entry/middle-east-maids-committ_b_390774?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAAMlvrvN3g7jh4-F3mfk1KWMDHs4QIq36lWdNNNWIbMEUXbZ-J0DNQ9vHL6Lvbl8y_sjrFbqQazoukRs39lz6xvP6rdpaJnt7bfSSlo1j1Y2H8iGIS7Uk-b2Y-qTp-xS251R0GDDKs1ctyEnVb8hGB31w7O5TTp6gWE9i2cOEELR4
As If I Am Not Human
https://www.hrw.org/report/2008/07/07/if-i-am-not-human/abuses-against-asian-domestic-workers-saudi-arabia
Inside Story - The plight of migrant workers in Saudi Arabia
4,030万人以上の現代の奴隷
奴隷とは、人間の人格権が認められず、その人間が、物のように処分されたり売買できる状態で、その主人によって私有財産として「所有」され、可処分できるという考えの元にある仕組みであり、制度であるといえます。奴隷の考え方は啓蒙思想に相容れないため、年月経ち無くなったかに思われますが、現代までこの仕組みは残っています。奴隷同様な労働や性労働を強制されているような人、「現代の奴隷」状況を余儀無くされている人々が世界で約4,030万人に上ると推測されています。
その中の一つ、移民労働、中東における家政婦が現代の奴隷労働の一つの形態といえます。人権団体、ヒューマンライツウォッチの調べでは、サウジアラビアでは、150万人が家政婦として働いています。海外から出稼ぎに来た女性も非常に多く、斡旋業者を通じて中東の各世帯で家政婦として働くのですが、奴隷のように扱われるケースも多数報告されます。
違法斡旋業者
家族の支えるためにより良い給与を求め、中東で家政婦をするケースをフィリピンの田舎でよく耳にしました。実際、家政婦は、フィリピンのみではなく、他のアジアの国、アフリカからもやってきます。彼女たちは、巷にあふれる斡旋業者に代金を支払い、職を提供されます。その金額は3,000米ドルから6,000米ドルとフィリピンの一年分の給与あるいはそれ以上にあたる額であるため、多くは親族に借金をするなどして、業者に登録して職を斡旋してもらいます。
斡旋業者は、求職者に対して「ホテル」等のサービス業で働けると約束するのですが、実際、中東の国に到着すると家政婦として、働くことを強いられます。
死んだほうがマシと思わせる環境
家政婦の労働環境は過酷で人間の基本的ニーズが満たされないケースが報告されています。まず、食事は家族の残り物を食すこと(残飯がない時は食事にありつけないということもあるようです)、勤務時間帯が早朝から夜遅くまでと過酷であり、休日がないこと。雇用主から暴力を振るわれる、性暴力の被害となることもあります。怪我や病気でも医療を受けることはできません。こんな過酷な状況で勤務したものの、給与は月150米ドルから350米ドルですが、給与未払いということもあります。住み込みの家政婦は中東の国では「労働法」の対象にはならないため、労働者(それ以上に人間として)の権利が侵されても、訴える場所がなく、そのような基本的な制度すら存在しないことがより彼らの立場を厳しい立場にしています。
かりに(性的)暴力で雇用主を訴えようとしても、言葉の壁、制度の壁、文化の壁が立ちふさがります。中には自ら命を断つものや、雇用主にレイプされそうになり過剰防衛で、結果として雇用主を殺害してしまい、死刑となるケースもあり、労働者を送り出した国の政府も恩赦を求めるものの、聞き入れられず刑は執行されています。
なぜ逃げられない?
家族が外出する際には、外側から鍵がかけられ、開けられないことが多いようです。パートナーからの暴力の被害者のように、心理的に恐ろしく逃げられないということや、閉鎖的な空間で一日の殆どの時間を費やすために、外に友人もおらず、どこに行ったらよいのかわからない等の理由があるようです。また、家政婦は国に到着してすぐに、パスポートを雇用主あるいは斡旋業者に奪われてしまうため、雇用主からシェルターに逃げ込んだ後もすぐの帰国を果たせないというケースも多いようです。個人のパスポートを雇用主が奪うことは違法ですが、それらの人が罰せられることはありません。
なぜ、中東の家政婦の問題?
この問題が知られるようになってしばらく経つので、今更感もありますが、11月25日は、女性に対する暴力撤廃の国際デーであり、12月10日までは性差別による暴力廃絶活動を行う期間であるため、女性に関する暴力について考える機会となりました。その中で思い浮かんだのが、この中東の家政婦の実態です。オランダで出会ったフィリピン人女性は、中東の某国で家政婦として働き、機会があり中東の某国政府の大使公邸付き家政婦として欧州の大使館公邸で勤務していたそうですが、欧州にあっても公邸内は中東地域。休み、食べ物もろくに与えられず、病気でも病院には行けなかったと証言しています。
中東の家政婦に焦点を当てましたが現代の「奴隷」に関する問題は、日本にも関係しています。知らぬうちに、奴隷同様の雇用形態で働く人の労働によってつくられた製品を知らず知らずのうちに購入していることもあります。ブログ「フィリピンとバナナと日本人、バナナを食べながらフィリピンを想う」でも書いた通り、安くておいしいバナナを供給できる仕組みは、労働者たちの抜け出せない貧困の上に成り立っています。
じゃ、どうするの?となりそうですが、すぐに効果がある策が生み出せるわけでも、政策が発表されるわけでもありません。また、効果があると思われる政策が立案されても、実行する段になり既得権益が障害となり、政策も効果をあげないこともあります(参照ブログ「耕すほどに貧しくなるフィリピンの農民ー農村の貧困を考える」)。考えられるアクションはいろいろありますが、考え抜いて、政策立案者が一般市民を欺けないほどになることがたいせつなのではないかと思います。そんな意味でも、社会問題とその構造をウォッチし続けたいと思います。
関連ブログ
生存戦略としての家族ーフィリピンの家族・親族関係は人々が思う以上の関係山が消えて無くなるまで~ビコール地方と共産主義グループ新人民軍(NPA)~
参考ウェブサイト
Inaliping OFW, nagsusulong ngayon ng karapatan ng domestic workershttps://news.abs-cbn.com/overseas/01/02/19/inaliping-ofw-nagsusulong-ngayon-ng-karapatan-ng-domestic-workers
Global Slave Index
https://www.globalslaveryindex.org
Execution of Filipino woman points to Saudi Arabia’s appalling record on work conditions, executions
https://peoplesdispatch.org/2019/02/02/execution-of-filipino-woman-points-to-saudi-arabias-appalling-record-on-work-conditions-executions/
Middle East Maids Committing Suicide
https://www.huffpost.com/entry/middle-east-maids-committ_b_390774?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAAMlvrvN3g7jh4-F3mfk1KWMDHs4QIq36lWdNNNWIbMEUXbZ-J0DNQ9vHL6Lvbl8y_sjrFbqQazoukRs39lz6xvP6rdpaJnt7bfSSlo1j1Y2H8iGIS7Uk-b2Y-qTp-xS251R0GDDKs1ctyEnVb8hGB31w7O5TTp6gWE9i2cOEELR4
As If I Am Not Human
https://www.hrw.org/report/2008/07/07/if-i-am-not-human/abuses-against-asian-domestic-workers-saudi-arabia
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