山が消えて無くなるまで~ビコール地方と新人民軍(NPA)~

2014年3月27日のMILF(モロ・イスラム解放戦線)とフィリピン政府との歴史的和平の締結から間もなくして、NPA(新人民軍)の幹部が捕まったということがニュースとなりました。フィリピン政府とNPAとの和平交渉は暫く止まっていたので、これを機に何らかの進展を見せるとよいと切実に思います。

NPA(新人民軍)とは、フィリピン共産党(CPP)の軍事組織で、アメリカはNPAをテロ組織と認定し、資産の凍結をしています。毛沢東思想の流れを組み、体制の変革を望みます。三井物産のマニラ支店長、若王子さんを誘拐したのもこのグループといわれます。




大学院時代このグループの分析をしました・・・

MNLF, アブサヤフなどのグループはミンダナオ島の一部の地域に集中しているのに対して、NPAは全国的に広がり、特に貧しい農村部では勢力は衰えつつも今も強い影響力があります。ビコールはその地域の1つで、未だに都心部から遠い地域はNPAに革命税を支払っています。

そのため、ビコール地方でも山間の地域を夜間に通ることはあまりおススメできないと聞きます。今度カラモアンという美しいビーチリゾートに行きますが、陸部を抜けずフェリーで海から行く理由はそうしたリスクを避ける意味もあります。

ビコール地方農村部に強い影響力を持つNPAですが、商業地区にも活動母体があります。大学でも“クラブ”のような形で存在し、学生を日々勧誘しているようです。学生のリクルートのために大学に長く滞在する”学生”もいるため、大学は最大10年大学に留まれるが、10年を超えたら退学としているといいます。

大学生をリクルートする魅力は何といってもその知性。共産主義は思想なのでそれを理解し、またそれを広げられる頭脳が必要です。日本の左翼運動でも大学をを拠点にしてそのメンバーを増やしていくということが行われていましたがその理屈と同じです。

また、街にはシンパが生活しており、情報を逐次上に挙げていると聞きます。そのシンパが住む町には政府軍から依頼を受けた一般市民あるいは軍の関係者がやはりそれらNPAの動きを監視しているといい、こんな平和な町にそれらの人がいるというのはにわかに信じがたいですが、ミンダナオ島で仕事をしている時に、軍の諜報関係の人が一般庶民に”変装”し情報を集めていると聞いたので、なんとなく納得しました。

今のフィリピン様子から考えると共産主義に体制が変わるというのはにわかに信じがたいです。何よりNPAには政府を転覆させるほどのまとまった軍事的力はありません。しかし、「今」ではなく「時」が来るのを彼らは待っていると聞きます。

山が姿を消すためにシャベルで何千、何万回と泥をかいていく作業が必要です。しかし、それを続けていくことで何世代か後には確実に山がなくなります。そんな時を待っているように感じてなりません。

ただ、NPAがいる地域は治安がよくないので、魅力的な投資先とならず経済的発展が遅れるとも見られます。暴力的な産業化を防ぐという意味ではよいのかもしれませんが、貧しい地域が貧しいままというのはなんともです。

政府とNPAとの和平交渉が再開されることを願っています。


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