近々イスラエル旅行に行く予定ですが、その前にイスラエルについて学ぼう!と思い、見はじめたのが、Netflixドラマ「ザ・スパイ(The Spy)」。実在したイスラエル諜報機関モサドのスパイ「エリ・コーエン」のスパイ活動にインスパイアされ制作され、手に汗握るスパイ劇です。
スパイというとどうしても、「スパイなんてのはなもっと勤勉な野郎がやることさ」Byポルコ・ロッソ(紅の豚)のセリフを思い出してしまいますが、ドラマからは「勤勉さ」もそうですが、計画の「緻密さ」、し尽された「計算」を感じました。
ドラマは、1967年のイスラエルとシリアの6日間戦争に至るまでの1961年から1965年、スパイ・コーエンがシリア人のビジネスマン、カメル・アミン・タベット(Kamel Amin Thaabet)という偽りの身分でシリアに侵入し、シリア社会の上層部、とくに軍部に協力なコネを築き、諜報活動を続け、その活動が暴かれるまでの半生を描いております。
ドラマには有名なエピソードも描かれています。カメルは軍部のツテがあり、イスラエルににらみをきかせているゴラン高原のシリア軍の陣中見舞いをすることになりましたが、その際直射日光に晒され、疲弊する兵士に同情するフリをして、ユーカリの木を植樹することをシリア軍に助言しました。
1967年の第三次中東戦争(六日戦争)の際には、この植樹された木を目印にイスラエル軍の攻撃が行われ、わずか2日間でゴラン高原がイスラエルの手に落ちました。このエピソードはコーエンの実際の活動によるものといわれており、ゴラン高原には彼の記念碑があります。(以降、イスラエルによりゴラン高原の実行支配が続いており、イスラエルはその所有を訴えているものの、認められておりません。)
また、ドラマでコーエンはスイスのモサドの拠点(一見してただの住宅)を通過して任国であるシリアに入るのですが、コーエンから、カメル・アミン・タベットに「なる」シーンは印象的です。単純に服装や持ち物を変えるだけのことですが、任務のためにコーエンの痕跡を残さず、カメルの服装や持ち物を与える際、クローゼットの右側にコーエンの持ち物を保管、左側にカメルの衣服や持ち物がしまわれています。右側が本人の人格で、左側が彼がふんするカメルの人格を象徴しているようです。
ドラマの見どころは、諜報戦と2重生活をおくるスパイの心理ですが、背景となる古都ダマスカスの風景が美しい。中世建築や豊かな文化史で知られる観光都市ダマスカスは、世界一古い都市と言われています。1960年代、周辺国と緊張関係にありつつも、発展した町の様子も伺えます。
国連安全保障理事会は決議497「イスラエルのゴラン高原併合は国際法に対して無効である」としましたが、イスラエルの実行支配は続いております。今年3月に米国トランプ大統領がゴラン高原のイスラエル主権認定して、アラブ諸国から非難されたことはまだ記憶に新しいでしょう。
[書籍]踊り子、高級娼婦、スパイ!パウロコエーリョ作「ザ・スパイ」から女性スパイの代名詞マタ・ハリ(Mata Hari)の人生
https://www.hadracha.org/sw/historyView.asp?method=r&historyID=77
Jewish Virtual Library、Eli Cohen
https://www.jewishvirtuallibrary.org/eli-cohen
スパイというとどうしても、「スパイなんてのはなもっと勤勉な野郎がやることさ」Byポルコ・ロッソ(紅の豚)のセリフを思い出してしまいますが、ドラマからは「勤勉さ」もそうですが、計画の「緻密さ」、し尽された「計算」を感じました。
ドラマ「ザ・スパイ」とは?
書籍「L'espion qui venait d'Israël (The Spy Who Came From Israel)」を元にして、フランスの制作会社とNetflixによってこのドラマは制作されました。2019年9月からNetflixで配信されています。このドラマに登場する人物や歴史的事実の正確性にかけるという批判がある一方で、ドラマとしてよく制作されておりレビューは概ね好意的であったようです。ドラマは、1967年のイスラエルとシリアの6日間戦争に至るまでの1961年から1965年、スパイ・コーエンがシリア人のビジネスマン、カメル・アミン・タベット(Kamel Amin Thaabet)という偽りの身分でシリアに侵入し、シリア社会の上層部、とくに軍部に協力なコネを築き、諜報活動を続け、その活動が暴かれるまでの半生を描いております。
エリ・コーエンを演じたサシャ・バロン・コーエン
ドラマでイスラエルの諜報機関モサドのスパイ、エリ・コーエンを演じたのは風刺的コメディ映画「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」(2006年)で主演した、英国人俳優サシャ・バロン・コーエン。サシャ自身はユダヤ人です。アニメ・ドラゴンボールのMr.サタンのような風貌が印象的な面長の彼に、こんなシリアスな役が務まるのだろうか?と思いながらも、さすがという役作りでした。特に彼の役柄は、エリ・コーエンとそのコーエンが演じる別人カメル、劇中劇の様相を呈しており、その2人の人格の間揺れ動く人間心理も描かれています。エリ・コーエンとして生きる世界(イスラエルに残した家族やその周辺の人間関係)は、モノトーンな画面に映し出され、スパイの生活の影のように何故か色あせてみえるように視覚的な効果が加えられています。エリ・コーエンの実際のスパイ活動
カメルは、シリアの中枢の政治家や、軍幹部、影響力の大きい公人、外交団などに接近し、信頼を得、その関係の中で重要な情報を得ることに成功します。自宅のアパートで開催したパーティには顔ぶれは、ビジネスマン、軍関係者等で、カメルは酔っ払うフリをしながら情報を収集しました。様々な方法で収集された情報は、暗号機、書簡等や直接報告されました。ドラマには有名なエピソードも描かれています。カメルは軍部のツテがあり、イスラエルににらみをきかせているゴラン高原のシリア軍の陣中見舞いをすることになりましたが、その際直射日光に晒され、疲弊する兵士に同情するフリをして、ユーカリの木を植樹することをシリア軍に助言しました。
1967年の第三次中東戦争(六日戦争)の際には、この植樹された木を目印にイスラエル軍の攻撃が行われ、わずか2日間でゴラン高原がイスラエルの手に落ちました。このエピソードはコーエンの実際の活動によるものといわれており、ゴラン高原には彼の記念碑があります。(以降、イスラエルによりゴラン高原の実行支配が続いており、イスラエルはその所有を訴えているものの、認められておりません。)
逮捕・死刑・そして・・・
1965年1月、ソビエトの専門家の支援により、非合法な電波(暗号機)の発信元が特定され、シリアの保安当局がコーヘンのアパートに突入して、イスラエルへの通信の最中だったコーヘンが逮捕され、のちスパイ罪で有罪となり、死刑が確定。1965年5月18日コーヘンは、ダマスカスのマルジェ広場で公開絞首刑となりました。コーヘンの遺体は遺族の訴えも虚しく、母国に帰還できていません。興味深かった点
物語のはじめに出てくる、スパイとなるための訓練は、予想を超えるものではないものの興味深いものでした。身体的タフさは必須であるため身体能力を向上させるための基礎トレーニング、そして関係者の顔と名前とポジションの暗記、暗号器を短い時間で正確に打つこと等など、こうした基礎を確実にしたうえで、モサドが立てた緻密な計算が活きるのだということを感じました。また、ドラマでコーエンはスイスのモサドの拠点(一見してただの住宅)を通過して任国であるシリアに入るのですが、コーエンから、カメル・アミン・タベットに「なる」シーンは印象的です。単純に服装や持ち物を変えるだけのことですが、任務のためにコーエンの痕跡を残さず、カメルの服装や持ち物を与える際、クローゼットの右側にコーエンの持ち物を保管、左側にカメルの衣服や持ち物がしまわれています。右側が本人の人格で、左側が彼がふんするカメルの人格を象徴しているようです。
ドラマの見どころは、諜報戦と2重生活をおくるスパイの心理ですが、背景となる古都ダマスカスの風景が美しい。中世建築や豊かな文化史で知られる観光都市ダマスカスは、世界一古い都市と言われています。1960年代、周辺国と緊張関係にありつつも、発展した町の様子も伺えます。
イスラエルとシリアの関係
イスラエル1948年の建国以来、今日に至るまで両国の関係は敵対的です。特に、1967年の第三次中東戦争にてイスラエルがシリアから奪取したゴラン高原の帰属問題で、その関係性の悪化は決定的になりました。戦争があった1967年以来イスラエルはゴラン高原を実効支配し、その主権を主張し、1981年には併合を宣言しましたが、一方でシリアはゴラン高原をシリア固有の領土であると主張し、返還を要求し続けている状況です。国連安全保障理事会は決議497「イスラエルのゴラン高原併合は国際法に対して無効である」としましたが、イスラエルの実行支配は続いております。今年3月に米国トランプ大統領がゴラン高原のイスラエル主権認定して、アラブ諸国から非難されたことはまだ記憶に新しいでしょう。
イスラエルと中東地域をまなぶきっかけに・・・
結論として、イスラエル学習には直結しませんでしたが、イスラエルとその周辺地域との緊張関係を学ぶきっかけとなったほか、ドキドキハラハラの物語は、スパイ、探偵モノが好きな著者にとっては満足のドラマで、6話完結の物語は長すぎず、短すぎないため、年末のエンタメとしてオススメします。関係ブログ
スパイ・ゾルゲの生まれたバクー、ゾルゲ記念碑訪問[書籍]踊り子、高級娼婦、スパイ!パウロコエーリョ作「ザ・スパイ」から女性スパイの代名詞マタ・ハリ(Mata Hari)の人生
参照リンク
The Online Hadracha Centerhttps://www.hadracha.org/sw/historyView.asp?method=r&historyID=77
Jewish Virtual Library、Eli Cohen
https://www.jewishvirtuallibrary.org/eli-cohen
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