フィリピンとバナナと日本人、バナナを食べながらフィリピンを想う

フィリピンといえば?「バナナ」、バナナと言えば、「フィリピン」。他には「スモーキーマウンテン」、「貧困」、「紛争」、日本で働く「フィリピン人女性」、しかし、バナナはダントツです。前職NGOで、ワークキャンプ参加者にフィリピンについてイメージするものを尋ねると必ずこの答えが返ってきます。 
フィリピンのバナナ
バナナは木ではなくて草です
近所のお宅にあった、バナナ

身体によいことだらけのバナナ

そのバナナ、一時期ダイエット効果があるとして、マスコミ取り上げられ巷からバナナが消えた時期があると聞きます。

食物繊維が多いバナナは、ダイエットの大敵である便秘を改善し、バナナに含まれるカリウムが、余分な塩分を排出して冷えやむくみに良いと言われています。

ダイエットの他、バナナが健康にいいとされているのが、鉄分が豊富で貧血症によい、血圧を抑える低塩分のカリウムを極めて多量に含有しているため、血圧の安定によく、米国食品医品局は最近、バナナ生産業者に「高血圧と脳卒中の危険性を低減する能力のある果物」と公表することを認めたらしいです。

またバナナには、人間の体内で合成できない必須アミノ酸の一つであるトリプトンが含まれており、それが脳の活動を高めるといわれるセロトニンに変換し、欝気味の人にもよいのだとか。他にも効能があり、さらにバナナの熟度によってその効能が違うと言われています。

日本のバナナ市場

バナナは他の果物に比べて輸入量が多く年間119万トン(2010年財務省統計)、その約95%がフィリピンから輸入されています。八百屋の立札にも「フィリピンバナナ」って書かれているのをよく見かけるので、多くの人がフィリピンといえばバナナという答えが返ってくることはおおいに納得です。

バナナは栄養が豊富でかつ1年を通して手頃な価格で食べられるとても優れた果物で、携帯も可能で(近頃バナナケースなどありますよね)人気の果物であることに異論はないはずです。

現在、日本に輸入されているバナナはフィリピン産の「ジャイアント・キャベンディッシュ」という品種が8割を占めます。輸入バナナは青いうちに収穫し、エチレンという植物ホルモンで追熟させることによって黄色くさせます。店頭で見る眩しい黄色は日本で施されたものです。

ミンダナオ島で生産されるバナナ

フィリピン、ミンダナオから日本へのバナナの輸入が本格化するのは1970年初めに台湾での台風被害がバナナの生産に打撃を与えた後まもなくのことです。台風被害当初は、台湾産のバナナがエクアドル産のバナナに取って変わられました。

それまでも台湾からの出荷には台風の影響の他、小規模農園からの入手で生産性にむらがあり、いく度となくクレームが出されていました。一方、エクアドルは遠く、輸送費がかかります。そこで、白羽の矢が立ったのがフィリピンでした。

熱帯の気候はバナナ育成に適しています。ミンダナオは台風の進路から外れております。ミンダナオで大量生産することで、安定したバナナの生産と輸出が可能になりました。

輸入用のバナナの生産にあたり、フィリピンサイドではこれまで業者が直面した課題に対処すべく様々な策が取られました。冒頭であった「キャベディッシュ」種の導入もそのうちの一つ。この種は病害虫に強いため、安定的な収穫を期待できます。安定した生産と輸出の伸びが見られます。

Dole社のバナナ自販機
バナナ自販機


バナナを取り巻く問題

ただ、輸出が伸びることで労働者一般の生活が改善されたのかというと事実はそれほど楽観的ではありません。バナナプランテーションには様々な問題があります。問題の詳細は「バナナと日本人~フィリピン農園と食卓のあいだ」鶴見良行氏の書籍に譲りますが、バナナの生産で起こった問題は以下の3点。

1.地元の人が自分が食べないモノを作る

これは、どこにでも見られる状況かとおもいますが、多国籍企業による寡占からこれまでに多様に営まれてきた農業の形態が変わったためと言われています。米作に従事していた小作農を立ち退かせて開設したバナナプランテーション、それ故に農民の生活が様変わりしたというのは言うまでもないことでしょう。

バナナキュー、バナナ串刺しして砂糖で
コーティングして揚げたもの
道端の露天で購入できます。
ちなみに日本で販売されている種類のバナナを地元フィリピンスーパーで購入しようとすると、日本の購入時の倍の値段がします。覚えている限りではDOLEのバナナひと房が、約100ペソ〜(200円以上)のお値段でした。

一体どういう人が購入していくのか、スーパーに行くたびに観察をしておりましたが、そのバナナを手にとっている人を見たことがありません。地元のマーケット、あるいは路上で売られているものの主流は小ぶりのバナナで、プリンセサと呼ばれる小ぶりものや、ブトアン、グロリア、アムラカタン、ラトンダン、セニョリータ、ラトンダン(カートで売られているバナナ)、サバ(料理に使用するバナナ)、1キロ約30ペソ(60円)程で、これが一般家庭に並ぶバナナです。地元の人の給料が日本円にして平均15,000〜25,000円にして、果物に200円かけるというのは考え難い。

2.契約農家の借金がかさみ、バナナの生産から抜けられないシステム

入植者として来た農民にとって土地を手放さずに契約できるシステムを企業が提案しました。農家のバナナと企業側の技術交換。企業側は1ヘクタールあたり3,000ペソ/年の収穫は固い(据え置きの価格)といい、さらに土地を貸すか、自分で栽培するかの選択を迫りまひた。
今まで不作の時に高利貸などからお金を借りてきた小作農にとっては現金収入は本当に魅力的です。しかし鶴見氏が指摘するにはこれまで作っていたローカルの市場に出回るであろう、米、とうもろこし、ココナツなどの産品は作れず、またバナナ栽培に適した設備の整備の資金は農家が持つことになり、彼らは初めから借金を背負って新しい事業をスタートし、その間に会社が提供する製品も石油価格の高騰で上がり続けて行く。このままの状況が続けば彼らの借金は上がり続けていくことでしょう。そして、ますます抜けられない状況になっていきます。

3.労働者の健康被害

鶴見氏著書を出版した当時農薬の空中散布が行われており、皮膚炎、呼吸器系の症状を訴える労働者が多く報告されました。
これらの状況に対して労働者が何もしないわけではありませんが、企業のもつ暴力装置によって封じ込められてきたようで、市民団体が主催する催しに協力する農民は、仮名を使うなどして気をつけて活動を行ってきたようです。

これが、日本の食卓にバナナが並ぶまでのドラマの概要ですが、これはミンダナオが豊富な資源の地に関わらずフィリピンでも貧しい地のひとつとなっている原因の一つだと思います。バナナの輸入税率を上げてもそれらの小作農の生活が向上するのかというとそれは疑問です。 
 
だから、バナナを食べるな!という訳ではなく、こうしたひとつの身近にある食べ物ないしは商品を通じて、日本と諸外国がどう関わっているのか知り考えると機会になると、旦那のリクエストによって食卓に必ず並ぶバナナを見ながら思った次第です。

こちらのスーパーでは、同じ棚に安いバナナ(エクアドル産)、ドールなどのブランドバナナ、そしてフェアトレードバナナと並んでいます。ブランドバナナとフェアトレードバナナの値段が20〜30セントほどしか変わらないため、フェアトレードバナナを購入する人の姿を見かけます。ここでもバナナの棚を観察していますが・・・。フェアトレード商品が普通の商品を扱うスーパーの棚に並んでいるというのはなんとも興味深いです。

 たかがバナナ、されどバナナ。バナナで日本と諸外国のつながりを考えました。



バナナの自動販売機
バナナ自販機
バナナ自販機
1本130円・・・
前年、日本に帰国した時に東京メトロ構内で見かけたバナナ自販機には驚きました。朝、バナナを食べたいというサラリーマンや学生のニーズに応え2010年の6月から自動販売機を設置し始めたとニュースで見たのですが、バナナを自販機で売るという珍しさ故にブームが去ったあともバナナを食べてみようかなぁという欲求がくすぐられるのではないかと思いました。

スポンサーリンク

スポンサーリンク

Subscribe