雪を戴くコーカサス山脈を背景にその中世の趣きを今に残す、世界遺産の村、ウシュグリ。この場所でしか見ることができないその絶景を楽しむため、世界各国から多くの観光客が訪れます。しかし、厳しい地理的条件から、アクセスできるのは、雪が降らないシーズンのみ(多くは短い夏に集中!)。通年アクセス出来ない希少性も相まって、益々観光客、とくに定番の観光地に慣れた旅行客を魅了し続けています。
 |
ウシュグリ(Ushguli)、チャジャシ村 |
ウシュグリ(Ushguli)ってどこ?
ウシュグリは、ジョージア北西部、サメグレロ・ゼモ・スヴァネティ地方の政治と経済の中心都市ズグディディから車で約5時間の場所にある世界遺産の地域で、標高約2,000mから2,400m、上スヴァネティのエングリ渓谷奥、黒海に注ぐエングリ川の上流に位置します。ウシュグリとはコミュニティ(数村をまとめて)で、観光地として人々がよく訪れているのはウシュグリのチャジャシ村です。
ウシュグリ(Ushguli)のウシュ(Ush)とは、この地方の言葉で「大きい」、グリ(guli)とは「心」、直訳すると「大きな心」の村とのこと。山岳の人たちは、何よりも平等であることを望み、平等の規範を崩すものがあれば、それを排除することもあったと言われています。ちなみに、メスティアの観光地の一つ、ウシュバ(Ushuba)は「大きい」「山」の意味。
 |
チャジャシ村の教会敷地から臨むコーカサス山脈 |
ウシュグリ(Ushguli)ってどんな所?
その地理的特性の故に、過去に何度も侵略を受けたジョージアの他の地方と同様に、ウシュグリも特に北部からの異民族の侵入と攻防の歴史があります。そのためにスヴァン・タワーと呼ばれる防衛を兼ねた住居がこの地に多く建設されました。このタワーがメスティア地区の独特の景観を生みます。
 |
ウシュグリ、世界遺産の村、チャジャシ村 |
塔がつくり出す独特の景観美
タワーの最も古いものは8世紀から9世紀、最も新しいものは18世紀に建てられました。塔の高さは平均20〜25メートル(4階から5階建ての建物の高さと同じぐらい)です。各タワーは、マチュビと呼ばれる2階建ての大きな家に取り付けられています。
1階は、人と家畜の両方を収容できるオープンな囲炉裏のある単一のホールです。ダルバジと呼ばれる上階は、夏場に住居として利用するほか、飼料や道具の店としても使用されました。家はホールの中央の炉により熱せられ、食べ物はそこで調理されました。
家族は30人から最大100人のメンバーで構成され、その家族構成員が生活できるように、いくつかの塔を備えた巨大な住宅用複合施設が建設されました。
 |
ウシュグリのチャジャシ村の風景 |
 |
ウシュグリのチャジャシ村の風景 |
女王タマルの避暑地、世界遺産の村、チャジャシ村
塔多くは、時間の経過とともに姿を消したか、廃墟となりましたがウシュグリのチャジャシ村では保存状態のよい13棟の塔を見ることができます。この村は1996年に世界遺産に登録され、保護地域となりました。
この地は、女王タマルが毎年避暑のために訪れたとの言い伝えがあります。ジョージアの平地が30度近くの気温であっても、ウシュグリでは、秋物のジャケットがしかし、いまでこそ、車で数時間の道のりのところ、女王が生きた中世では、この場所を訪問されるのにどれほどの日数が必要だったのか、気になるところです。
 |
女王タマルの避暑地、世界遺産の村、チャジャシ村 |
ちなみに、このウシュグリがヨーロッパ一標高が高い場所にある村(人が年間通じて生活している村)と言われていますが、現在はトゥシェティの
Bochorna村。この村には80歳の医師がおり、厳しい自然環境にもかかわらず、年間を通じて同村で生活し、医療活動を行っています。矍鑠としたこの老医師は、一世代前のスキーセットを利用し、冬場でも患者の元に駆けつけています。
ウシュグリの誰かがこの老医師に新しいスキーセットをプレゼントしましたが、医師は冗談半分に「ウシュグリの奴らは、新しいスキーセットなんかをくれよって、ワシを殺す気だな。そうしたら、”ヨーロッパ一高い標高にある村”の地位が奴らのものになる、そんな手にはのらんぞ」等といたずらっぽく話していました。そんな理由で、しばらくはこのヨーロッパ一高い村の地位は、トゥシェティに留まりそうです。
愛の塔(Tower of Love)
ウシュグリに向かう途中、「愛の塔」なるものの前を通りかかります。金持ちの娘と、貧しい男性が恋をしたものの、階級がその恋を阻み、最終的には男性は実らぬ恋に絶望して身を投げて、自らの命を断ってしまいました。愛するものを失い、悲しみにくれる娘を哀れんだ父は、その男性を悼む塔を作ったという言い伝えがあります。入場料は1ラリ。
 |
ushuguliに行く途中にある、愛の塔(Tower of Love) |
アクセス
多くの場合、ウシュグリへは途中の
メスティアに立ち寄り、一泊してそこからウシュグリに向かうのがよいでしょう。メスティアからウシュグリは、45キロとそれほど遠くはないものの、道の状況が悪いため、2時間ほどの時間を要します。
 |
ウシュグリに向かう道すがら、牛が放牧されている
また、ウシュグリ、チャジャシ村の中では、小学生ぐらいの子どもが馬を自転車の用に乗り回していた。
これも文化なのだろう。 |
メスティアでは、乗り合いタクシーやマルシュルートカと呼ばれる乗り合いマイクロバスがあり、往復で約40ラリ程です。朝10時にウシュグリに向かって出発し、夕方の4時にメスティアに戻るスケジュールです(季節により変わることがあるので、要確認!)あるいは、車を貸し切りにするというのも一つの手だと思います。貸し切りで200ラリほどです。
0 件のコメント :
コメントを投稿