トビリシから、距離にして約190キロ、所要時間7時間の距離、渓谷の奥深く標高約2000メートルに位置する、トゥシェティ(Tusheti)の中心村、オマロ(Omalo)は、周辺の山を回る際のトレッキングの基地でもあります。同地方はジョージアの中でも孤立した地域で、夏の時期のみそこに至る道が開放されていますが、長い冬の期間はそこに至る道路は封鎖され、外界から閉ざされています。村民は、村に残る者もあれば、冬場は下山して生活しています。
短い夏は壮大な自然を背景に、山々には高山植物が咲き乱れ、忘れがたい風景です。夏時期(6月から8月)にジョージアを訪れる場合は、是非旅行の日程に入れてほしい場所です。
それらを避けるためには、まず彼らのテリトリーに立ち入らないこと。距離を保ちつつ、移動すること。方向が羊の群れの方面である場合は、事前に集めて置いた石等を犬が向かってくる方向に投げること(犬に投げつけない!)、あるいは常に棒などを持ち歩いていること。
道すがら、現地人と海外からの旅行者の慰霊碑をみます。昨年は、イスラエルからの親子旅行者が谷に落ちて死亡するという痛ましい事故が起こりましたが、地元民であれば、ハンドルを切り間違えない場所であったと言われています。
トゥシェティ国立公園Facebook https://www.facebook.com/TushetiNationalPark/
短い夏は壮大な自然を背景に、山々には高山植物が咲き乱れ、忘れがたい風景です。夏時期(6月から8月)にジョージアを訪れる場合は、是非旅行の日程に入れてほしい場所です。
トゥシェティの自然と文化遺産 |
トゥシェティの魅力とそれを経験できるアクティビティ
手付かずの雄大な自然を肌で感じ、住民の暮らしの片鱗を観られることだと思います。トゥシェティの村の住民の多くは、道が閉ざされる冬場は下山して生活していますが、夏場は、羊飼いも牛飼いも数日かけて元の村に帰り、放牧しています。そんなトゥシェティで経験できるオススメのアクティビティは以下の3つ。
トレッキング
山地での代表的なアクティビティ、トレッキング/軽登山。山をゆっくり歩きながら、美しく雄大な自然を楽しめます。高山に咲き乱れる花、雲が山に落とす影、羊飼いとその羊の群れ、まだ雪をいただく山、数世紀前まで使われていた塔、石造りの家々、どれも日本の風景とは異なりながらも、懐かしさを感じさせる美しい風景です。また、野生動物にも出会えることも。豹も国立公園の山間の地域で数年前に確認されたことがあるとのこと!
国立公園案内所(Tusheti Protected Areas Administration and Visitor Centre)にて、トレッキング用のマップが3ラリで販売されているので、入手するのが良いでしょう。全くトレッキングの経験がない人から、経験者まで異なるレベルの人が楽しめます。
オススメのコース
1.オマロ村(Omalo)〜ダルトゥロ村(Dartlo)〜オマロ村(計13キロ、3.5時間コース)※初心者コース
ダルトゥロ村(Dartlo)は、ピリキティ渓谷にある村で、現在昔ながらの家造りの再建がされ、トゥシェティならではの町並みを楽しむことができます。家は、頁岩で作られており、剥離面は非常に平滑で黒光りしており、重厚な印象を与えると同時に、優雅な装飾が施されたバルコニーがその印象を和らげます。
村には小規模ながらもホステルやレストランもあるため、食事やコーヒーも楽しめます。また、少し登るとかつては見張り、烽火台に使われていた塔を見ることができます。烽火台の役割は、村が他国からの侵略を受けた時に救援を求めるたものものとのこと。ロードオブザリングを思い出します。
Tusheti ダルトゥロ村(Dartlo) 山の頂上には塔が見えます。この塔は、チェチェンやダゲスタン方面からの侵入者が来た時に、塔の最上部の巻を燃やし、周辺村に侵入者を知らせる役割をもっていました。映画「ロードオブザリング」の烽火台の役割と同じとのこと。 |
Tusheti ダルトゥロ村(Dartlo) からのランドスケープ |
Tusheti ダルトゥロ村(Dartlo) 教会跡。この地域にキリスト教が入ってきたのは、他のジョージアの地域に遅れること1世紀。しかし、土着の信仰を維持しつつ、キリスト教を受け入れた。 この場所は女人禁制。 |
2.オマロ村(Omalo)〜シェナコ村(Shenako)〜オマロ村(計6.5キロ、2時間コース)
※初心者コース、一日トレッキング
※初心者コース、一日トレッキング
シェナコ村は、オマロ村のすぐ隣。
放牧されている牛、頁岩で作られた家屋, シェナコ(Shenako)村とその周辺地域 |
3. オマロ村(Omalo)〜ダルトゥロ村(Dartlo)ギレヴィ村(Girevi)クヴァヒディ牧草地(Kvakhidi meadows)〜(Khidotani ridge)〜シェティリ村(Shatili)
オマロ村からダルトゥロ村までは上記の通りです。ギレヴィ村手前500メートルまでは車でも到達出来ますが、以降は人か馬しか通行できません。
ギレヴィ村に続く道 |
ギレヴィ村にもホステルやカフェ等があり、なんとインターネットもあります。これは地元のNGOである、トゥシェティ開発ファンドという団体のプロジェクトの故ですが、そうでなければ完全に孤立している場所です。ちなみにホステルオーナーの話によると、仕入れの荷物は入り口手前まで車で運び、それから一日かけて、この足場の悪い道を往復しながら、荷物を運ぶとのことです。
ギレヴィ村からアルグニ渓谷のシェティリ村に到達できるトレッキングルートがあります。村には登録所があり、トレッキングルートを通る人たちが登録して行きます。
トレッキングには、それなりの準備が必要です。バックパック、変わりやすい山の気候に対応できるように、防水性のウェア、トレッキングポール等です。特に、トゥシェティは平均的に標高が高いため、夏でも肌寒いため、服装の準備は怠らないように。
乗馬でのトレッキング
徒歩でのトレッキングもさることながら、乗馬でのトレッキングも楽しめます。そもそも、乗馬などしたことがないという人もかなりゆっくりと歩みをすすめ、なおスタッフもついてまわるため、初心者でも体験することができるアクティビティです。
車で観光
トレッキングも、ホース・トレッキングもいいけれど、それほど体力に自信がないという場合は、車を手配して、それらの村々を回ることができます。行路にもよりますが、車の貸し切りで100ラリ〜だそうです。
また、牧畜を営む人々の生活、独自の文化を町の作りや、博物館などからも観て、経験して、学ぶことができます。有名なトゥシェティの羊や牛のミルクで作られたグダチーズ(Guda cheese)もご賞味あれ。山岳部の昔は、電気がない場所で作られていたこともあり、保存のために塩気が強いのですが、きゅうりやトマトと一緒にいただくと美味。
この地域では、牧羊が盛んです。そのため、羊飼いが200頭から300頭の群れを引き連れて、移動させながら飼育しています。夏時期は、毛も刈られてすっかりスリムになった羊の群れを目にします。
トレッキング等をしている時に遭遇する可能性が高いのが、羊の群れとそれを守る牧羊犬です。牧羊犬は忠実にその責務をまっとうするため、誰かが羊の群れに近づこうとすると、吠え、または襲ってくることもあります。トゥシェティの魅力は?
この地域の厳しい自然環境を知ることで、夏の美しさがひときわ貴重で、儚くもあり、力強くも感じます。朝は、霧の中から浮かび上がる山々の神々しさ、昼は青空に映える山の緑の美しさとその存在感、夕日であたり一面赤く染まるその美しさと、夜の静けさ。月のない夜は、美しい星空が臨めます。国立公園のある地域の故、開発は限られ、手付かずの自然を感じられるのが、トゥシェティの良さです。また、牧畜を営む人々の生活、独自の文化を町の作りや、博物館などからも観て、経験して、学ぶことができます。有名なトゥシェティの羊や牛のミルクで作られたグダチーズ(Guda cheese)もご賞味あれ。山岳部の昔は、電気がない場所で作られていたこともあり、保存のために塩気が強いのですが、きゅうりやトマトと一緒にいただくと美味。
Guda cheeseを山から運んできた馬、現在は生産量がそれほど多くないので、カヘティ地方で販売されているのみとのことですが、チーズのパッケージング等うまく出来ている生産者はそれらチーズをトビリシでも販売しているとのことです。 |
トゥシェティの村々の多くは山の斜面に建てられいます。時に、山の斜面に半分埋もれるようにして建てられている建物があります。これは暖を取るためにそのようにデザインされました。
羊の群れに遭遇、するとどこからか、牧羊犬がやってきて・・・ |
ヨーロッパ一番高い村があるトゥシェティ
また、トゥシェティには、ヨーロッパ一標高が高い場所に位置する村があります。以前は、世界遺産の都市ウシュグリと言われていましたが、2014年の世帯調査により、このトゥシェティにある、Bochorna村が標高2,345メートルにあり、ヨーロッパ一の標高にあるようです。
トゥシェティの多くの場所では、人々は冬場は下山しますが、この村では78歳の現役の医師が冬場も医療活動を行っています。医師の移動手段は徒歩あるいは乗馬。ただし、馬は60センチの積雪で移動が難しくなるため、徒歩で何時間もあるいて患者の元に向かうこともあるのだとか。
Bochorna村 |
旅行する上での注意
とても美しく、多くの人に訪れてほしい土地ですが、様々な点で旅行する上で注意頂きたいことがあります。
牧羊犬
それらを避けるためには、まず彼らのテリトリーに立ち入らないこと。距離を保ちつつ、移動すること。方向が羊の群れの方面である場合は、事前に集めて置いた石等を犬が向かってくる方向に投げること(犬に投げつけない!)、あるいは常に棒などを持ち歩いていること。
牧羊犬の子ども、こんなに人懐っこいのですが・・・ |
毒蛇
毒蛇がいると地元民は言います。音をたてながら移動することで、蛇が逃げていきます。しかし、万が一噛まれてしまった場合は、毒が全身に回るのを遅らせる処置をします。噛まれた部分は心臓の高さよりも下にして、間違っても走らないこと。傷口から血を絞り出すようにして毒を体外に出し、水があれば血を絞り出しながら洗浄します。交通
交通の定期便麓の村からトゥシェティ、あるいはトビリシからトゥシェティがないこと、そして天候が悪く、道の状況が悪い場合は、道路が封鎖されてしまうため、予定した日程の通りに帰ることができない可能性もあります。そのため、トゥシェティ旅行を帰国のギリギリに予定しないことをおすすめします。
また、国際運転免許を持つ人は、自ら運転することもあるでしょうが、トゥシェティに関してはあまりおすすめしません。アルヴァニからトゥシェティまでの3時間半の道のりは、距離にして80キロ程度ですが、その道は険しく、多くの死傷者を出しています。
山の斜面をなぞるようにしてくり抜かれた道路。車両一台分しか通れない道。 もしハンドルを切り間違えたら真っ逆さまに転落するような場所です。 |
また、霧も濃く立ち籠め、1,2メートル先の視界がゼロという場所もありました。車の運転速度は平均20キロ、しかし時に15キロという場所もあります。そんな場所であるため、地理に疎い外国人は運転しない方が無難でしょう。
霧が立ち籠め、視界はほぼゼロという場所も・・・ |
現地の文化を尊重する
同地の人々、特に年長者はとても保守的であると聞きます。そのため、丈の短いショーツ等露出が多い服装は避けるようにしましょう。また、山岳の村の人々は旅人をもてなす風習があります。そのため、食事などのお誘いを受けたら、感謝して受け、共に楽しむのがよいでしょう。ただし、必ず(自家製)チャチャと呼ばれる度数が40度以上のアルコールを出されることが多いので、アルコールに強くない人は注意しながら、地元の人達との交流を楽しみましょう。
ランチのメニューはハチャプリ、グダチーズを煮たもの、サラダ、チャチャ |
インターネットはない
麓のアルヴァニ村からオモロ村まで道の途中、インターネットは一箇所(Abano Passが見渡せる場所)にある他はありません。また、インターネット環境は限られた村にしかないほか、携帯のシグナルもない場所もまだまだあります。現在、全村にネット環境を作るべく地元NGOが奔走していますが、もう少し時間がかかりそうです。そのため、事前にネットでの調べものはあらかじめしておくこと。
服装
トビリシの夏は大変暑く、気温が40度近くということもありますが、一方トゥシェティは、夏場でも10度から20度以下ととても肌寒い、あるいは寒いということがあります。そのため、冬用のジャケット(というと大げさですが)朝晩は特に必要です。ただ、日中は日向は暑く、日陰はひんやりなので、それを調節しやすい、軽くて温かいジャケットが一着あると便利です。
雪が溶け切っていませんでした。通りで寒いわけです。 |
行き方
トビリシからトゥシェティまでは、定期便はありません。まれにあったとしても、すぐに座席に埋まってしまいます。トゥシェティに行くためには、アルヴァニに行き、そこから乗り合いのバンに乗車するか、車両一台をまるまるレンタルします。乗り合いのバンは50ラリ/1人、車両のレンタルは250ラリ程。運転手は全てトゥシェティ育ちで、山道に慣れている人たちです(ご興味のある人は電話連絡先お教えします)。
アルヴァニまでは、トビリシの地下鉄「Isani」駅にあるターミナルからマルシュルートカが出ております。料金は7ラリ程。
アルヴァニまでは、トビリシの地下鉄「Isani」駅にあるターミナルからマルシュルートカが出ております。料金は7ラリ程。
まとめ
近年道路も整い、距離的には遠いものの行きやすくなったメスティアやツアーのあるカズベキに行くほどお手軽さはないかもしれませんが、トゥシェティは一度行ったら、壮大な自然、地元民のホスピタリティに触れ、またもう一度来たいと思うこと間違いなしです。
是非、ジョージアの観光リストにトゥシェティを!
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