野良犬が多いジョージア、狂犬病の危険はあるの?

トビリシを歩いていて、目するのが、野良犬。しかし、野良犬とはいうものの、多くの犬は餌付けされているためか、ぽっちゃり、そして愛嬌たっぷり。また、人との共存で得られるメリットが多いことを知っており、攻撃性は限りなくゼロに近く、とても穏やかです。その可愛さについつい撫でたくなります。

トビリシの野良犬
トビリシの野良犬

しかし、ふと頭をよぎるのは、「このワン子たち、本当に安全なの?」。もし、噛まれたら?もし、この犬が狂犬病だったら?と、ふと頭をよぎるのではないでしょうか。

ジョージアにおける狂犬病のケース

人への感染

結論を先に言うと、2014年の4件を最後に、ジョージアでは、2015年から人間の狂犬病感染は報告されていません。過去20年では、2004年の12件がピークであり、その後多少の増減はありつつも全体的には緩やかに減少し、現在に至っています。

しかし、忘れてはいけないのが、2010年から2014年にかけて4人が狂犬病によって亡くなっているということ。そして、狂犬病は一度発症したら、その致死率は100%という恐ろしい感染症であるということです。(※コウモリから感染し、特殊な治療法により命をとりとめた患者がいますが、現時点において治療法、ワクチンはありません。)

動物の感染

人間への感染がゼロという一方で、動物の感染は毎年報告されています。2009年の153件が過去20年で最も高く、その5年前後は、2011年を除き、100件を超えています。2016年に大幅に減少するものの、2017年に40件と、人口比から考えて決して少なくはありません。

また、感染は動物にも見られますが、野生動物で約10%、家畜が40%弱、残りの半数は犬と猫から感染が報告されています※。ジョージア政府は、電子統合疾病監視システムを構築し、保健省と農業省で情報の共有を行っており、人間との接触が多い動物からの感染が報告されているため、まだまだ注意が必要です。

※狂犬病という名前の故、犬のみからの感染が連想されますが、コウモリ、猫等、全ての哺乳類に感染します。しかし、人間への感染ケースの90%が犬からの感染です。

狂犬病の心配は?

ジョージアでは、狂犬病の予防接種をしている犬については、耳に丸いタグ(著者はピアスと呼んでいる)がついています。また、現時点では人間への感染が2015年以降報告されていないので「大丈夫!」言いたい所ですが、予防接種の効力は永久的ではありませんので、安心し過ぎぬように。(日本では、飼い犬に年に一度の狂犬病の予防接種を受けさせることが法律により定められています。)

飼い主に狂犬病の予防接種を受けることを義務付けていますが、100%とはいかないようです。また、野良犬の数が多い(野良犬は、飼い犬の数倍繁殖力があるため、増えている)ため、全ての犬に接種を受けさせることが出来ていないことが課題となっています。

万が一、犬に噛まれた場合のワクチン接種のための費用はジョージア政府により負担されます。そのため、貧しさが暴露後の接種(PEP:Rabies Postexposure Prophylaxis)を受けないことの理由とはなりません。しかし、暴露後の5回の接種を終えない人も居るようです。もちろん、咬んだ動物の特定が可能で、その動物の予後を観察できる場合、咬まれてから2週間以上その動物が狂犬病の症状を示さない場合には、狂犬病の可能性を否定できるため、暴露後ワクチンの接種を中止できるようですが、そうではないケースもどうやら多いようです。

全ての野良犬は危険か?

答えはNO。野良犬は人間のジェスチャーを理解しているようです。近年の研究でわかったことですが、野良犬の多くは、人間が物を指差しているとき、どこを見ればいいのかをわかっているようです。そのため、犬に訓練を施さずとも、犬には先天的に人間の意図を読みとる能力が備わっているといえます。

人間に嫌な目に遭わされた経験のある犬は、人間への不信があり、指差しや、その指示に従わないこともあることも研究により確認されたようですが、犬も人間との平和な共存をのぞんでいるように思います。

過去には殺処分も行われた

人間が、犬たちを不当に扱わない限りは、彼らは決して攻撃的にはなりません。しかし、増える野良犬の対策のため、過去には、一般企業入札で、殺処分も行われた過去があります。
落札した企業は、2010年から2012年の間、可能な限りの犬を捕獲し、殺処分を行いました。一匹ごとにお金が払われる仕組みであったため、犬捕獲のインセンティブは高かったのですが、彼らが捕獲したのは、オス犬のみ。メス犬が居る限り、犬は増え続け、企業が潤うためです。そのため、結局この試みは失敗に終わっています。

人馴れしているトビリシの野良犬

ジョージア、特に首都のトビリシにおいては、野良犬(猫)に定期的にご飯をあげている人も多く、人馴れしているようです。そのため、首都の目抜き通りを歩いていくと、無防備に犬が道路に横たわる姿を目撃します。

トビリシの野良犬
踏まれても文句は言えないという姿で横になる、トビリシの野良犬。

ジョージアの野良犬は、おそらくは体格のよい牧羊犬との雑種のため、骨太で、定期的な餌付けにより、健康的に見える犬が多いのが特徴的です。とはいうものの、ラッキーな犬たちばかりではなく、なかなか餌にありつけずにいる犬たちもいます。

万が一の場合は?

犬に噛まれた、猫に引っかかれた、あるいは傷口をなめられた・・・という場合は、石鹸と綺麗な水で傷口を洗い、できるだけ早く、医療機関に受診すること。決して、自己判断で大丈夫と思わないこと。上述の通り、発症後助かる見込みがない感染症です。

では、どこに問い合わせたらいいのか?ですが、かかりつけの医者がいない場合は、英語が通じて、緊急外来がある医院がよいでしょう。在ジョージア米国大使館のウェブサイト(https://ge.usembassy.gov/u-s-citizen-services/doctors/)には、ジョージア在住のアメリカ人が受診が容易な医院のリストがあり、参考になります。

注意して楽しいジョージア滞在を!

ジョージア、特にトビリシの野良犬に危険を感じたことはありませんが、地方に出張に行った時に、ちょっとどきりとすることもあります。夜に外に出ると、かなり大きな犬が人通りの少ない道路を徘徊しており、時には縄張り意識のためなのか、遠方から威嚇のために、吠えられたりします。襲ってきたりすることはないのですが、注意が必要と思うことも確かです。基本的には、人間との共存を臨む犬ですが、気をつけつつおつきあいください。

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参照ウェブサイト

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