フィリピン人と結婚(4) - 国際結婚と多文化理解に向けて

国際結婚は、本人たちが真に理解し合うことにそれなりに時間を要するため、周囲にサポートあるいは理解してくれる人がいれば心強いというのは言うまでもありません。しかしながら、巷に溢れている情報は、ネガティブなものが多く、「国際結婚」とりわけ相手が経済的な格差がある、所謂”途上国”出身となると「騙されている」のではないか?と心配されたり、あるいは「金銭目当て」「日本国籍を取りたいから」なのではないか?と疑われたり、それらを言わないまでもほのめかされたりします。

東南アジア人と聞くと・・・

知り合いで日本人のかなりやり手の男性とタイ女性の素敵なカップルを知っていますが、結婚してしばらくは、周辺が「タイ」人の奥さまと聞いただけで、バーなどで引っ掛けてきたのではないかと言われ、奥様の側も日本人が相手ということで周りから金銭目当てなどではないかと見られ、時に言われたようです。

日本では東南アジアからの女性を見かけると自動的にバーなどで働く女性のイメージに結びつき、その美貌と若さを武器に隙だらけの日本人男性に迫るずるい女性と見られやすいと思います。(そもそもバー等で働くことの何が悪いのか!を問いたいですが・・・)

フィリピン人との結婚、多文化理解に向けて
結婚式のケーキの上に乗っていたデコレーション(食べられません)


本当に彼らは金銭目当てで、ずるく、若さと美貌を武器にして日本人を手玉に取る性悪女なのでしょうか?バーだけではなく日本の工場などで働くフィリピン人、家族を支援しないといけないという理由もかかえています。

フィリピーナが日本に来始めた背景


日本人→フィリピンから、フィリピン人→日本へのシフト

台湾や韓国から始まった「慰安旅行(売春ツアー)」が国内の強い反対のゆえにタイやフィリピンにシフトしていきました。もちろんタイ、フィリピンでも反対が起こらなかった訳ではなくまたここでも抗議運動が起こりました。それが日本で大きく取り上げられることで大手旅行会社「慰安旅行」への送客を控えるようになりました。

売春ツアーとは大手の旅行会社が日本人の男性対象にフィリピン人女性の「接待・同伴」を目的とした観光ツアーで、実態は団体買春に近いことが行われていたようです。反対・抗議運動から「観光客」が減ったため、収入減となったクラブや置屋に日本人“観光客”を斡旋していた“日本人業者”がマニラに来た“日本人業者”と手を組んで、日本人→フィリピンという流れから、フィリピン人→日本という流れを作りフィリピン人女性に“興行ビザ”を取らせて日本に呼ぶ流れができました。

興行ビザの現実

興行とは「演芸、演劇、演奏、スポーツ等の興行に関わる活動またはその他の芸能活動」となっている。“興行ビザ”で働く外国人は談笑、お酌、一緒に歌う、手を握る、あるいはそれ以上、接待に従事するおそれがない場所に配置されることになっています。けど、斡旋する業者は接待させることを目当てにして、日本の入国管理局ですらきっと彼女らが接待に従事させられることを知っていたのでしょう。在留資格と現実の乖離が指摘されます。 

農村花嫁

また、過疎化の現状を打開するために農村花嫁、過疎化が進む自治体がフィリピン人女性を日本人農家に嫁入りさせるということが行われてきました。農村花嫁を推奨する自治体のパンフレットには「フィリピンが日本から近く、300年近い植民地の歴史があるため順応力が抜群にいい」(フィリピン‐日本国際結婚―移住と多文化共生p71参照)、などでフィリピン女性が好んで選ばれたというのは、国の文化や歴史を無視した発言で驚きです。

同書に掲載されている、農村花嫁を推奨する役場が作った資料にはアジアの先進国日本のおごりと差別意識が見られます。資料を見てびっくりしました、項目のいくつかを取り上げてみると・・・②の、国外へ出たことがない、マニラで仕事をしたことがない。勿論マニラを全くしらない女性であること。理由、売春婦ではないことの実証。国外へ出るとお金のために売春するケースが多い。④持病を持っていない、理由の一つは性病でないこと、などなど・・

エンターテイナー、売春行為、違法滞在、お金のために何でもする人たち・・・といったイメージが出来上がるというのは、その国の人たちにとってどれほど屈辱的であるのか、日本が慰安婦の問題で、世界から「性と女性の人権に疎い国」もしくは「色狂いの国」などと言われたらきっと日本人としてのプライドが傷つくと思いますし、それを聞いたらきっと反発したくなると思いますが、残念ながら、それらは意識されずそういったレッテルを貼っていると私は感じます。

自国で「安価」に「調達」できなくなったサービスをこうした手法でシステマティックに作り上げてきました。


増加した日比カップル

こうした流れの中で、フィリピン人女性と日本人男性が出会う場が増え、そして結婚件数が増えました。日本人男性がフィリピン人女性と結婚した数5755組(厚生省人口動態2009年調べ)と言われます。

ちなみにフィリピン女性の国際結婚の国別のデータを見ると、アメリカ5636人、日本5146人、オーストラリア1067人等々続きます(2000年の統計)これを見ると、「配偶者、婚約者の国籍からわかるように、フィリピンが外国、特に先進工業国の男性に女性を供給してきたという“南北問題”的構造があるようにおもわれます。

つまりフィリピンを含む“発展途上国”=主に南半球の国々=と欧米日本などの北半球との国々にある経済格差が国際結婚という移民・移住の流れを生み出す」P45。と、指摘があるように、経済格差による移民が浮き彫りになります。第二次世界大戦の前は日本人がフィリピンに出稼ぎ、移民してきていましたが、今はその流れが逆転しました。

フィリピン人にだまされたのか?

日本人がフィリピン人と結婚する場合は、「騙されたの」と言われたりすします。フィリピン人はホスピタリティ満点ですから、男女問わずニコニコとして、調子のよいことを言われて、結婚することになったのではないかと思われたりします。いずれにしても、よいコメントは聞きません。

さて、フィリピン人と結婚した人は「騙された?」のでしょうか。
つまり、著者だまされたんですかね(汗)

古今東西男女は騙し合い、化かし合いというので(笑)、広くは騙されたといっても差支えないとは思いますが、国が貧しいから彼らは日本人を騙して結婚する(すごい表現ですが)、悪いことをする・・犯罪予備軍と決め付けるのは短絡的すぎるのではと思います。

国際結婚は最大の国際理解活動?!

アジア人だろうと、アフリカ人、欧米人であろうとその人たちに寄り添える人が増える社会が日本にできていけばと思うこの頃です。移民の受け入れに対して、賛成なのか、そうでないのかは、より深い議論が必要ですが、すでに日本には外国人や移民して数世代が経っている人たちも多く住んでおり、彼らとのどう生きるのか一つの課題ではないでしょうか。

しかし、国際理解って言うけど、国際結婚は最大の国際理解活動です。(笑。活動じゃなくて生活だよって突っ込まれそうですが・・・)好きだろうと、嫌いだろうと、相方の(国、家族、コミュニティ)問題が私自身の問題になり、彼らに対して言われたことに納得はするけど腹が立ち、彼らが達成したことを喜んだり、こっそり(笑)誇りに思ったりする。そういうもんなんだねぇと近頃ふと思うのでした。

フィリピン-日本人の国際結婚の背景を学べる書

フィリピン‐日本国際結婚―移住と多文化共生
作者: 佐竹眞明,メアリー・アンジェリンダアノイ,Mary Angeline Da‐anoy
出版社/メーカー: めこん
発売日: 2006/05

本ではまず、フィリピン-日本カップルが急増した背景、実情、農村花嫁、フィリピン人女性のイメージ、フィリピン人女性と結婚した日本人男性に焦点を当てた異文化体験、フィリピン人女性による地域活動への参加と、データから検証しつつ、日本に未だに根強くある“偏見”-フィリピン人(アジアから来た人たち)はずるい。という概念を解きほぐして、彼らと寄り添う気持ちになります。
本を書かれた佐竹さんご夫妻も試行錯誤しながら夫婦、家族生活を送ってこられたのだなぁと勝手に思いました。

[フィリピンからの農村花嫁]
愛しのアイリーン[新装版] 上
作者: 新井英樹
出版社/メーカー: 太田出版
発売日: 2010/12/15
メディア: コミック

愛しのアイリーン[新装版] 下
作者: 新井英樹
出版社/メーカー: 太田出版
発売日: 2011/01/20
メディア: コミック

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