聖書を読んだことはない、あるいはキリスト教徒でなくても、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画「最後の晩餐」を知っている人は多いはず。イエス・キリストが処刑される前夜、十二弟子と共に摂った夕食の場で、イエスが「この中に私を裏切った者がいる」と弟子たちに告げる衝撃の場面が描かれています。解説が必要な謎とが多い絵画ですが、この絵にイエスキリストの秘密が隠されているとしたのが、映画「ダヴィンチコード」。2006年に公開された作品です。最後の晩餐というと、どうしても映画「ダヴィンチ・コード」そして、その当時の反応を思い出します。
レオナルド・ダヴィンチ「最後の晩餐」 この絵をよく見ると、イエスを銀貨30枚でユダヤ教司祭に売り渡した、裏切り者の「ユダ」の姿がありますが、どの人物かわかりますか? |
ダ・ヴィンチ・コード(The Da Vinci Code)のあらすじ
ダン・ブラウン著のベストセラー小説が同名映画化され、2006年に公開された映画です。キリスト教をテーマとし、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画「最後の晩餐」に秘められた謎と真実を解き明かしていくというミステリー作品です。
ルーヴル美術館で奇怪な殺人事件が起こります。被害者はジャック・ソニエール館長。奇妙なことに、被害者の遺体は、レオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」を模したものになっており、ダイイングメッセージも残されていました。容疑者は、ハーバード大学のロバート・ラングドン教授。しかし、被害者の孫でありフランス司法警察暗号解読官のソフィーは残されたメッセージから祖父の意図をくみ取り、ラングドンを警察の下から救い出します。2人は、館長のメッセージをヒントに謎を解明するため奔走し、やがてキリストにまつわる衝撃の事柄を知ることになります。
世界的なヒット!だけど・・・
その世界の三大宗教の一つであるキリスト教を題材としていること、謎解きの要素あり、また、小説自体も広く読まれているため、世界的にヒットして、世界の興行収入は7.6億アメリカ合衆国ドル(約838億8千348万円)とまずますの成功です。
一方で、題材とされたキリスト教会、特にカトリックの総本山であるバチカンはこの映画を批判しました。物語では、イエス・キリストがマグダラのマリアとの間に子どもをもうけ、その血筋が今も残っているとされることです。
マグダラのマリアは、娼婦であったが改悛してイエスに従った女性です。イエスの十字架上での死を見届け、処刑・埋葬後のイエスに香油を塗るために墓を訪れたとされる女性であり、その後は、布教活動を行ったことが聖書に記述されています。
イエス・キリストは人類の一切の罪を背負い、一人十字架に架けられたとされ、その生涯も独身とされていること、そもそも神聖を否定する小説・映画に異議を唱えました。
フィリピンでの反応
ポルノ的で冒涜的だ!
フィリピン・ポルノ禁止同盟(PAAP)は、同映画を「歴史上最もポルノ的で冒涜的な映画」として、当時ロリア・マカパガル・アロヨ大統領に同映画のフィリピンでの上映中止を訴えました。また、ローマ法王ベネディクト16世やフィリピン・カトリック司教協議会(CBCP)等も上映中止の協力を求めました。また、映画の原作を書いた作者ダン・ブラウンをアドルフ・ヒトラーに例えるなど、批判はやみません。
しかし、政府は映画に関する論争には干渉せず、映画テレビ分類委員会(MTRCB)に判断をゆだねるべきであるし、最終的にMTRCBは同映画をR-18レーティング(18歳未満制限)を与えることとしました。
カトリック教会の反応
フィリピン・カトリック司教協議会(CBCP)は、同映画はフィクションであるにもかかわらず、「想像力を形作り、感情をかきたて、精神的な連想を形成する」、さらに「ブラウンは、自分のフィクションが歴史的事実であるかのような印象を与えている」と書簡で表明しました。 CBCPリパ大司教は、この司教書簡が書かれる前に、映画テレビ分類委員会(MTRCB)の委員長であるコンソリサ・ラガルディアに手紙を書き、キリスト教徒が多数を占めるフィリピンでは、この映画が「冒涜的」で「神を冒涜している」という理由で上映を禁止するように要請しました。
また、マニラ大司教のロザレス枢機卿は、この映画が 「イエス・キリストの神性に対する悪意ある攻撃 」であると述べ、フィリピンのカトリック教徒のために、この映画を見る際のガイドラインを発表しました。
映画に異議を唱えたのは、カトリック教会だけではなく、イスラム教徒たちもでした。イスラム教では、イエスは預言者の一人であるため、その神聖を冒涜するような映画は、上映禁止にすべきであると訴えました。
「信仰の自由」>「表現の自由」マニラ市での主要都市での上映禁止
一般的な日本人の感覚するとおそらく、小説はフィクションであり、映画はエンターテイメントであるため、現実との折り合いはついている、また、人々がこれを事実と考えるか否かは、個人にゆだねられるべきだ等と思われ、かつ「表現の自由」とも考えられるであろうに、なぜここまで反対するのか、理解に苦しむと思いますが、マニラ市議会は、この映画を「攻撃的で、確立された宗教的信念に反しており、この映画の関係者の表現の自由の権利に優先することはできない」とし、映画の上映を禁止する決議を行いました。
マニラ市では、上映禁止となりましたが、マニラ市以外の首都圏では、上映されていたので、見に行く人も少なくはありませんでした。当時は、初フィリピンで数か月の長期滞在をしていた時、小説「ダヴィンチコード」読んでいた友人は、この事実を面白がり、見に行こうと誘ってくれたのを覚えています。いずれにしても、こうした反応も映画の宣伝となり、フィリピンにおいても映画を鑑賞した人は少なくはありませんでした。
上記の批判もあり、聖週間の映画リストの一つにどうぞ!とはなかなかいいがたいのですが、こうした映画を見ながら、人々の宗教への情熱に思いをはせてみるのもいいのではないでしょうか。
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参照ウェブサイト
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