[ジョージア]新型コロナウイルス感染拡大で変わる日常 - ジョージア

現在生活しているジョージアでは、3月29日現在の感染者数は、90名。同じ南コーカサスに位置する、アゼルバイジャンでの182名やアルメニアの407名よりも少なめで、幸い死者は報告されていませんが、3月上旬から政府は感染拡大を抑止するための手段を講じてきました。

学校の休校、店舗の営業停止、移動の自粛等々、人々の日常生活を大きく変え、非正規雇用者が多いこの国で、このような措置は経済に大きな影響を与えることを知りつつも、感染の拡大を未然に防ぐための、社会・経済活動を犠牲にした覚悟の措置だと感じています。

日本では、所謂「ロックダウン」と言われる措置は行わず、「自粛」のみです。ここジョージアでは、非常事態宣言が出されました。非常事態宣言によって、町の様子や日常がガラリと変わりました。
トビリシの自由広場   Tbilisi Liberty Square
通常であれば、人と車で賑わうトビリシの自由広場もこの様子。

非常事態宣言

ジョージアでは3月21日に、非常事態宣言が出されました。この宣言は現時点では4月21日までの一ヶ月間有効です。移動制限(国内外の移動制限)、教育機関への制限、イベント開催の制限、10人以上の集まりの禁止、経済活動の制限、検疫への規定を設ける(感染対策 自己隔離と隔離が規定され、違反した場合には行政罰(個人3000ラリ,法人15,000ラリ)及び刑罰(6か月以上1年未満の自宅監禁)が課されることなりました。)等、の措置を行いました。

トビリシの旧市街地
トビリシの旧市街地も日中もこの様子
非常事態宣言とは一般的に、今回の感染症対策、テロ等の国家の緊急事態の際に宣言され、法律に優位する政令の発布が可能となり、公務員の動員や公共財の徴発、令状によらない逮捕・家宅捜索などを許すことの他、報道や集会の自由など自由権の制限されます(※戒厳令とは異なります)。

学校の休校、経済活動の制限で変わる町の風景

3月上旬から学校は休校、その休校措置も3月16日までとのことでしたが、その後4月21日まで延長されました。そのため、外で子どもや若者を見る機会がぐっと減りました。

3月上旬までは営業していた店も、3月の中旬には、食料品店、薬局、ガソリンスタンド、郵便局、銀行を除く全ての店舗の営業は停止され、(レストランやカフェでのデリバリーでの営業は引き続き行っている)ガランとしており、少々不思議な光景です。

トビリシの地下の商店街
お土産屋、軽食、雑貨、化粧品、衣類まで販売され、人が絶えず行き交う地下通路も閑散としています

 営業の停止が政府により発表される前に訪れた、黒海沿岸都市のバトゥミは、新型コロナウィルスのために観光客は激減。3月には、観光客は戻りつつある時期ですが、町で見かける外国人はほとんどおらず、店舗も軒並み休業中。

宿泊施設の職員に聞いてみると、海外からの旅行者の予約はほぼキャンセルで、宿泊者は国内旅行者、それも観光ではなく、ビジネスでの旅行者のみで数人。3棟あるホテルも1棟のみを開放し、職員も本来であれば、24時間対応するところ、12時間でのシフトで働いているとのこと。
3月ともなれば、観光客で賑わいはじめる黒海沿岸都市バトゥミの宿泊施設。
しかし、海外からの旅行者からの予約はキャンセル、国内旅行者のために建物の一部のみを開放、閑散とする観光地

仕事の遠隔化

全国民に対する不要不急の外出自粛を要請することで、事務系の仕事の多くは、遠隔で行われるようになりました。この切り替えの速さは、素晴らしいものです。

遠隔化が難しい仕事や契約での仕事をしている人たちは収入がなくなることを意味します。ジョージアでは、非正規の雇用者(路上の物売り等も含めて)が多いため、各世帯の経済に大きな影響を及ぼすことになるのが、気になるところです。



ジョージアのソーシャル・ディスタンシング

政府は感染の拡大を防ぐため、個人間は2メートルの距離を取ることを推奨し、10人以上の集まりを禁止しています。2メートルという距離の由来は、新型コロナウィルス感染症の症状の一つである咳1回で、約10万個のウイルスが約2メートル飛ぶというところからでしょう。
咳エチケットをする人が少ないジョージアにおいて、この2メートルの距離は感染から見を守るためには必要でしょう。しかし、日常的に人との物理的な距離が意識されていない場合、これは身体にとってかなりの強制となるかと思います。

スーパーマーケットでのソーシャル・ディスタンシング

 まず、スーパーマーケットの入口には、人との距離を2メートルに保つようにという案内を目にします。
ジョージアのソーシャル・ディスタンシング、スーパーの様子
人との距離を取るように表示
 現在大手のスーパーマーケットでは、入場制限こそはしていませんが、入口のレイアウトを変えて、対応しています。

まず、ショッピングカートを全てスーパーマケットの売り場側にしまい込み、手の殺菌消毒が済んだお客の手に触れるようにしています。職員が入口で、来客の手に消毒液をかけます。その上で、客は店が用意したビニールの手袋を装着します。

ビニール製の手袋
ビニール製の手袋


取っ手を消毒して客に渡す店員
取っ手を消毒して客に渡す店員



ビニール製の手袋
スーパーの入口で装着が推奨されているビニール製の手袋
店は、時間帯や曜日によって少々混雑していますが、レジの周りは、人が長い時間(10分〜15分程)待つ場所なので、待つ場所をステッカーで示したものが、床にはりつけられ、人と人とが距離を保てるように工夫されています。

混む時間帯のみでしょうか、スーパーの店員が、印のところで待つようにお客を指導している姿が見られることもあります。

ジョージアのソーシャル・ディスタンシング、スーパーの様子
ジョージアのソーシャル・ディスタンシング、レジ打ちの人をシールドで覆い飛沫感染を防いでいます。
しかし、これを守らないのが、高齢者。人と人との間が空いていること=並んでいない、あるいは中に入ってもよいと思って、列に割って入ってくることも。

ジョージアでは見かけませんが、他国(フィリピン)では、シニア優先のレジもあることから通常は、入れてあげるのですが、流石にこの期間は、床の印を指差して、列に並ぶように促します(それでも並ばない人はただ居るのですが・・・)。

人との距離を取るために貼られているステッカー
ジョージアのソーシャル・ディスタンシング、スーパーのレジにも立ち位置を記すステッカーが貼られています。
大手のスーパーでは、人と人と間にそれなりのスペースが確保されますが、町の規模の小さいスーパーでは、数人で混み合う状況となるため、入場者数の制限を設けています。店の入口で店員がその制限をしています。
入場制限がかけられた店舗
入場制限がかけられた店舗
 ちなみに、トイレットペーパーなどの買い占めはこちらでは確認されていません。ただ、パスタは日持ちするためか、売れているようで、スーパーを訪れた時には、パスタの棚は空っぽでした。しかし、さすが大手のスーパー、数日は空っぽであった棚も数日後には補充されていました。

移動の制限

3月18日には、庶民の足である乗り合いバン、マルシュルートカは、密閉性と乗車する人との距離が近いこともあり、全面禁止が発表されました。一方、バスや電車は通常通り運行中です。しかし、マルシュルートカが運行禁止になることで、それらの乗客がバスや電車に流れ込み、(時間帯によっては)混み合うことに。

しかし、それでも移動する人の総数は減ったため、混雑といっても人が物理的に触れ合うほどの混雑ではないのが幸いしているのですが、望ましくはないことは確かです。上記の事情により、著者はの通勤は、移動自粛の故の運動不足の解消のため、往路あるいは復路を約1時間ほど徒歩です。
トビリシのバス
バスの内部。運転手の感染を防ぐため、運転手側の入口は閉鎖、そして運転手に近い席は座れないようにされています。
タクシーは運行中ですが、助手席には乗車しない、運転中は窓を開けて運転します。
国内の都市間のバス、ミニバスでの移動も制限されました。そして、当面の出入国は禁止ですが、チャーター便が運航される場合もあります。

野良犬が少々アグレッシブに?

ジョージアではブログ「野良犬が多いジョージア、狂犬病の危険はあるの?」で書いた通り、野良犬が多いのですが、ポチャッとして、おっとりした愛嬌たっぷりの犬が多いのですが、店舗の閉店から食事を得られず、また人間が少なくなったことから、人間が通ると、いつも以上についてくる犬や、時には吠える等アグレッシブな犬も目にすることがあります。地方で吠える犬を目にすることはありますが、トビリシ、しかも人間の多い繁華街の犬が吠えるようになったことに少々驚いています。

東アジア人差別は続いているか?

2月の現地のパニックに由来する人々の東アジア人への差別ぶりはブログ「#私はウィルスじゃない!新型コロナウイルスによる差別ー海外に生活するアジア人の憂い」でも書いた通り、東アジア系の顔を見ては、逃げたり、避けたり。しかし、そうした態度が見られないのがここ1週間ほどのこと。

3月18日から2週間、全ての外国人の入国を禁止する措置を取ることで、外国人の新規の入国者が実質は居なくなったことが理由であるのかはわかりませんが、露骨に逃げられたり、避けられたりすることはなくなったように思います。そもそも、そうしたことを行う人たちが、町に姿を現さなくなった・・・だけなのかもしれませんが。

アポカリプス(Apocalypse)か?

こうした日常の変化をアポカリプス(Apocalypse)ー新約聖書の「ヨハネの黙示録」のギリシャ語原題が「Αποκάλυψις Ιωάννου」(アポカリプシス・イオアノ)ここに由来するため、「人類の滅亡」や「終末」という意味あいが含まれるーとやたらセンセーショナルに煽る人や、ジャーナリストもいるものの、単にグルーバル化した社会の公衆衛生の問題だと思います。

ジョージアでは、非常事態宣言から、移動や経済活動の制限を行うことで、感染拡大を防ぐことが出来ているのかもしれませんが、4月21日以降、どうやってこのアポカリプス的「非日常」から日常に回帰していくのでしょうか。

最後に・・・

ひとまず、いろんな方から、海外で生活しているため「大丈夫?」と聞かれて、ご心配頂いておりましたので、大丈夫ですよ〜と言いたい。もちろん、今こうしている時も、新型コロナウィルスの症状で苦しんでいる人々がいるので、まったくもって大丈夫なんかではないのですが、このジョージアの取り組みの故、ウィルスを知らぬ間に拡散させている可能性が少々減っていると思われるので、そういう意味で、大丈夫と言いたいです。

むしろ、旦那の生活している欧州、そして医療設備が乏しいフィリピンにいる親族、旦那の親族が感染者の多いアメリカ(ニューヨーク)、スペイン、ベルギー、オランダなどにいるので、そちらの方を心配し、また徐々に感染者数の増えている日本の友人、家族、またこのブログを読んでくださっているみなさんを心配しております。とにかく、お体ご自愛を。

参照ウェブサイト

Georgian President Officially Announces Countrywide Emergency
Tbilisi Mayor: Minibus Drivers Will Receive Payment
Tbilisi Mayor: Buses and Metro Will Continue to Serve Passengers

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