[ジョージア] 地味に空気が悪いトビリシ、大気汚染は深刻か?

世界各国で大気汚染は深刻で、人口100万人を有する中・低所得国、97%の都市は世界保健機構(WHO)が定めるガイドラインの汚染度を図る基準値を超えているという報告があります。また、108の国、4,300の都市を対象に行われている調査では、過去2年にわたり、大気汚染のレベルは2倍になったとのこと。これによる健康への被害が懸念されます。
トビリシの風景
トビリシの風景

トビリシもそのような大気の汚染が著しい都市の一つです。時に市街が霧に覆われたように曇りますが、それらは大気汚染の故です。著者は一時期マニラで生活していたことがあり、外出時に暑さで汗がにじみ、ハンカチで覆った際黒くなるという経験をしていたため、それらと比べたらあまり問題ないと思い、気にも止めておりませんでしたが、街全体がうっすら霧がたちこめるように曇るレベルの汚染を目視して以来、気になり始めました。



トビリシの大気汚染の深刻度

しかし、トビリシの大気の汚染度はどれほど深刻なのでしょうか。大気の汚染度は大気中に浮遊している微小粒子状物質PM2.5やPM10の空気中の濃度に基づいて計測されるのですが、WHOの報告書によるとジョージアの都市部のPM2.5の値は、中央値は23μg(マイクログラム)、低:13μg、高:40μgです。WHOのガイドラインによると年間の環境基準値 は10 μg、20μgで健康に影響があるといわれており、基準値より少々高い値であることがわかります。ただこれは国の平均値であるため、トビリシだけではもう少し高い値であることが予想されます。

WHOのデータベースによると、デリー、カイロ、ダッカ、ムンバイ、北京、上海、イスタンブール、メキシコシティ、サンパウロ、ブエノスアイレスの都市の汚染度を図る値が非常に高いようです。また、インドの都市カーンプルでは、173μgを記録しており、基準値を遥かに上回っているため、重篤な健康被害の恐れがあります。


それらの場所と比較してトビリシはまだ「まし」な方ですが、それで安心はしていられません。

Ambient air pollution: A global assessment of exposure and burden of disease
http://maps.who.int/airpollution


微小粒子状物質(PM2.5)とは
大気中に浮遊している2.5μm(1μmは1mmの千分の1)以下の小さな粒子のことで、従来から環境基準を定めて対策を進めてきた浮遊粒子状物質(SPM:10μm以下の粒子)よりも小さな粒子で、非常に小さいため(髪の毛の太さの1/30程度)、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系への影響に加え、循環器系への影響が心配されています。「環境省:微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報

大気汚染の原因

大気汚染の原因は、ばい煙を発生する施設、鉱物の堆積場等の粉じんを発生する施設、自動車・船舶・航空機等運輸手段等の人為起源のものから、土壌、海洋、火山等の自然起源のものもあります。
物の燃焼等で排出された、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)等が、環境大気中での化学反応により粒子化したことで生じています。

トビリシでの汚染原因で注目すべきは自動車などからの排気ガスです。実際2016年にはトビリシ市内を走る車の数が2010年比で2倍となりました。そして、比較的に車両が古い車やディーゼル車両も走っています。ディーゼル車から排出されるディーゼル排気微粒子は、粒子径が1μm以下の粒子から構成されており、交通量の多い幹線道路や沿道で多く計測されています。車の増加に加え、トビリシは盆地状の地形で汚染物質が滞留しやすく、状況を悪化させています。

年明けの花火は激しかったのですが、それに比例して花火後の硝煙も一体に立ち籠めて、喉が痛くなるほどでした。今や年明けカウントダウンの風物詩となっているこの花火も、トビリシ市内の大気汚染を悪化させるひとつの原因になっているのではないかと思われます。

汚染による問題

成人は1日あたり約15,000リットルの空気を吸い、1回あたり0.5リットルの空気を呼吸しています。毎日小さな粒子を体内に取り込むことで、「呼吸器系」「循環器系」の疾患、アレルギーの原因になると言われています。ディーゼル車両が多い都市での、喘息の罹患者の数は多いといわれるほか、WHOは空気に含まれるそれら物質を体内に吸い込むことで癌の原因にもなりうると発表しています。しかし、健康のために食べるものは選べても、吸い込む空気は選べません。

何か対策はないのか?

ジョージアでは今年から車検が導入されるようになりました。車検でブレーキ、ステアリング、サスペンション、視界、車のライト、排気ガス、タイヤの7箇所を確認します。4年から8年のモデルの場合は2年に1度、それ以降のモデルでは毎年車検を行うことが義務付けられました、これによって古い車両が徐々に車道から淘汰されていくことになるでしょうが、時間はかかるでしょう。

また、緑化を進めていくことで大気汚染を緩和できるという論文がありました。近年、マンションの建設が進み、都心部の緑が失われていますが、緑化を意識し、そのような運動を行っているNGOの活動に参加するということは、個人レベルでもできるアクションの一つかもしれません。ジョージアローカルのNGOは赤ちゃん出産時に家族が植樹用の木を一本寄付するというプログラムを始めました。

ジョージアは風光明媚で美しい国、観光客数も年々上昇し昨年は8万人を超えました。引き続き観光を強化しながらも、ぜひ環境政策にも力を注いでほしいなぁと思う今日この頃です。

参照ウェブサイト

微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報(環境省)(http://www.env.go.jp/air/osen/pm/info.html)

大気汚染ばかりではない!PM2.5 
http://square.umin.ac.jp/nosmoke/material/TS_PM2.5.pdf


Ambient air pollution: A global assessment of exposure and burden of disease  http://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/250141/9789241511353-eng.pdf?sequence=1&isAllowed=y

What to know before vehicle inspection launches in Georgia?
http://agenda.ge/en/news/2017/2696

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