[映画] ジョージア映画日本で公開!映画祭 「コーカサスの風」in 岩波ホール

「ジョージアの映画は陰鬱だ」とジョージア人の口から聞きます。著者もある種、同意します。実際、ジョージア映画の古典と言われる一作「希望の樹」を鑑賞して、悲しくて、すっかり気落ちしてしまいました。

しかし、人間の悲しさ、尊厳、葛藤、伝統と人々の感情との相剋などをとらえ、鑑賞後強い余韻が残す、とても骨太で、見応えがある映画だと思います。それらのジョージア映画が今年、岩波ホールで公開されています。

ジョージアは2018年で建国100年、またジョージア映画は今年で生誕110年を迎えます。それを記念して公開される作品は、全部で20作品。「放浪の画家ピロスマニ」「落葉」「祈り 三部作」「みかんの丘」「とうもろこしの島」「花咲くころ」ジョージア映画の魅力が一杯つまった作品たちです。

映画祭はすでに始まっており、次回の上映は2018年10月13日(土)~26日(金)、以下の作品です。
「デデの愛」Dede(2017)97分
「他人の家」Skhvisi Sakhli(2016)103分
「ブラインド・デート」Shemtkhveviti paemnebi(2013)95分
「告白」Aghsareba (2017) 89分
「ヒブラ村」Khibula(2017)99分
「陽の当たる町」Mzis kalaki(2017)104分
「放浪の画家ピロスマニ」Pirosmani(1969)87分
「あぶない母さん」Sashishi Deda (2017)107分
「私のお祖母さん」Chemi Bebia (1929)67分
「スヴァネティの塩」Jim Shvante (1930)44分
「少女デドゥナ」Deduna(1985)64分/カラー
「メイダン 世界のへそ」Meidani-Samkaros chipi(2004)52分
「ケトとコテ」Keto da Kote(1948)90分
「大いなる緑の谷」Didi mtsvane veli (1967)85分
「微笑んで」Gaighimet(2012)91分
「少年スサ」Susa(2010)78分

各作品の詳細は、ジョージア[グルジア]映画祭コーカサスの風(外部リンク:ココ)にあります。ジョージア映画は陰鬱だ!という友人たちですが、コメディ映画もあります。

映画祭で紹介されている映画はどれも面白そうで、どれを選んだらよいのか迷ってしまいます。そのため、ジョージア人の友人や同僚におススメを聞いてみたのですが、意見が分かれ、結局のところ「これ、必見!」という映画について、結論はでませんでした(笑)。それがとてもジョージア的な印象をうけました。

上記のリストから、主観から女性の葛藤、社会派、ロマンス、古典に分類しおススメをご紹介します。

女性の葛藤を描いた作品3選

近代のジョージア社会において、活躍し、輝いている女性に出会う機会があります。それらの印象から、社会での平等が達成されているかと思いきや、世界男女格差指数を確認すると、世界平均を少し下回るようです。しかし、地方における男女の格差は、都心と比較し大きく、古い因習が女性の立場を苦しくさせているということもただあるようです。そんな女性としての葛藤やジョージア社会での生き方を描いた作品が以下3作。

「デデの愛」Dede
(2017)97分/カラー/スヴァン語
マリアム・ハチヴァニ監督
ナティア・ヴィブリアニ、ギオルギ・バブルアニ
上映スケジュール: 10月13日11:00/14日13:30/15日16:00/16日19:00

若いデデは何世紀にもわたって数世紀の伝統が厳密守られている遠い山間の村に住んでいました。デデの祖父はデデに戦争から帰ってくるダビデとの結婚を約束しました。しかし、ダビデの友人ギオルギと恋に落ちます。村の定めた結婚に抗い、彼女は愛を貫くことを決心します。因習と闘う女性を描いた作品。

「あぶない母さん」Sashishi Deda
 (2017)107分
アニ・ウルシャゼ監督
ナト・ムルヴァニゼ、アフタンディル・マハラゼ
上映スケジュール:10月21日11:00/16:00/22日13:30/19:00/26日11:00

「あぶない母さん」Sashishi Deda (2017)107分は、ブログ「[映画] ジョージア映画 Scary Mother (あぶないお母さん)ーフィリピン妖怪マナナンガル(Manananggal)がジョージア映画に?」で紹介した作品。
50歳の主婦マナナは、社会そして家族が願う良き母・妻としての自分と執筆活動への情熱の間で揺れ動きます。作家としての情熱を捨てることができず、結果的に心身を犠牲にすることになります。

「微笑んで」Gaighimet(2012)91分
ルスダン・チコニア監督
イア・スヒタシュヴィリ、ナナ・ショニア、タマル・ブフニカシュヴィリ
上映スケジュール:10月13日19:00/14日11:00/15日13:30/16日16:00

テレビショー〈ジョージアの母〉コンテストで、さまざまな境遇におかれた母親たちが、優勝賞金を得るために競い合います。コンテストの出場者である母親は10名。10名のうち5名はジョージア社会でも底辺に属する女性たち。コンテストの懸賞であるアパートと2万5千米ドルをかけて競い合うのですが、競争が茶番であることを知り、全て幻想であると思うに至ります。コンテストの主催者は、参加者の不幸を利用し、イベントを盛り上げます。男性社会の俗悪さ、現代社会の空虚さが浮き彫りにされると同時に、困難な人生を懸命に生きる女性の姿が描かれます。

社会派系映画3選

「他人の家」Skhvisi Sakhli
(2016)103分/カラー
ルスダン・グルルジゼ監督
ズラブ・マガラシュヴィリ、サロメ・デムリア
上映スケジュール: 10月13日13:30/14日16:00/15日19:00/16日11:00

アブハジア紛争とは、アブハジア自治共和国が分離要求を掲げ、ジョージア中央政府との間で生じた紛争で、1992年8月から1994年4月の期間に起こりました。9月27日はアブハジアの州都スフミが陥落した日でした。この紛争はいまだ、解決されていません。

アブアジア・ジョージアの紛争で家を失った家族が、山村のうち捨てられた家に住み始めます。しかしそこは、急いで避難した元の住人の痕跡が残っています。紛争が人々にもたらした禍根を描いた作品。

「ヒブラ村」Khibula
(2017)99分/カラー
ギオルギ・オヴァシュヴィリ監督
フセイン・マジューブ、リカ・バブルアニ
10月23日13:30/24日16:00/25日19:00

ゴルバチョフが大統領就任後の自由化で、民族自決の気運が高まり、コーカサス地域では民族間の紛争が勃発。1989年4月9日、ジョージアのトビリシで行われたソビエトに対する抗議集会で、ソ連軍が市民に向けて発砲し19名の市民が亡くなりました。これによって、ソ連体制への反発はいっそう強まりました。その中で愛国運動の旗手となり、人気を集めたのがガムサフルディア。1991年、同氏は高い得票率で初代大統領となりました。

しかし、激情家のガムサフルディアは側近と衝突、首相や国防相なども離反していきます。そのような中、反ガムサフルディア派が大統領邸を襲撃、トビリシで市街戦が展開され、権力の座から追われることになります。チェチェンに亡命、1993年に蜂起するが失敗します。雪深い山中の逃避行をとおして、権力者と民衆の関係を描いた作品。

「陽の当たる町」Mzis kalaki
(2017)104分/カラー
ラティ・オネリ監督
上映スケジュール:10月23日11:00/24日13:30/25日16:00/26日19:00

ジョージアイメレティ州のチアトゥラ。19世紀末から始まったマンガンの採掘で旧ソ連時代は栄えたが、現在は古いインフラ、汚染などで人口は減少の一途をたどっている地域。町に居残る音楽教師、劇団員たちの生活や夢を描いたドキュメンタリー。

ロマンス3選

ロマンスとしてカテゴリー化してよいのか分からないほど、多様なジョージアのラブロマンス。3作とも男性監督のためなのか、どこかジョージア人男性の恋愛事情とその悲哀のようなものがうまく作品に込められています。

「ブラインド・デート」Shemtkhveviti paemnebi
(2013)95分/カラー
レヴァン・コグアシュヴィリ監督
アンドロ・サクヴァレリゼ、イア・スヒタシュヴィリ、カヒ・カフサゼ
上映スケジュール:10月23日19:00/24日11:00/25日13:30/26日16:00

40歳の独身教師の男が主人公。両親から結婚を急かされている。そんな中、彼は生徒の母親に好意をもつが、彼女には服役中の夫がいた。夫は出所後詐欺を働き、主人公も騒動に巻き込まれてゆく。

「告白」Aghsareba
(2017) 89分/カラー
ザザ・ウルシャゼ監督(「みかんの丘」)
イオセブ・フヴェデリゼ、ソフィア・セビスクヴェラゼ
上映スケジュール:10月23日16:00/24日19:00/25日11:00/26日13:30

カヘティ地方の田舎の教会に赴任した司祭が、村人たちの足を教会に向けるため、チャップリンやマリリン・モンローの映画上映会を企画します。その後、村の女性音楽教師がモンローにそっくりであることに気が付きます。非常にセクシーで抵抗しがたいその魅力に、司祭は聖職者としての使命と世俗的な欲望の間で葛藤します。これをもってジョージア正教を知ったとは言えませんが、彼らの生活などを垣間見ることができる作品。

「ケトとコテ」Keto da Kote
(1948)90分/白黒
ヴァフタング・タブリアシュヴィリ+シャルヴァ・ゲデヴァニシュヴィリ監督
メデア・ジャパリゼ、バトゥ・クラヴェイシュヴィリ
上映スケジュール:10月17日13:30/18日16:00/19日19:00/20日11:00

終戦直後に作られたジョージア初の絢爛豪華なミュージカル映画の傑作。1860年代、ロシア帝政下のトビリシを舞台に、ケトとコテが、困難を乗り越えて結婚を成就させるまでを描く。明るく大らか、当時の風物満載で今も人々に愛される作品。(岩波ホールウェブサイトより)

古典3選

ジョージアの田舎に行くと、深く刻まれた皺、グローブのように大きな手、長いまつげ、ぼくとつなのだけど、優しい瞳のご年配の人々に会います。そんな人たちが登場する映画。ジョージア人の人柄・自然・異なる時代・地域の文化が描写されている作品です。

「大いなる緑の谷」Didi mtsvane veli
(1967)85分/白黒
メラブ・ココチャシュヴィリ監督
ダヴィト・アバシゼ、リア・カパナゼ、ムジア・マグラケリゼ
上映スケジュール:10月17日11:00/18日13:30/19日16:00/20日19:00

広大な草原を舞台に、伝統を重んじて生きる牛飼いが、近代化の時代の波に歩み寄ることができず、家族とともに苦悩する姿を描く。映像など全てが高く評価され、特に農夫役ダヴィト・アバシゼの全身で時代に体当たりするような演技が印象的な不朽の名作。(岩波ホールウェブサイトより)

「スヴァネティの塩」Jim Shvante
 (1930)44分
ミヘイル・カラトジシュヴィリ(カラトーゾフ)監督
ダヴィト・カカバゼ美術
上映スケジュール:10月17日19:00/18日11:00/19日13:30/20日16:00

ジョージア北部スヴァネティ地方が舞台。今や観光地として、多くの観光客を受け入れ、開発が進みつつ同地方ですが、1400メートルを超える高地であるがゆえの過酷な自然環境。そして、一昔前までは今の比ではないほどの過酷な自然環境で人々は生活していたのでしょう。

ドキュメンタリーでは、スヴァネティの人々の姿が四季を通じて映し出される。岩山での重労働、争い、貧富の差、出産等が描かれ、ブニュエルの「糧なき土地」に先んじる名作と評価される。(岩波ホールウェブサイトより)

ブログ「[ジョージア] ジョージア北西部、不思議な塔のある風景:メスティア

「放浪の画家ピロスマニ」Pirosmani
(1969)87分
ギオルギ・シェンゲラヤ監督
アフタンディル・ヴァラジ、ダヴィト・アバシゼ
上映スケジュール:10月21日13:30/19:00/22日11:00/16:00

ニコ・ピロスマニ(1862~1918)、ジョージアのお札にもその作品が印刷されており、ジョージアの国民的な天才画家として知られています。日々のパンや酒と引き換えに、店に飾る絵や看板を描き続け、孤独のうちにその56年の生涯を閉じました。ジョージア人の心にはピロスマニが居ると言われるほど、ピロスマニとその作品はジョージア人の心を映し出していると言えるのではないでしょうか。人々のピロスマニへの愛を感じる作品。

ブログ「[ジョージア] 孤高の画家ピロスマニに触れるジョージアの旅のススメ

公開作品の一部を紹介させていただきましたが、まずはご覧あれ!
特に、ジョージアの旅行を計画している人には、1作品でもいいので、是非ご覧になっていただきたいです。はい。

岩波ホール

ジョージア[グルジア]映画祭 コーカサスの風(外部リンク
所在地:東京都千代田区神田神保町2丁目2−1(最寄駅:神保町)
入場料:
★当日料金:一般¥1,800/学生・シニア¥1,500/小・中・高校生¥1,200/エキプ会員・障がい者¥1,400
★映画サービスデー(毎月1日):¥1,400均一※レディースデーはない。
★最終回学割チケット:毎日、最終回に限り大学、大学院、専門学校生:¥1,200
★前売料金:1回券¥1,500 2回券¥2,800 4回券¥5,200 (岩波ホール窓口では7月3日より販売)
★前売料金:1回券¥1,500 2回券¥2,800 4回券¥5,200 ローソン(Lコード 33111)

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