ジョージアで制作されたドキュメンタリー「The Trader(物々交換)」は2018年にはインディペンデント映画の祭典、サンダンス映画祭にて短編審査員賞 ノン・フィクション部門で受賞、同年にNetflixにより購入された作品。ジョージアの映画制作業界では初、Netflixにより購入されたドキュメンタリーです。
23分と短いドキュメンタリーですが、ジョージアの地方、トビリシから南西に約100キロにあるクヴェモ・カルトリ地方ツァルカ地区の様子が伝わる短編で、ジョージアに関係がある人、旅行されたことがある人、興味がある人には是非観て頂きたい作品です。
ドキュメンタリーの主人公ゲラ(Gela―ジョージアで一般的な男性の名前です)は、ミニバス(マルシュルートカ)で移動しながら、中古の衣類や家庭用品、(安価な)雑貨を販売して生計をたてています。彼が商品の支払いとして顧客から受け取るのはお金ではなく、ジャガイモです。
女性用のショールに5キロのジャガイモ、電球1つに3キロのジャガイモ、古着に20キロのジャガイモという具合に、ジャガイモを受取、それをトビリシに移送して、金品を得、また商品を購入しています。
ドキュメンタリーは主人公の商売を軸に、人々の生活を描写しており、とても興味深いです。
ツァルカ地区は、ジョージアのシベリアと呼ばれる地方で、冬季は零下20度ともなる寒冷地。この気候を生かして、ジャガイモの栽培が盛んに行われており、トビリシのスーパーに秋と春先に並ぶジャガイモの多くはこの地方のものが多いと聞きます。ドキュメンタリーが扱っているテーマだけではなく、お仕事でご一緒する機会があったオペレーター(撮影技師)がこの制作に関わっていたため、更に身近に感じました。
23分と短いドキュメンタリーですが、ジョージアの地方、トビリシから南西に約100キロにあるクヴェモ・カルトリ地方ツァルカ地区の様子が伝わる短編で、ジョージアに関係がある人、旅行されたことがある人、興味がある人には是非観て頂きたい作品です。
あらすじ
Potatoes are money for us.Euro, US dollers, Georgian lari...Everything is potato...ジャガイモもは私たちにとってお金です。ユーロ、米ドル、ジョージア・ラリ...すべてはジャガイモです。「The Trader(物々交換)」より
女性用のショールに5キロのジャガイモ、電球1つに3キロのジャガイモ、古着に20キロのジャガイモという具合に、ジャガイモを受取、それをトビリシに移送して、金品を得、また商品を購入しています。
ドキュメンタリーは主人公の商売を軸に、人々の生活を描写しており、とても興味深いです。
ドキュメンタリーの舞台ージョージアのシベリア、ツァルカ地区
ツァルカ地区のジャガイモの収穫の様子 |
たいていは、そのような保存状態であるため、氷点下を下回る気温でジャガイモは傷み、売り物になりません。そのため、地区の住民はトビリシ等から買い付けに来た仲介業者に収穫後直販売する等、収穫物の価格の上昇をまたず販売せねばならないという事情があります。
こんな状況であるため、同地区の住民の多くは現金収入にも乏しく、まだまだジャガイモ等の収穫物を媒介とする外界との「物々交換」が行われています。
ドキュメンタリーの物々交換、ちょっと高いなぁって思ったけど・・・
ドキュメンタリーで見られた物々交換、お古のブーツがジャガイモ25キロ!と高い!と感じました。1キロが30から60テトリの間でジャガイモが販売されているということ、また人々の平均的給与(定期的に給料を得ている人口もごくわずかだけど・・・)が300ラリ程度であることを踏まえると、25キロ=7.5ラリから15ラリという出費は大きい。しかし、同地区はいつも品薄。なおかつ住民は、現金不足から、コミュニティの外に出る機会は乏しい上に、地区の中心地でも手に入るものが限られているので、いろんな品物は魅力的に見えるのでしょう。ゲラが持ち込んだ女性もののスカーフ、衣類などは、現地の女性にとても魅力的にみえました。
モザイク状の人口
寒冷地である他にこの地域の非常にユニークな事情は、その人口の多様さです。古くは、ギリシャ系の移民が生活し、ギリシャにルーツを持つ人口も一部健在である他、アルメニア系、そしてジョージアでも災害多発地域である、北部のサメグレロ地方、西部のアジャラ地方から移住してきた住民もいます。今でこそいませんが、かつてはドイツ人も生活しており、ドイツ人の教会の建物が残っています。こんな多様な地域であるが故に、時にジョージア語が通じないということを経験するのもこの地域。使用言語はロシア語、アルメニア語、ジョージア語等です。
まとめ
ジョージアという国は日本の国土の5分の1程度のコンパクトな国ですが、西の黒海地域から、アゼルバイジャンと国境を接する東、北をロシア、南をアルメニアとトルコと接し、それ故の近隣諸国との関係・歴史があり、気候も人口も多様。そのため、トビリシとバトゥミを見るだけではもったいないと思うのは、ジョージアを知る人なら誰でも思うのではないかと思います。では、ツァルカ地区は観光向けかと聞かれると、わかりやすいアトラクションがないため、すんなり「YES」とはいえませんが、こんな場所もあるのかぁと一見してほしい場所でもあります。まずはドキュメンタリーをご覧ください。
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