世の中は世俗化してない!?オランダの聖書地帯(Bible belt)にみるオランダの多様性

社会学では、社会が世俗化したと言われています。社会学でいうところの世俗化とは、「宗教が近代社会で衰退」し「世俗的な規制や規範に置き換っていく一つの社会過程」をさし、社会はこの方向に向かいつつあると考えられています。

しかし、社会学の大家、故ピーターバーガー教授は、世界は今までになく宗教的で、また我々は世俗化された社会ではなく多元的な社会に生きていると言います。ヨーロッパの国々では日曜日の礼拝に足を運ぶのは、年長者ばかりで、これだけを見れば、世俗化の進展と考えますが、世界はまだまだその精神世界がそのままに残っていると同時に、そのあり方は従来の、コミュニティや国が主導するものから、個人の生活環境、嗜好により変わりつつあります。

マルティ二教会

聖書地帯

社会は今までになく宗教的である。それらは様々な国にその例を見られます。アメリカ合衆国の中西部から南東部にかけて、プロテスタント、キリスト教根本主義、南部バプテスト連盟、福音派などが熱心に信仰され、地域文化の一部となっている地域があります。人々は聖書地帯と呼んでおり、この地域の礼拝への出席率は高く、保守的で、進化論を教えることを禁止する、中絶、同姓婚などにたいして反対の立場。

オランダにもそのような地域が存在しております。実際はどのあたりを指すのか、オランダの友人に地図を片手に尋ねました。友人曰く、オランダ東部のオーファーアイセル州スタッポルスト(staphorst)から、ズヴォレ (Zwolle)を通り、オランダ南西部のゼーランド州に抜けていく様子を指でなぞりました。特に、その色合いが濃いのがゼーランド、フェルウェ湖沿いの町々で、漁師を生業としている人が多い地域です。

そのライン以北はプロテスタントでも極めて緩やか、そして以南はカトリックが多い地域となります。時に飛び地のようにして、北部にカトリックが多数を占める市町村が存在しますが、逆はあまり聞きません。

オランダの聖書ベルトの生活

教会の出席率の高さはもとより、オランダの極めてラディカルな政策、安楽死、同姓婚、同性愛者の権利、中絶に反対の立場。彼らの生活は質素で、テレビがない、日々楽しむ音楽は教会音楽、女性は長いスカートを着用し、友人曰く、日曜日は祈ることしか許されないようです。日曜日には勿論お店は開きません。

以前に中国系移民が同地区でレストランを開こうとした際に日曜日の営業を止めてもらうためにコミュニティでお金を支払った、あるいは日曜日に開店するお店の不買運動があるなどの話も聞き、彼ら宗教に属さぬ人たちにも少なからず影響を与えています。

また、予防接種も神の予定に反するものとして、退ける傾向があり、過去には予防接種を受けなかったコミュニティでポリオが広がり、多数の死者を出したこともあります。スタッポルスト(Staphorst)、ズゥオレとアッセンの間にある都市が特に有名です。この地域では先の選挙で、反移民、反イスラムを掲げる極右政党が躍進しました。

今に続く宗教戦争によって作らた境目

八十年戦争(1568~1648)時、オランダ南部の北ブラバンド地域は、スペイン軍に占領されました。住民はカトリックに改宗するか、その地を去る選択に迫られました。そのため、1609–21年の12年休戦の間、住民の多くは北に移住しました。移住した信徒たちは、その中でも様々な会派を設立し、今でもその教えに従い生活しています。オランダの聖書地帯は、北ブラバンドの北部に沿うようにして、聖書ベルトは存在しています。

プロテスタントとカトリックは同じキリスト教なのですが、その関係は政治的、歴史的には複雑です。以前、フィリピンのカトリックの神父が、異なる宗教者間の対話以前にキリスト教内での対話がもっと必要と話をしてくれたことを思い出します。いみじくも「近いものほど和解と理解が困難」と話していました。近いがゆえに、妥協できない一線があるのでしょう。

先鋭性と保守性が同居するオランダ

住む前に知ったオランダは大変、進歩的でした。同性婚、マリファナの合法化、売春の合法化、安楽死等、世界のあらゆるところで決着がつかない問題を、いち早く法整備したのがオランダ。
また、一般向けテレビでぼかしなしのヌードでのデート番組があるのもオランダ。参考ブログ「オランダ人の羞恥心一体どうなっているの!-驚きのオランダの番組」一方で、こうした保守的な場所があるということは、この多様性に改めて驚かされます。

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