フィリピンのテロリズム―リザールデー爆弾事件、年末の大都市を襲った恐怖(2000年)

本日、フィリピンは英雄の名を冠した休日、リサールデーで休みです。

120年前(1896年)の12月30日、当時フィリピンを統治していたスペイン政府の圧政を訴え、革命勢力にインスピレーションを与えた知識人ホセ・リサールがスペイン政府により銃殺刑に処せられました。

そして16年前のこの日、首都圏マニラの数か所で爆発が起こり、22名が亡くなり、多くの負傷者を出しました。仕掛けられた爆弾は全部で6つ、それらが5か所で爆発しました。高架鉄道(LRT)、マニラエルミタ地区のPlaza Ferguson(米国大使館から100メートル)、EDSA通りのバス、ニノイアキノ国際空港、マカティ市のガソリンスタンドのそば。

とりわけ、Blumentritt LRT1駅の高架鉄道内での爆発とその犠牲者は大きく、公共交通機関で起こるテロの恐ろしさを人々に印象付けました。それら爆発は、テログループ、ジャマイスラミーヤ(JI)によるもの。

爆弾には1キロの黒色火薬、そして時限装置が使用されました。また、爆弾製造に使われた材料は、セブ島タリサイ、ダイナマイト漁で有名な地域で入手されたと後日供述。のち2009年、事件に関わった被告3名は終身刑の判決を受けました。

この事件は、私がフィリピンに渡航する前の話。そして、この話はこれまで幾度となくフィリピンを襲ったテロの一部、悲しいことにこれまでテロ行で多くの死傷者をだしてきました。

だから、フィリピンは危ない!と言うのは短絡的な話です。テロリズム指標が示す通り、OECD加盟国でもテロ件数が近年増えつつあり、それらの国は、比較的犯罪率が低い国々です。フィリピンはもともと軽犯罪も重大犯罪もOECD加盟国よりは多いのですが、テロが起こる要因とは通常の治安状況からはのみでは測れません。

ただ、問題は国の制度上の問題、そしてそれら犯罪を取り締まる国の警察力。上記の事件の首謀者は近隣国と行き来、密入国していましたが、それは後日わかったこと。また、容疑者は指名手配になって以降、実際逮捕に至るのは事件発生後から年月を要しています。

フィリピンの地理、反政府グループの存在、そして警察の数*、インテリジェンスの質など、それぞれが相まってテロ対策に関してはOECD諸国とは異なる次元での事件の調査、解決の難しさがあると思われます。

ここ数週間のうちに受け取る在外日本国大使館からの注意喚起のメール故に、年末に起こった悲しい事件を思い出してしまいました。

悲しい事件が多いですが、家族そろってあるいは、大切な人と年末年始を意義深く、あるいは楽しく過ごせるように祈っています。

*フィリピンの警察の規模は16万人。10万人に対して154名です。2008年の12万2千人からなので、増加傾向。

Total Police Personnel - United Nations Office on Drugs and Crime

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