死者と共に生きるフィリピン人- 家族で過ごすフィリピンの諸聖人の日(万聖節: All Saints' Day)

11月1日はフィリピンは諸聖人の日(万聖節 All Saints'Day)で休日です。カトリック教会の祝日の一つで、全ての聖人と殉教者を記念する日ですが、フィリピンでは聖人のためではなく亡くなった信徒たち(親族)のために祈る日になっています。

フィリピンの諸聖人の日
諸聖人の日にご先祖(親族)のお墓を訪れる人々写真は「アパート」タイプの御墓

日本的に言えば、お彼岸などで先祖のお墓にいくのと似ているかもしれません。しかし、家族が集まり、親族が眠る墓地に行き、そしてもうそこにはいない死者を意識し、時間をともにします。中には墓地で一日過ごす家族もいます。

諸聖人の日は大混雑の墓場

休日であり、また皆が同じく墓所に行くため、かなり混みあいます。
木々の木陰のない旦那のご先祖様の墓所は、とくに日暮れ近くに込み合います。どれぐらい混むのかと言うと、帰宅ラッシュ時の東京23区内の駅のような人口密度になります。

人があるところ、商売・ときに犯罪もあり。警察が交通整理をしながら、事件やもめごとなどが起こらないように見守ります。忙しく、車やバイクが到着、それを脇目に露天商が軒を広げ食品を販売しています。バーベキューのいい香りもしてきます。
墓所の入り口は人の行き来と、露天商のお客さんでごった返しています。

諸聖人の日のフィリピン墓地
諸聖人の日、フィリピン、込み合う墓所
そうした事情と、もともとの狭い敷地面積のゆえに、旦那の先祖のお墓はかなり込み合っています。そのため、一日中過ごすということはしませんが、墓地へ行き、お墓の周りを掃除して、蝋燭をともし、しばし死者と時間を共にします。

フィリピン諸聖人の日露天商
諸聖人の日 露天商が墓所の前で店を広げています

墓場の上も乗ってしまうのがフィリピン流?

旦那のご先祖様のお墓に着くと、甥っ子や姪っ子がさっそく、墓石の上に立ちたがります。そして、なんと、遊び始めます。音楽をかけてダンスをしたり、セルフィーを撮ったり。

墓石の上に乗るなんて、なんて罰当たりな!!!!と初めて見たときには「ぎょ」としましたが、今では生きているときの身体的な感覚と近いのだろうなと理解しています。とりわけ、フィリピンではハグしたり、頬にキスをしたりすることが日常的なので、ご先祖様のお墓の上もある種彼らに触れているという一種の表現なのだろうと思います。

あと、一言付け加えると、フィリピンでは子どもを(日本の基準でいうところの)お行儀の悪さでしかるということはめったにありません。あまりよろしくないけど、しかるまでもない!という理解も可能です。

墓場で過ごすクオリティタイム?

旦那のご先祖の墓所は狭く長く過ごすことに適していませんが、スペースが十分に確保できる場合は、ピクニックの装備で一日過ごします。

スペースが十分にある墓所では茣蓙を広げ、ゆっくりします。お墓参りには、もちろんお弁当持参です。子どもたちは、墓場を走り、大人たちはトランプをこうじていたりします。聞くところ数時間あるいは一日を墓所で過ごすのだとか。

日本人からすると、とても不思議な光景です。しかし、どの国にもその国独自の風俗があります。フィリピンのこうした風習には、死者がその時期にその場にいると信じる気持、あるいは信じたい心情の表れと理解できます。

そのため、諸聖人の日となると食べ物をとにかく多く準備して、大いに食べ、大いに語らい、そして彼ら流に死者を悼みます。

ジャック・オー・ランタン
コペンハーゲン軒先で見たジャック・オー・ランタン

オランダではどうしているのか

さて、著者の現在の居住地オランダでは、休日ではありません。そして諸聖人の日は、あまり意識されておらず、その前夜10月31日がハロウィンの方が盛り上がりました。

ここ数週間はとくに子ども用のハロウィンの衣装が店頭に並び、この日ばかりはと仮装を楽しむ人々がいました。町ではハロウィンパーティも行われていました。

ランタン用のかぼちゃ
オランダのアメリカの製品を売っているスーパーで、ランタン用のかぼちゃを発見。
お値段は8ユーロ前後

かぼちゃをくりぬいて作るジャック・オー・ランタンはこの季節の風物詩ともなっており、ヨーロッパの街中で、家の軒先でしばし見かけます。怖い顔や滑稽な顔を作り、悪い霊を怖がらせて追い払うためつくられます。夜はジャック・オー・ランタンの中に蝋燭を置き、街灯の役割も果たしています。

想像するに、このジャック・オー・ランタンを作った家族の食卓はかぼちゃづくしであろうことが予想されます。

ハロウィンは、もともとはケルト人のドルイド信仰の一つとして始まり、本来の意味が薄れた今も形式として残り、さらに異なる意味が付与されています。昔は、季節の境目を意味し、それに応じた儀式が行われていましたが、今は皆が集まり、仮装をして楽しい時間を過ごすという個人化された社会をつなぐ一つの行事となっているようです。

ハロウィンを前後して、ヨーロッパの十数カ国が夏時間から冬時間(1時間時間を遅らせる)に切り替わっています。この日からさらに日中の時間が短くなり、長い冬の始まりとなります。
10月30日から冬時間となり、時計の針を一時間ほど遅らせていますが、それでも日没が早くなったと感じます。

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