のびのび、すくすくのオランダの教育は先進国でNo1?オランダの教育制度とはどんなものか?

オランダの教育制度の話を聞いて、大学で見かけるオランダ人学生を見る目が変わりました・・・というのは大げさですが、オランダの大学数は限られており、ごくひと握りのエリートのみが大学入学可能となっています。

勿論、自由の国オランダは就職後も学びたいと思うときに大学や高等職業訓練校に職場のサポートを得て入ることも可能なようですが、ストレートで高校から大学へ行く人はごくわずかなようです。

国旗を掲揚するオランダの家屋
国旗を掲揚するオランダの家屋
家屋には、国旗を掲揚するためのポールがすでに取り付けてあります
子どもがいない私が何故そもそもオランダの教育制度に興味をもったのか?それは単純に他国で生活する好奇心そして、前職子どもの福祉関係の仕事についていたからというのもありますが、より注意をもって聞くようになった理由はオランダ人ではないお母さん方の会話からです。

「うちの娘を大学に通わせたかったけど、数学の成績が良くなくて。。。」という高校生を持つフィリピン人お母さん、「進捗が遅くて、これでオランダ以外で勉強することになったら私の子どもは落ちこぼれてしまう・・・」という小中学校の子どもを持つポーランド人のお母さん。

フィリピンの教育は、成績の良い子を表彰し、競争させていきます。小学校から成績優秀者、クラスでもベスト10を表彰したり、成績優秀者に卒業スピーチをさせたりするため、フィリピン人のお母さんたちの困惑は想像できます。

大学構内にある池で遊ぶ飼い犬(野良ではありません)

学校が楽しい!オランダの子どもたち

2007年ユネスコは、21の経済先進国(全てOECD加盟国)の子どもや若者を取り巻く状況に関する研究報告書「An overview of child well-being in rich countries(先進国における子どもの幸せ)」(Report Card 7)を発表しています。この研究では、各国の子どもの福祉を、「物」、「健康と安全(治安)」、「教育」、「友人や家族との関係」、「日常生活上のリスク」、そして「子どもや若者自身の『実感』」の6つの角度から考察しています。

6つの側面からの考察で、オランダは総合で1位と高い評価を得ていました。子ども幸福度世界一のオランダの教育制度とはいかなるものなのでしょうか??人々の話によると、学齢期の子どもたちは「学校が楽しい」といい、学校での友人関係も含めて極めてこどもらしい時代を送っていると聞きます。その背後にオランダの比較的自由な教育制度があるようです。

オランダの教育制度

1. 初等教育 4歳~ 12歳(幼稚園〜小学校)

子どもたちが基礎的な学力を養います。しかし日本のように決まった学区はなく,保護者は子どもが 5歳になると、通学可能な学校の中から選択します。入学は4歳の誕生日を迎えたら可能になるそうですが、5歳から義務教育がスタートします前後して、親は学校の情報の入手に奔走します。

オランダでは公立のみならず私立校も存在し、特に宗教系の学校カトリック、プロテスタント、イスラム系の学校があるようです。それらの学校は国からの援助で、私立だからと特にお金がかかるということはないようです。

学校は勿論教えなければならないところは押さえているものの、それ以外は学校独自のカリキュラムを組めるようです。自由裁量というと響きがいいですが、その分教育の質が悪ければ親は子どもを学校に送らなくなりますので、学校・教員側も必死なのだとか。

小学校から落第があるようですが、落第したからといってのけものになる訳ではなく、周囲に温かく見守られながらのびのびと学べるようです。子どもたちが小学校の6年生になると全国統一試験を受け、その結果を材料に今後の進路を話し合います。

選択肢は以下の4つ
1. 大学進学コース 6年
2. 上級一般コース 5年
3. 中級一般コース 4年
4. 予備職業学校  4年
入学試験はないものの統一試験の結果が良くなければ学校側から拒否されてしまうようです。

2. 中等教育 3 ~ 6年間

試験にパスした学生を祝うバナーそして、国旗には
通学に使用したカバンがぶら下がっています
一般コース(進学)や職業コースに分かれており,さらに上の実務専門学校や大学進学の準備をする期間。コース分けがすでに行われているものの中学に入って成績が伸びる子どもたちも、その逆もあるため、1年間ほどを観察期間としているようです。

自分の進学するコースがこの時期に決まってしまい、ある種将来がこの時期に決まってしまうため、子どもたちのやる気がなくなってしまう場合もあるため観察期間をもう少し長くすべきであるという声もあるようです。
はじめは忘れ物だと思っていたカバンですが、
このおうちの子が試験に合格したという印
最終学年にもなると試験の日々が始まるようです。各学校の試験から、5月になれば全国統一模試が行われるようです。各学校によってパスしなければならない科目数が異なります。大学進学コースは最低7科目、上級一般コース、中級一般コースは6科目。合格科目数が多いほどディプロマに箔がつくようです。

卒業試験に合格した学生を輩出した家には国旗と同時に通学で使用したカバンが掲げられるようです。競争が少ないオランダとはいえ、名誉なことなのでしょう。きっと。 

3. 高等教育

実務専門大学校と大学教育がある。実務専門大学校に進んだ生徒は、技術・応用物理・経済学、教育学などの専門分野を学びます。

こちらで勉強する学部レベルのインドネシア人学生は、英語での授業が行われる生物化学を学んでいる学生が多いです。また、オランダ国籍を有するアルーバ人の学生のひとりは英語教授法を学んでいます。知人のひとりは成績がよいため、実務系専門大学から大学に進学できると誇らしげに語ってくれました。

大学は全国13校ある中から選ぶことできます。希望大学の希望学部に入学が可能だそうですが、希望者数が多い医学部は抽選になると聞きます。学部ごとに大きな学費の差はないようです。

文学部も医学部も学費がほぼ同じで且つ、基本奨学金がありそれをオーバーする場合はローンを組みます。伝統的に 4~6 年の修士課程,博士課程が中心で、卒業までの課程が大変厳しいそうです。友人が試験で数日図書館に通い詰めという話をよく耳にします。

このシステムの途中からでも進路の変更が可能です。必要な学力を身につけさえすれば、就職を希望していた生徒が、大学進学に変更可能です。やり直し可能で、自分の進路を自分でしっかり考えさせるシステムが子どもたちの自主・自律を促していくようです。

まとめ

オランダでは初等教育ではかなりのんびり、自由に学ばしていますが、中・高校からその学問の量は増え、そこで容赦ない進路選択が迫られており、シビアです。しかし、塾などに行く子どもたちは少なく、学ぼうと思えば、親の財力に大きく影響されない学びの機会があるということは、素晴らしいことだと思いました。

一方、学問が遅れがちになるのは移民の子弟。全てオランダ語で授業を行うため、授業についていくことは簡単では無いようです。それでも、自らの努力とサポート、家族の支えで高等教育まで終了する移民の2世たちはいます。

日本の教育がダメで、オランダの教育が凄いという短絡的な意見には行き着かないものの名ばかりで行った意味が薄い名ばかりの大学に何が何でも行かねばならない風潮がないということは学ばないといけないと思いました。


参考ウェブサイト
ユニセフ・イノチェンティ研究所 先進国の子どもたちに関するレポート発表
https://www.unicef.or.jp/library/pres_bn2007/pres_07_14.html

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