ドゥテルテ大統領、人気の理由

「オバマ地獄に堕ちろ!」「教皇は娼婦の子」「国連のバカ連中」、「国連なんて脱退してやる」ともう好き放題のドゥテルテ大統領。こんなハチャメチャな外交、過激な麻薬撲滅政策に眉根を寄せる人も少なくありませんが、それでも一定の人気を保っています。

なぜ、支持する人がいるのか?これは、おそらくフィリピンの歴史、国民性、そして社会を知らなければ理解に苦しむと思います。

なぜドゥテルテ新大統領は人気があるのか

理由その1:地方出身の大統領
まず、マニラ出身ではないこと。フィリピンは、各地方ごとのアイデンティティが強く、いまだ国民国家として成立したとは言えないと私は思います。ところが、大戦を経て国として独立することになりました。国の中心は、マニラ。そして国語はマニラ周辺の一地方の言語であるタガログ語をベースとしたフィリピノ語。政治はいつもマニラ中心に展開します。

他の地域の国民はなんだか除外されているような感覚になります。そんな中地方、とくに開発が遅れているミンダナオ島の一市長が大統領となる!ということで、いやがおうにも期待は高まります。
「マニラ中心の政治」が変わるのではないかという期待が大きいです。

参考までに以下、大統領選でドゥテルテ候補が勝った地域を挙げます。ここから、どこの地域がドゥテルテ氏に多く票を投じたのかがわかります。

(c) Inquier from http://newsinfo.inquirer.net/785257/duterte-lead-thanks-to-new-solid-south-vote-rich-ncr-and-cebu
赤く塗られた地域が、ドゥテルテ大統領への票が多かった地域。ほとんどの地域のミンダナオ。セブ、そしてマニラ。

ミンダナオ島、住民から絶大な支持です。ミンダナオ島民のアイデンティティを大統領選で表現した形となりました。
紛争や犯罪グループの割拠で暴力に悩んでいる地域から、暴力を暴力で抑える大統領が誕生したのは皮肉と言わずして、何と言いましょうか。

理由その2:言行一致

政治家の嘘、汚職に疲れた/怒った国民に、明確な選挙公約を掲げるドゥテルテ大統領は魅力的に映ったことでしょう。現在は麻薬撲滅対策一色ですが、これは選挙期間中に公約として掲げてきたこと。大統領就任後、それを確実に実行していく姿を見て「ホンモノだ」と思ったようです。過激で、法を無視した麻薬対策にも、どれだけ大統領が素晴らしいか、またどれほど国民の安全が向上したのか!サポートする声も多数あります。

理由その3:海外にこびない

暴言政治故に投資が減り、海外要人からも「イエローカード」が出されてもどこ吹く風。長い間、外国勢力に蹂躙されてきた歴史を考えると、大統領の発言が鬱屈した国民意識のはけ口ともなっていることでしょう。実際、フィリピンでときに出くわす笑えない冗談は、植民地時代の傷といってもよいと思います。そのようにフィリピン人の冗談を分析する知人も数人おり、このように理解するのは私の独断ではありません。(念のため)

なので、理性では外交関係を考え望ましくないと思いつつも、こうした大国や力をもつものを中傷する発言があると会場からはどこからともなく拍手が湧きます。

先月は「オバマ大統領は娼婦の子」発言で、オバマ大統領の二国会談が中止となりました。一方中国との関係で歩みを進めることになり、アメリカは外交上の自殺点を挙げたと言われました。

これを計算してやっているのだとしたらすごいと思います。アメリカと距離を置き、中国ともうまく付き合うことができたら、フィリピンという国を一つの緩衝地とする一つの外交のモデルができるかと思います。

ただ感情に任せて言っているのであれば、最終的にはフィリピンを窮地に陥れてしまうことでしょう。

理由その4:庶民的(に見える)

社会階層で社会が断絶されているフィリピンでは、エリートとその他の隔絶がはなはだしい現実があります。その代表が政治家。政治家はエスタブリッシュメント層の一種の代表です。フィリピンの現政治家の多くはフィリピン大学、アテネオ大学などの名門校、あるいは欧米のを卒業、そして両親は良家の出であり、身のこなしもスマートな政治家も多く、国民を代表しているという感覚を持っている一般市民は少ないようです。

例として、私の生活していた、ビコール地方、南カマリネス州の知事は最年少(現在27歳)、外国で学を修め、ハンサム(?)、そして、政治一家。お父さん、おじいちゃんで交互で知事をしてきました。就任当時政治経験なし、政策もかなり?で、教育分野を力を入れたいと一番当たり障りないことをいう若者が家族の後ろ盾、政治基盤の故に知事になってしまうことが、フィリピンの政治ではただあります。

南カマリネス州の知事、2014年洪水後に救援物資を届けにコミュニティを訪問。終始一言も発せず、一緒に来たお父さん(政治家)の政治演説となっていました。 彼に政治家になって本当にやりたい、政策があるのか?社会を変えたいと思っているのか、お聞きしたいところです。
そんな中、どこにでもいそうな高齢のおじさん、しかも出身校は所謂名門校の出でも、海外で学んできた海外組エリートとも異なります。そんな人物が大統領として立候補したのですから、“庶民派”の大統領とイメージされても不思議はありません。

あくまでイメージですけどね。

されど・・・

大統領が掲げる連邦制は、地方行政を行ってきた政治家ならではの提案です。これは、実行されるべき政策でしょう。地方都市に生活していた経験から如何にマニラが優遇されているのか思い知りました。首都集中型の政策から、地方の開発は遅れてきました。そして、人々は職を求め、マニラに流れて行きました。それによってマニラの人口密度は高くなり、慢性的渋滞は都市としての機能を低下させています。

しかしこの政権がいつまで続くのか・・・わかりません。

言行一致と言われる政治も、麻薬対策をのぞいてはビジョンも具体性もありません。外交は完全に大統領の後先を考えない発言に左右され、海外の投資家はフィリピン以外の国にその可能性を見出すでしょう。そして、大統領の売りの一つ「庶民的」がどこまで通じるのか、わかりません。実際、ダバオは大統領一家の私物と言ってもよいほどの影響力で、他の政治勢力が育ってきていません。大統領の娘が現在市長を務めています。

「短期的で見える成果を期待する国民」にどこまでドゥテルテ的パフォーマンスが通じるかということです。成果として、麻薬関連の容疑者の検挙者数をあげますが、これが社会に大きな影を落としていることは否定できません。

独裁政権に苦しんだ過去があるフィリピン。同大統領でまたの独裁政権を経験することになる・・・とは思いませんが、個人として失うことを恐れない71歳の大統領がどんな無茶をするのか、わかりません。

月並みですが、注意深く静観するしかないと思います。またブロガーとしては、あまりにもSNSで政権サポーターが多く、「政府の麻薬対策=安全」をアピールするので、思わず、政権の抱える問題に焦点を当てた記事書きとなっていますが、「政権の問題点をいぶりだす」だけではなく、「同大統領の可能性」にも目を向けて行きたいと思います。

けど、著者の立場はあくまで著者自身がフィリピン人だったら、同氏に絶対投票しなかった!というものですけどね。

スポンサーリンク

スポンサーリンク

0 件のコメント :

コメントを投稿

Subscribe