差別的? オランダのクリスマスを巡る議論

紅葉する木々
この2週間で木々は紅葉し、道路は落ち葉の赤い絨毯。そして、日照時間がぐっと短くなりました。この頃からオランダはクリスマスの装いを見せ始めます。オランダ人思いのほか気が早い?と思うのは見当違い。12月5日にオランダ版クリスマス、シントニコラス祭があるためで、こちらが25日のクリスマスよりも盛大に祝われています。

来月11月17日のシントニコラス祭恒例の行事を目前に、シンタクラス従者のピートは黒人奴隷を彷彿とさせ差別的であると、これまで幾度も行われてきた議論が昨今オランダで白熱しています。

シントニコラスは、4世紀頃に小アジア、現在のトルコで司祭を務めた実在の人物。貧しきもの、弱きものを助け、信仰なきものに道を教え、また多くの奇蹟をおこなったとされる。全ての教派で聖人として崇敬を集めています。オランダではシントニコラスは特に子どもたちに人気で、いい子にしていると煙突からお菓子が届けられます。しかし、不思議なのはその現れ方。深紅のローブに身を包み、黒人の従者ピートと共に蒸気船に乗ってスペインから登場します。

国連人権委員会はピートがセントニコラス祭の重要な位置を占めているのか、また人種差別の典型であるかの検証を行っています。今年の一月のオランダ政府に宛てた書簡では、ピートのキャラクターや様相から、アフリカ人をイメージさせ、彼らがセカンドクラスの市民、オランダ社会の中での劣等意識を助長させると述べられています。また、ピートの持つ性質がオランダのシントニコラス祭のUNESCOの無形文化財のリストに入る努力を無為にしているとほのめかしています。

Facebookでのピティション
オランダの国連大使は、ピートが一部の人たちにとっては不快であることを認めつつも、シントニコラス祭が国連の文化遺産のリストにあること、そしてこれは子どもたちのお祭りでありなおかつあくまで主役はシントニコラスであると応え、書簡の返答としました。

お祭りでピートを演じるのは白人が大半で、顔を黒く塗り赤くぽってりとした唇を目立たせるため口紅を塗り、かつらをかぶり、まさに道化のような様子です。恒例行事には毎年500名ほどがピートに扮し、サンタクラスと共にアムステルダムの街を練り歩きますが例年にない強いプロテストと国連の調査まで入り、それがお祭りにどのように影響するのかは現在のところ分かりません。

一部ではピートが差別的であると述べるアフリカ系移民に対して、このオランダの恒例行事が差別的であると気に入らないなら、この国から出ていけ!という乱暴な意見も聞かれているようで、看過できない問題であります。
しかし、多くのオランダ人が特にこれは奴隷制を意識したものではなく、何ら差別を助長させるものではないとして、今回の騒動が最終的に祭りの大きな変化に繋がらぬよう、Facebookなどでもキャンペーンを張っており、長く続いた伝統が変わることをよしとしない人たちも多くいることがわかります。

この議論、どのように決着がつくのか見守りたいです。

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