コラソンアキノ前大統領の亡くなられた日を偲んで

8年前の今日は、コラソンアキノ大統領が結腸癌で76年の激動の人生を終えた日です。通称コーリーは、前フィリピン大統領、ノイノイことベニグノ・シメオン・コファンコ・アキノ3世のお母さんで、マルコス独裁政権打倒のシンボルとして突如歴史の舞台に現れた女性政治家、その肖像はフィリピンの500ペソ紙幣にプリントされています。
コラソンアキノTシャツ
コーリー通夜の晩に購入したTシャツ。結果
記念となったわけですが、豪雨でびしょぬれで、
着替えとしても大変重宝しました。

コーリーの生い立ち

コーリーは、フィリピン・ルソン島中部のタルラック州の富裕な華人の家に生まれました。結婚前の名はマリア・コラソン・スムロン・コファンコ、国家の中の国家と言わしめた富豪の家に生まれ、その後アメリカで教育を受け、結婚と良家のお嬢様のどこにでもあるようなストーリーのようですが、結婚相手は政治青年ベニグノ・シメオン・アキノ・ジュニア、そこから激動の人生が始まります。

政治青年ニノイとの出会いとアメリカ亡命生活

ベニグノ・シメオン・アキノ・ジュニア、通称ニノイはフィリピンの上院議員。ニノイはその当時権力を握るマルコスにうとまれる存在で、マルコスが戒厳令を引くと危険人物として逮捕・投獄されます。容疑は、政府転覆の陰謀、殺人などで、1977年に死刑を宣告されたものの国民に人気のあるニノイを本当に処刑することはできず、アメリカ合衆国で心臓のバイパス手術を受けさせるという名目で、ニノイをフィリピンから追放しました。

ニノイは、コーリーと子どもたち共にアメリカ合衆国に逃れることになりました。コーリーは亡命生活中が家族そろって過ごせる一番穏やかな日々であったと回想していたそうです。しかし、運命は時を待たず、夫のニノイも覚悟の亡命先アメリカからの帰国、フィリピンの地に足をつけたと同時に暗殺されます。ニノイの暗殺によって、一気にくすぶっていた政権への不満が噴出します。

ニノイ上院死後

ニノイの暗殺後、その夫人であるコーリーが注目を集めます。政治経験ゼロにも関わらず彼女を政治の舞台に引っ張り出しました。1986年に、マルコスは、国民の不満を解消するため、大統領選挙を行わざるを得なくなっていたが、そこに立候補したコリーは徹底して反マルコスキャンペーンを行い、国民の支持を得ます。そして投票日、選挙管理委員会はマルコスが勝利したと発表したものの、コリーと支持者達は選挙の不正を訴え抗議、民衆が立ち上がり、軍の高官たちもマルコスを見放しました。そして、エドサ革命を経てコリーが大統領として就任します。

女性初のフィリピン大統領

大統領就任後は、独裁政権後の混乱を収拾しつつ、憲法の改正、農地改革法の成立を行いました。国内の反政府勢力との対話、国内の情勢不安の解消には至らず、また前述の農地改革もフィリピン社会の抱える根本的問題、大地主による土地の支配からの解放には至らず、一政治家として後に評価される際にはやや不満が残ります。しかし、国民を動員しての国政の変化は恐らくどのような政治家たちにも出来なかったであろうし、また「政治の素人」である彼女のクリーンなイメージは新しい時代のシンボルともなりえたのだろうと思われます。

古い500ペソ紙幣では、コーリーの夫のニノイ上院議員の身でしたが、
新しいフィリピン500ペソ紙幣には夫婦お二人が描かれています
そんなヒロインの死の訃報を聞いたのはマニラ滞在中の2009年でした。8月1日から2日にかけてグリーンヒルで、3日にはイントラムロスのマニラ大聖堂で行なわれた通夜には、炎天下あるいは雨の中を長蛇の列で並ぶ人、人、人であふれていました。

マニラ大聖堂のコーリーに会いに!

マニラ大聖堂
マニラ大聖堂

著者は、コーリーに一目会いたくて、ご遺体が安置されているマニラ大聖堂に向かいました。雨季の8月は、雨模様。当日も終始雨でした。そんな天候の中6~7時間、現夫となる彼とともに豪雨の中を並びました。傘をさしていましたが、下着まで濡れるほどの豪雨で身体もすっかり冷え切りましたが、人の波、そしてその熱気で人々は寒さすら忘れているように感じられました。

観光バスが次々と到着します。恐らく遠方から来た人たち、次から次へと列に加わっていくのが見られました。豪雨にも関わらず、人の波は途絶えることはなく、むしろ時間を追うごとに人数が増えていくようにすら感じられました。並んでいる最中にお菓子などを差し入れする人も見られました。

政治家としての実績はそれほど華々しいものではなかったように思われますが、時代が彼女を必要とし、そして彼女とともにフィリピンの歴史が新しい時代に移行したことを思うと、やはり歴史に名を残す政治家であると思いました。
 
ご冥福をお祈りするとともに、今度こそご夫婦そろって、天国があるのであれば、そこで生前叶わなかったであろう、のんびりと二人で過ごす時間を持てるようにと願っています。

関連ブログ

ニノイ・アキノデー8月21日-暗殺から30年、事件を振り返る-

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