推奨してよいか悩ましい、フィリピンでの自転車通勤

フィリピンの大学勤務中は、雨の日も猛暑の日も自転車で通勤しておりました。毎日往復10キロを通勤していました。たかが自転車通勤なのですが、フィリピンの場合では、そう簡単でもありませんでした。

通勤に使用したママチャリ
通勤に使用したママチャリ
田舎道を爆走

たかが10キロ、されど10キロの往復

当時生活していた夫の実家から勤務地までは最短で約5キロの道のりでした。道の左右が田んぼで、かろうじて舗装された2キロ〜3キロ程の長さのコンクリートの道を抜けると、大学がある町の堺に入り、そこから細い路地を車と突然飛び出してくるかもしれない人に気をつけながら徐行運転するという30分弱の道のりです。



片道5キロは決して近くはありませんが、それほど遠くはない距離。「かろうじて」舗装された道でしたが、道はひびだらけ、溝も多くて、ひどい状況でした。おかげで、幾度と無くパンクして、道端にある修理屋に駆け込むことが多かったように思います。

参照ブログ

パンクはいつでも嫌なものでしたが、特に辛いのは、すでに公共の交通機関の運行が終わった夜、帰宅中にパンクして、まだ開いている修理屋が限られている(殆どの場所がすでに終わっている)時でした。ひたすら、野犬とよっぱらいに気をつけつつ、自転車をとぼとぼと押して帰るというのは、一日の疲れがどっと出る思いがしたのをおぼえています。

フィリピンの遮断器のない踏切
通勤で使用していた道、先に線路がありますが、遮断器はありません。

照明のない夜道

大学勤務中は、職員室に一番乗りして、一番最後に帰宅する人でした。新米教師のため(他の教員がすでに自分たちにとって都合のよい時間をとっていたため)朝一の授業(7:30)と一番最後の授業(9:30)終了が組まれていることが多かったことが理由です。そして受け持つクラス(週27時間)と生徒数が半端なく多かった(1学期約400人)ことです。

ビコール地方イサログ山
通勤途中に見える、イサログ山
この予定のため、朝、平均的な出勤時間は6時〜6時半でした。その時間帯はまだ涼しく、自然の美しさを感じられる時間帯で、好んで早朝自転車をしていました。夜は夜で星と月が美しく、特に照明のない夜道では、月明かりを頼りに自転車を運転していましたが、月とはこれほど明るいものなのか!と今更ながらに実感しました。

立ち漕ぎダッシュ

月明かり、星空にロマンを感じることもあるのですが、人気のない田舎道、恐れていたのは、野犬。田んぼに囲まれた一本道を月明かりも、星明りもない夜に走行していた時、野犬5、6匹に追っかけられたことがあります。野犬というものの、実は田んぼ周辺に生活する「管理人」宅周辺の警護のために放たれていた犬です。

フィリピンの田舎では、小作人が土地を管理するがてら、その耕す土地の近くで生活しながら、警備の役割も果たしています。彼らの家屋は大変粗末なもので、それらに盗人が入ることはありませんが、農作物が盗まれることを防いでいます。

帰宅の際、自転車という動く物体が彼らを刺激したようでした。はじめは、遠くから犬の気配を感じましたが、吠えながらながら近づいてくる犬たちにどんどんと距離を詰められ、最後は、ひたすらココでタイヤがパンクしないことを願いつつ、立ち漕ぎダッシュでした。

通勤途中の踏切にはトロッコが走っている
通勤途中の踏切にはトロッコが走っている
同時にこの線路は、電車も走行しています。
参照ブログ

竹笠を着用

自転車走行時は、雨の日も晴れの日も竹笠を着用していました。見た目はオリンピックの熱中病対策で推奨されたものの、見た目のカッコ悪さから批判されまくった「かぶる傘」に匹敵する外見となります。

そんな竹笠ですが、自転車走行の際のお気に入りのアイテムでした。フィリピンの直射日光は厳しく、すぐに熱中病になるのではないかという位、頭が暑くなりますが、この笠は直射日光を防ぎ、長いつばは顔と首をしっかり覆ってくれるスグレモノ!。

竹笠はその機能性から農作業を行う人が今でも使っているもの。とは言うものの、著者の年齢の人間が日常的に竹笠をかぶっているワケはないので、目立ちそして影では変わっていると言われていたようです(このあたりは、放っておいてほしいです)。

雨の日も、洪水の日も自転車

フィリピンの雨季も自転車で通勤。その際は、オランダで入手した全身が隠れる雨合羽と例の竹笠という出で立ちでした。フィリピンではバイクを運転する中で傘をさすという人も居る中、この出で立ちが安全で、一番合理的なのですが、雨合羽はフィリピンの気候上、蒸します。サウナ状態になるということもしばし。

床上浸水間近のフィリピン
朝起きて、勝手口のドアを開けたらドアのすぐ外まで水がきていた

この格好をしながら、洪水のあと、膝の高さほどの水で自転車走行するということもありました。洪水の嫌なところは、通勤前に水で濡れて足が汚れる(感染症に気をつけねばなりません!)ということと、田んぼに住むという毒蛇が洪水の水の中に潜んでいる可能性があること。そのため、一切足をつかず、洪水の水を運転仕切るというスキルが求められました。そんな中で更に気をつけたのが、道を外さないこと。
フィリピンの洪水
洪水でこうなる!

洪水の水で、道の境目が無くなっていることがただあったので、とにかく可能な限り道の真ん中をまっすぐに走らねばなりませんでした。

洪水中の自転車運転
洪水で道の境目がなくなる
そして、流れがある場所も通過しなければならず、洪水での自転車運転、難易度高し!です。
ちなみにこの写真、運転しながらのカメラ撮影(!)



洪水だ~(1) フィリピンの地方の町が洪水となったら・・・
洪水だ~(2)フィリピンの地方の町が洪水となったら・・・

低所得者の乗り物?!・・・そして

日常使いの自転車は、低所得者層の乗り物でした。フィリピンでは、通勤にかかる交通費は支給されません。そのため、所得の低い人たちは、自転車で通勤していました。大学では用務員さんなどがよく自転車で通勤しているすがたを見ました。教員では、著者のみ自転車。若手の教員はジプニー(乗り合いバスのようなもの)やトライシクル、ベテラン教員は、バイクや車でした。

参照ブログ
外国人には難しいのか?庶民の足、King of the Road(道の王様)ジプニー(Jeepney)を利用したフィリピンの旅

自転車がまったく利用されていないかと言うとそうでもないのですが、一台5〜6万円(一月の給与以上の金額!!!)はするであろうかっこいいスポーツ用マウンテンバイクを所有している人も教員仲間で数人いました。しかし、彼らにとって自転車は日常的に利用する乗り物ではありませんでした。

しかし、私が頑固にも通勤し続け、自転車通勤する教員も出はじめました。私が退職してから、大学校内に自転車をとめるバイクスタンドができるようになりました。私が自転車の日常的な利用を広げたとは言いませんが(笑)、よい啓蒙にはなったのではないかと思います。今は同市に自転車道ができることを夢見ています。

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