世界で最も影響力のある100人:比大統領ドゥテルテが選ばれる??

世界で最も影響力のある100人の名前でも知られるこの「TIME100」。何名かの有識者による議論により、その年における100人が選ばれます。2017年の顔は、フィリピン第16代大統領ロドリゴ・ドゥテルテ・・・となるか。

オンライン投票が過去数週間、TIMEのウェブサイト上で行われていました。投票方法は簡単。選ばれた114人に対して、この人物が「もっとも影響ある人物としてふさわしいか」をYES、NOで選ぶというもの。

TIME、最も影響ある100人リストより
引用:http://time.com/4706623/2017-time-100-poll


GDPは285(10億ドル)、人口9,988万人(2014年)の国のもはや小国とはいえないものの、大国ではない国のリーダーがはえある「世界で最も影響力のある100人」の一人としてリストに名を連ね、2017年の最も影響力のある人物に選ばれるというのは同大統領のサポーターにとっては嬉しく、そして彼らに大いなる勘違いをもたらすのではないかと思えてなりません。

2017年TIME誌「世界で最も影響力のある100」のランキング発表
比大統領ロドリゴ・ドゥテルテ氏が5パーセントを獲得し、カナダ首相、教皇を引き離し2017年の顔となった。
引用:http://time.com/4707432/2017-time-100-poll-results




1999年に行われた単発の「20世紀の最も影響力のある100人」が大きな反響を受け、2004年から、その年の100人を選ぶ毎年の企画として行われています。「20世紀の最も影響力のある100人」では、アインシュタインが世紀の顔として選ばれています。物理学の発展に寄与した他、人々のものの見方に大きな影響を与えており、納得の受賞ですが、ロドリゴドゥテルテ大統領が彼らに名を連ねることに抵抗を覚える人も少なくないはずです。

20世紀の最も影響力のある100人
『People of the Century』
引用:http://content.time.com/time/specials/packages/0,28757,2020772,00.html




繰り返し100人のリストに挙がった人物から見る傾向

オプラ・ウィンフリーはアメリカ合衆国の俳優、テレビ番組の司会者兼プロデューサー、慈善家。司会を務める番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』はアメリカのトーク番組史上最高の番組であると評価され、多数の賞を受賞しています。彼女はこれまで8回ほどTIME100に8回その名が挙がっております。

「世界で最も有力な女性」と称されるオプラは、家族に恵まれなかったものの頭がよく、奨学金を得て高等教育を受け、キャリアを積んでいきました。

これまでタブーとされていた、自らの意見を取り入れる手法を取り入れ公共の場で社会がこれまで許容してこなかったテーマを議論することに成功しています。

バラク・オバマ(8回)、ヒラリークリントン(7回)、アンゲラ・メルケル(5回)、スティーブ・ジョブズ(5回)、胡錦濤、アウンサンスーチーをはじめアメリカの政治家が4回ほど掲載されています。

オプラ・ウィンフリーは、日本での知名度は低いのですがアメリカの番組を見る機会の多いフィリピンでもよく知られています。上記に多くの政治家の名前があります。政治家が選ばれる難しさは、偉業を成し遂げたかの如何を問わず立場そのものが既に影響力があることです。そして、少なくとも著者の視点として政治的決断としては誤ったことをした、多くの死傷者を出す紛争に突入した政治家の名前もあります。



過去に起こった論争

アドルフ・ヒトラーやムッソリーニが政治に於いて影響ある人物として名を連ねるべきかということで論争になった過去があります。その背景には以下のような疑問があります。
悪は恐らく力強く、魅惑的な考え方である。しかし悪は才能、創造性、勇気、慈善行為よりも影響力があるのだろうか?*

しかし、彼らが歴史に消えない大きな影響を残した事実は否定できません。そして、その教訓から人類は学び得るために彼らの名前とやったことを思い起こさないといけません。

比大統領ドゥテルテは2017年の顔としてふさわしいか?

ポピュリズムが台頭し、混迷の2017年を象徴する顔であるという意味ではふさわしいと思われます。昨日もトルコで、大統領の権限を拡大する国民投票が行われ、僅差で賛成票が反対票を上回り(賛成51パーセント、反対49パーセント)で独裁体制に一歩傾く結果となりました。憲法の改正では首相職の廃止、大統領による閣僚の任命、非常事態令の発令の権限、司法への影響力をもちます。

比大統領就任後現在までに「麻薬戦争」の名のもとで8,000人が殺害され、元司法長官デ・リマなど大統領の権力を脅かす人物は政治の舞台から姿を消してきました。大統領は「戒厳令」発令の可能性をちらつかせながら、今もなお麻薬戦争から手を引く気配もありません。

もし、TIMEの影響力と言われるものが社会が合意する「善」を意味する、つまり社会の多くの人がある影響を受ける、社会の問題を「根本的に解決する」と設定したら、結果は変っていたのかのかわかりません。なにせ、大統領サポーターは国民は麻薬中毒者がいなくなることで、安全性が向上したと胸を張って言います。

著者は曲がりなりにも大学教員でしたので、麻薬戦争と犯罪率の関係をデータを見ずに鵜呑みにすることはできません。何より政府が公表する中毒者のデータ自体が非常に疑わしいものです。そして、麻薬戦争で殺害される人物は下っ端ばかり。

こうした背景がある中、TIMEの顔として大統領の顔が掲載されることは望ましくありません。そして、これが大統領サポーターの恰好の宣伝材料にならないことを願ってやみません。

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参考リンク


Philippine President Rodrigo Duterte Wins TIME 100 Reader Poll
http://time.com/4740116/time-100-poll-2017-winner-rodrigo-duterte/

"Evil may be a powerful force, a seductive idea, but is it more powerful than genius, creativity, courage or generosity?"

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