大衆を巻き込んだフィリピンの“見世物”政治

2016年6月30日に大統領に就任したドゥテルテ大統領は、過激な麻薬撲滅対策を進めており、麻薬に絡んだ死者数が現在3,000名以上に上ります。問題はその超放棄的な措置、そして大統領自らが殺害の推進を示唆するという状況で、事は深刻です。

Philippine sky


それに対して、司法・人権委員会のレイラ・デリマ上院議員は、かつて大統領がダバオ市市長だった際、市内治安の向上を掲げ、過激な犯罪・麻薬対策を行っていたことを糾弾。そしてその時市長が推進していた“(非公式、つまり警察組織に属していない)治安向上”の部隊に加わっていたマトバト氏が実名と自らを公にさらし証言したことで、大統領がダバオ市長時代、超法規的殺人の実質的な司令官であり、また自らも実行者であることが、実証されようとしていました。

ところが、一転。大統領側に属する議員たちは、デリマ上院議員に対して、麻薬密売に関与、あるいは優遇措置を行っていたと証言者を連れて反撃しています。デリマ上院にかかる嫌疑についてはその真相は現時点では分かりませんが、証言者が何も失う恐れのない収監中の受刑者を召還し、その証言の一貫性は疑わしく、実際公聴会でも失笑を誘いました。それでも大統領派は、次から次へと証言をひねり出していきます。

公聴会がライブで連日流され、フィリピン国民にとっては政治という舞台での見世物です。ニュースで連日放送された麻薬がらみの殺人事件の遺体の映像は、フィリピン人国民にとってはもう何ら目新しいものではなく、新しい見世物の余興にすぎなくなっているというのは言いすぎでしょうか。

市民の悪意に満ちた、そして中身のない参入も目立ちます。見世物劇に花を添えたいのでしょうか。ライブの公聴会では、デリマ上院の電話番号などが公開されてしまうことで、デリマ上院には毎日2,000件近くの悪意を持ったテキストメッセージが送られ、また電話もかかってくるといいます。それらは上院への下卑た批判―非倫理的で醜い、モンスター、罪人・・・など誹謗中傷する内容―がほとんどだと証言しています。

(c) Inquirer 
重要なことは、上院議員への誹謗中傷も精神的にはかなりの負担ですが、麻薬の売買にかかわる嫌疑をかけられることで、同氏への安全が脅かされること。そして、これによってドゥテルテ氏の市長時代の超法規的殺人の容疑に関する嫌疑が晴れたわけではないこと+マトバトからの公開公聴会は続いています。

公聴会の進め方はかなり疑問でなおかつ深刻です。例えば、マトバト氏が明確に、ドゥテルテ市長(当時)が警察官に向かって命令した場におり、それを証言していますが、カエタノ議員は執拗に混乱させるような質問をし、まったく議論の体をなしていません。見る人から見れば、カエタノ議員が如何に大統領の無罪を証明しようと躍起になっているのが滑稽にも見えます。また、大統領側の議員も証言者を脅すように質問を投げつけます。

上から目線で恐縮ですが、連日の公聴会、議員の質問のレベルの低さと質問者の態度には辟易します。

大統領の掲げる、連邦制は魅力的、そして腐敗・汚職政治家の追放にはYESです。とりわけ、地方滞在経験がある立場からすると、連邦制はフィリピンの長期の発展が可能となる政策かと思います。首都圏マニラへの投資、そして過剰な人口とビジネスの集中などが、地方との格差のみならず慢性的な交通渋滞などを生み出しています。ますます人々はマニラへ集中し、悪循環です。連邦制は大統領の任期期間中に実現してほしいと思う政策です。
ただ、彼の行っている超法規的殺人、一転二転する外交そしてFではじまる海外要人への罵りや暴言などが著しくフィリピンのイメージを悪くしていることににはNOです。

大統領は意図的に大統領派とアキノの大統領派と分けて、国を二分しようとしていますが、アキノ派以外の人も多数、そして“アキノ派”といわれるような人たちにも大統領の推進しようとしている連邦制は魅力的であると思っていることを忘れるべきではないでしょう。

公聴会は単なる見世物と化し、見世物の一部となった証言者ややり玉に挙がった人物の命も脅かされるでしょう。それを国民はバナナキューでも片手に見ているだけなのでしょうか。

公聴会が無事にそして公平に行われることを願いつつ・・・



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