盲目的なドゥテルテ大統領サポーターに徒然と一言!

ここしばらくのフィリピンのニュースを読み、ニュースを視聴し、心中穏やかな気持ちでいられないというフィリピン人やフィリピン関係者は、実はかなりいるのではないだろうかと思います。

超法規的殺害、教皇、アメリカ大統領や国連事務総長への暴言など、このオバマ大統領いわく”カラフル”な人物(とても個性的な男)が、フィリピン国内のメディアはもちろん、海外のメディアをも賑わしています。といいますか、いろいろな意味で突っ込みを入れざる得ないというのが、現在のフィリピンの大統領。実際、先月オーストリアでアフガニスタンの平和活動家と対談した時も、ドゥテルテ大統領が話題にあがりました。

フィリピンが世界のニュースで話題になることが、ミスユニバース等のミスコン以外にあるというのはうれしいことですが、もっと別のニュースでフィリピンが話題になってほしいと思ってしまうのは私だけでしょうか。

就任3カ月目、いろいろとつっこまれながらも大統領への国民の支持はいまだに高く、否定的な発言でも公に言おうものなら、集中砲火を浴びそうな雰囲気すら感じます。実際、大統領がどれだけ素晴らしいのかをインターネットなどでサポーターが広報、シェアしています。ただ、その支持がかなり信じ難く盲目的なのです。

ドゥテルテ大統領サポーターの盲目さ


エバンジェリカルクリスチャンのニュースNET25のニュース、MANILA livewireというオンラインニュースでEUのリーダーが9.1兆ユーロの融資を決定したという記事があり、読みました。EUのリーダーってどの国の誰のことなのか、何が9.1ユーロの融資の根拠であるのか、そして、そのソースはどこなのかという情報はなく、「ドゥテルテ大統領のシンクタンク」と名乗る退役軍人が情報源です。



上記のようなニュースのほか、ドゥテルテ大統領が太陽系一の大統領に選ばれた!なんて、ドラゴンボールの天下一武道会じゃないんだから(汗)とこれはもう笑うしかないような情報、雑多で、ニュースバリューの乏しい情報までがネットのあちらこちらに散在しています。

サポーターがせっせとそうしたニュースを自分のFacebookに張って拡散しています。大統領が大好きなのは分かりましたが、もう少し説得力がある応援が効果的なのではと思ってしまいます。

それでも選挙期間中に出した公約を強硬にも守ろうとしている様子に、大統領を有言実行の男だ!と印象付けられ、さらに上記のようなニュースをネット上で読んで、大統領就任以前はサポーターでもなかった人たちも彼は本物だ!すごい!と信じ始めています。(オランダのフィリピンコミュニティでそれらのニュースに感化されている人たちがいます。)政府側の見解、あるいはサポーターの言葉をそのまま引用し、ドゥテルテ大統領になってから、国が安全になったといいます。

麻薬がらみで人が超法規的に殺されて「安全になった」という感覚は皮肉としかいいようがありません。フィリピンはお世辞にも安全な国であるとは言えません。銃器を用いる犯罪も多く、悲しいかな外国人もフィリピンは治安的に問題があるからと旅行を躊躇する人もいます。それらの犯罪に手を染める人たちは麻薬の常用者である可能性が極めて高いといえます。そういう文脈で、政権の行う麻薬対策は、市民を脅かす犯罪に影響を与える可能性があるかもしれません。

一体何が問題なのか?
問題は、現在進行形の超法規的殺人が表層に現れる大きな問題。そして、それが国民心理に与える影響だと思います。

警察と軍は、暴力を行使することを許されていますが、それはもちろん法にのっとってのことです。
処刑OK?ドゥテルテ政権の過激な麻薬対策」 でも書いたとおり、半ば法執行手続きを無視した麻薬対策により殺害された人数はドゥテルテ政権下2カ月で2,000人ほど、800件ほどが警察による手入れの最中、1,000件以上が実際には警察などの手によらない自警団員によるもので、中には容疑者を銃殺した後に「私は人間のくず」ですなどと首から下げて、死者を辱めたりもしています。
法を軽視することは、大変危険なことだと思います。さらに、それを戒める司法省の長官を麻薬王からリベートを受けているなどと公の場で糾弾します。

また人々は、だんだんと正規の法プロセスを経ずに殺されるその事実に対して鈍感になっていくのではないかと心配です。もはや、毎日ニュースで報道される麻薬がらみの死傷者は数でしかありません。毎日ネットでアップされる、フィリピン国内のニュース報道が、麻薬取り締まり作戦で亡くなった人、あるいは辱められた容疑者の遺体、遺族へのインタビューは視聴者にまたこの報道か、と思わせるにすぎなくなってしまいます。

先のようなネット上の情報(麻薬対策で国が安全になった)拡散に反応する人もいます。支持者がこれでもかと貼り付ける情報の真意を巡って、ネットで議論となることもあります。フィリピン人は表立って意見をぶつけあうことは通常しませんが、大統領の過激さが感染したのか、かなり突っ込んだ言いあいとなっています。これは前政権の時にはあまり見られなかったことです。(少なくとも私や、わたしの旦那のFacebookの友人の間では)公に議論することは悪いことではないのですが、大統領の過激な政策が国民を二分していると感じます。

選挙期間中から、私はドゥテルテ大統領は大統領になってほしくないと言ってはばからなかったのですが、今となっては言うに空しいかぎりです。ただその思いは今も変わっていません。大統領の政策のつけは、国民に跳ね返ってきます。残念ながら、大統領を支持していない人たちにも。

盲目的な支持者に一言。暴力が暴力によって解決した事例を示してほしい。そして、銀河系一の大統領という科学的、比較可能な尺度を示してほしい(笑)。

評価を下すには早すぎる3カ月ながらも、すでにこの先が見えている気がしてなりません。


参照:Euro leaders promise 9.1 trillion euro to the Philippines
(https://www.youtube.com/watch?v=Nr1sZB1efCQ)

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