第二次世界大戦の激戦地、フィリピン、コレヒドール島(Corregidor)ー日比の歴史を訪ねる観光のススメ

コレヒドール島とは、マニラ湾の入口に浮かぶオタマジャクシのような形をした小島。マニラ湾の入江に位置していることから、スペイン殖民地時代から、戦略上重要な島でした。マニラ湾西の約50キロに位置し、9平方キロの広さで、島はバターン半島の先端に位置しますが、マニラ南部のカヴィテ州に入ります。
コレヒドール島榴弾砲
コレヒドール島榴弾砲
コレヒドール島の場所はどこか
コレヒドール島の場所
小さい島ですが、観光名所として開発されており、多くの国内外の観光客が訪れています。
カビテ州の管轄の島ですが、高速船乗り場はマニラにあります。

ここは、第二次世界大戦の激戦地の一つ。そのため過去の戦争を知るための歴史・観光ツアーが盛んに行われ、国内外の旅行者も多く訪れる場所です。著者も機会があり、これまで3回ほど同島を訪れています。戦中の歴史が凝縮され、小さな島ながらも見どころ満載です!すでに、イントラムロス(城塞都市)は訪れたことがある!マニラの他の観光地はどこか?という時にオススメしたい場所です。

ドリュー・アレリアノ(Drew Arellano)がホストを
務めるフィリピンの人気旅行番組、Biyahe ni Drewでも紹介。

コレヒドール島ってどんな所?−島の略史

島は、マニラ湾の入口に位置していたため、スペイン統治時代から要所として、検問所がおかれ、マニラ湾に入る船の検査が行われていました。のち、米西戦争と米比戦争を経て、フィリピンがアメリカの統治下に入った後の1902年、アメリカ政府は、フォート・ミルズ基地を置いて戦略上の要衝としました。アメリカ占領中には、電鉄、空港、病院、映画館、銀行、プール、野球場、レストラン、教会など島内に様々なインフラが整備されました。


1941年12月、日本軍がフィリピンに攻め入った時、アメリカ極東陸軍のダグラス・マッカーサー将軍が同島に司令部を置き戦闘を指揮しました。この時に、島内のインフラの多くが破壊されました。のち、1942年3月、大統領の指令でマッカーサー将軍は、マニュエル・ケソンフィリピン共和政府大統領らと共にオーストラリアへと逃れました。同年4月にバターン半島の米比軍は降伏しましたが、コレヒドール島の兵士たちは5月6日に降伏するまで戦闘を継続しました。この狭い島内で両軍合わせて一万人以上が亡くなったと言われており、激戦地でした。
コレヒドール島
コレヒドール島、記念碑

1944年10月にアメリカ軍はレイテ島に上陸、約2か月で、日本軍は壊滅的な状況になり、戦況がアメリカの有利に転じました。1945年2月に空挺降下作戦により、同島を再占領しました。この時にも多くの爆弾が投下されて、島のインフラが更に破壊され、木も残らぬほどであったと言われます。

現在、島内の第二次大戦中の武器や要塞設備であった、巨大なマリンタ・トンネルや廃墟となった兵舎などを含めた観光スポットになっています。

コレヒドール島観光ツアーの見どころ

島内の観光場所は、マリンタトンネル、アメリカ軍弾薬庫、ボトムサイド、スペイン灯台、高射砲等で、ツアーにはツアーガイドが含まれていることが多く、トラムに乗車し、ツアーガイドの語りを聞きながら回るのが、一般的です。
コレヒドール島ツアーで使用される車両
コレヒドール島ツアーで使用される車両

マリンタトンネル(Malinta Tunnel)

印象深いのが、マリンタトンネル。文字通りトンネルなのですが、複合施設として建設され、東西に伸びるメイントンネルの長さは253 m、7.3 m、高さ5.5 m。メインのトンネルから分岐し、北側に13本の横トンネルと南側に11本の横トンネルがあり、小さな町のサイズ。当初は防爆保管庫とバンカーとして使用されていましたが、後に1,000床の病院としても利用されました。トンネルの中には、当時使用されていたオフィス、タイプライター、アメリカ軍人の像なども置かれ、当時の様子を再現しています。

スペイン灯台(Lighthouse)

1853年に作られた高さ約18メートルの灯台は、同国で二番目に作られたといわれています。交易の中心地であるマニラ港に向かう途中の船をマニラ湾の入口まで案内する役割を果たしました。第二次大戦中にダメージを受けましたが、戦後に修繕されました。

コレヒドール島「Corregidor Island Lighthouse」を背景に
コレヒドール島の灯台を背景に(Corregidor Island Lighthouse)



砲台(Battery)

12インチの沿岸防衛用迫撃砲は、1890年代から20世紀初頭にアメリカの港湾を海上攻撃から守るために設置された武器で、マニラ湾を脅かす軍艦から領土を守るためコレヒドール島にも1908年から1914年の間に建設、設置されました。第二次世界大戦中に損壊してしまいました。現代、観光客が目にすることができるのは、戦後観光用に修繕された砲台です。

コレヒドール島、高射砲
コレヒドール島、高射砲



兵舎(Middleside Barrack)

また、同島のツアーを紹介するパンフレットで用いられる兵舎(Middleside Barrack)も観光客の目を惹きます。1915年にアメリカ軍により建設された兵舎は3階建てで、窓はカピス貝などがあしらわれ、換気を良くする工夫が施された南国風の建物でした。1942年12月の日本軍の爆撃で、現在はその構造のみ残されています。
コレヒドール島Middleside Barrack
1942年12月29日に日本軍の攻撃により、爆破された「Middleside Barrack」

太平洋戦争記念館(Pacific War Memorial)

1968年にアメリカ政府によって建てられた戦争記念館には、弾薬、写真や当時の貨幣・紙幣等が展示されています。印象的なのは、怪我をしたフィリピン人兵士がアメリカ兵士のサポートを受け歩いている様子の銅像で、記念館の入口に設置されています。
Pacific War Memorial
太平洋戦争記念館(Pacific War Memorial)

慰霊碑・日本平和庭園

フィリピン兵・アメリカ兵を慰霊する記念碑も多いのですが、日本兵の慰霊碑も島内に多数存在する他、日本平和庭園には観音像が建立され、この地で亡くなった人々の霊を鎮めています。




eternal flame of freedom
永遠の自由の火(eternal flame of freedom)モニュメント

第二次世界大戦の歴史だけではないコレヒドール島

ジャビーダの虐殺(Jabidah massacre)の記念碑もあります。ジャビーダの虐殺とは、故マルコス時代に起こった、フィリピン軍によるイスラム教徒によって構成された部隊「ジャビーダ」を虐殺した事件。

故マルコスがマレーシアとの係争地であるボルネオ島サバ州の支配権を取り戻すための計画の一つとして、サバを不安定化させることを目論んでいました。そのために、イスラム教徒をリクルートして組織された特殊軍隊「ジャビーダ」でしたが、結局計画は執行されず、その計画の存在を世間に知られないように、コレヒドール島で部隊の参加メンバーが殺されました。

 (サバの所有権をめぐる論争は、19世紀まで統治したスルタン国にさかのぼります。マレーシアは依然としてそのスルタンの子孫に租借料を支払っています。)
ジャビーダの虐殺(Jabidah massacre)の記念碑
ジャビーダ虐殺の記念碑が除幕された時にご招待をいただき、式典に参加しました。

ツアーガイドのナレーションに注目!

この場所、色々な観光ポイントがあるのですが、興味深いのは、観光客によって変わるツアーガイドのナレーションです。これまで、いろんな国籍の外国人と共に、あるいは日本人として、そして、大多数のフィリピン人とツアーに参加したことがありますが、衝撃的なほどに、ツアー参加グループ毎にナレーションがことなります。
コレヒドール島ツアーのツアーガイドによる史跡の説明
コレヒドール島ツアーのツアーガイドによる史跡の説明
日本人とその他の観光客の時には、ツアーガイドは淡々と史実を語ります。「右手に見えますのは・・・・」「ここで日本兵の多くが、亡くなりました・・・」等々。一方で、フィリピン人を対象にしたツアーの場合は、特に日本兵がどのように亡くなったのか、を効果音までつけて、表現します。

歴史が民族や国民の団結を高めるために利用されるというのはよくあることですが、逆に紛争の火種になり、それを加熱させることもただあるため、ツアーガイドも色んな意味で注意深く、ナレーションをしてほしいと思った次第です。

どうやってツアーに参加するの?

コレヒドール島には宿泊施設もありますが、多くの観光客は、日帰りツアーに参加します。ツアーは、朝7時ごろ出発の、夕方4時ごろ終了、料金には、パッケージによりますが、標準的なものでは、マニラ湾とコレヒドール島、往復のフェリー代金、ランチ代金、トラム・ツアー代金等が込まれています。島までは片道約一時間半ほどかかります。

コレヒドール島に向かうボート
コレヒドール島に向かうボート

コレヒドールのトラムツアーに使用されている車両
コレヒドールのトラムツアーに使用されている車両
お値段は約3,000ペソ(約6,000)前後/1人で、週末は値段が少々くなります。Sun Cruises Philippinesがコレヒドール・ツアーで知られていますが、マニラにある邦人旅行会社もツアーを取り扱っております。天気が悪い日は、フェリーが欠航という時もあるので、注意が必要です。

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