ベビーカー 公共交通機関利用ーオランダの場合

日本のニュースで気になっているのが、乳母車で乗車した母子が他の乗客に罵声を浴びせられたり、ベビーカーをけられたりするというもの。男性の乗客がベビーカーの女性に「邪魔なんだよ!畳めやこのブタ!」とベビーカーを蹴った(!)というニュースをみて、驚き、怒り、悲しくなりました。数年前にもベビーカー論争なるものがあり、ベビーカーは公共交通機関では畳まなくてよいということは改めて確認されたようですが、それでもこういうニュースがある理由は日本ならでは事情があるのかなぁと思います。

ベビーカー 公共交通機関利用ーオランダの場合
ベビーカー 公共交通機関利用ーオランダの場合


ベビーカーでの公共交通手段の利用についての声

赤ちゃんがいて大変なのはわかるけど、「ベビーカーでひかれたことがあるから、ベビーカーでなるべく公共交通機関使ってほしくない」、「道の幅をとって邪魔」と、友人から聞いたり、あるいは、ネットの書き込みで見たりしました。「(子どもを産んだ自己責任なのだから)外出を控えればいいだけ」「子どもが大きくなるまで、公共交通機関の利用は避けたらいい」という声や、一方で、「助けてあげるべき」「仕方がないこと」など、邪魔というものから積極的助けたらいいといったもの、容認する声まで色々です。

ベビーカーを簡単に畳めない理由

ベビーカーの重さで数キロ、生後何か月かにもよりますが、子どもがたったの3キロ~5キロというだけではなく、子どもに付随する持ち物(ミルク、おしめ、タオル、着替え等々・・・)でプラス数キロ、それに買いものなどをしたら、さらに重たくなり、物理的に、すべてを手持ちにするのは不可能でしょう。
ベビーカーを畳めない理由として、お母さんが乗車の際に子どもを抱え、畳んだベビーカーや荷物を持って乗車するのは物理的にかなり難しいということと、またできたとしても、それだけ荷物を持った状態で子どもを持つと、手がふさがっている事や、荷物の重さでバランスを崩しやすく、子どもにとってかなり危ないと思います。万が一、子どもがお母さんの手から落ちたら、命にかかわる・・・ということは、声を大にして言いたいです。
特に産後、体が弱っている時に、ベビーカーを畳んで、荷物を手にして、子どもを抱くというのは、かなり無理な話です。

関連ブログ「出産=交通事故レベルの体のダメージ?出産後の体の変化は思った以上だった

そもそもベビーカーが必要な理由

ベビーカーは赤ちゃんにとっての足です。車いすが必要な人に、「バスの中では車いすは邪魔だから、畳んで乗ってください、付き添いの人に抱えてもらって立つなり、座るなりしてください」と言ったらどうでしょうか。
母親は、赤ちゃんと一緒に行くべき場所があるからベビーカーを利用します。「バスは狭くてベビーカーは乗せられないから、家でおとなしく留守番をしていて」と赤ちゃんに頼めない(笑)じゃあ、そもそも出かけなければいいという人もいるのでしょうが、母親の社会生活は、妊娠・出産を終えても続くのだから、出かけるなとか、出かけるのを控えろというのは、通常の社会生活を送らないでと言っているのに等しいと思います。
場合によって抱っこ紐で対応可能ですが、ベビーカーのメリットの一つは母親の育児・家事への負担の緩和であるため、体への負担がある抱っこ紐はベビーカーと併用して使用するのがよいと経験からも思われます。また、少々込み合った場所では、抱っこ紐の赤ちゃんは押されてしまうこと、そしてお母さんの転倒の危険もあります。ベビーカーで転倒を全くしないとはいえませんが、ベビーカーの転倒の多くはハンドルに荷物をかけて転倒してしまうということであることから、比較的予防可能な事故だと思われます。

オランダの場合

ベビーカーで乗車した際の周りの反応

乗車、降車の際に譲ってくださる方もいます。譲らずとも嫌な顔はしませんし、文句を言われたことはほぼありません。ほぼない、というのは一度のみありましたが、大したことはありません。お尻の大きなおばさん(私の押しているベビーカーの幅と同じくらいの大きさ・・・)が、入口付近でおしゃべりして、入り口をふさいでいたので「すいません通してください」と言ったら、舌打ちして「信じられない」と逆切れされたのみです。話を中断されたことにいら立っている様子でしたが、それで口論になったり、ベビーカーを蹴られたり、罵倒されるたというわけではありません(念のため)。

つい最近のことですが、予想外に超満員のトラムに乗る羽目になってしまったことがありましたが、トラム乗車時は、職員に先導されて、優先的に乗車させていただきました。
それに対して、声を上げて批判する人はいませんでした。もちろん、周りはイラっとしたと思いますし、こちらとしても申し訳ないと思ったのですが、超満員になることはほとんどない時間帯であり、トラム路線でしたので、本当に予想外の混雑で驚きましたが、それ以上にこうした職員の対応や、周りの理解にとても驚き、感謝の気持ちでした。

比較的おおらかな反応の理由

日本とオランダの人口は比べようがありませんが、公共交通機関が超満員になることも少ないということ、自転車道が整っており、自転車で通勤通学する人がかなりいるということ、そもそも、勤務地と職場の距離が近い人が多いなどの前提条件がありますが、以下のような理由も考えられると思います。

平均的ベビーカー重くて大きい

ヨーロッパのベビーカーは、日本のものよりも、レンガやでこぼこ道を走れるように、車輪も大き目で、全体的に大きく幅を取り、重量もかなりあり、10キロ~12キロぐらいです。AB併用のタイプを使用している世帯が多い印象です。日本では、A型※は5~6kg、B型は3~4kgぐらいでしょうか(AB型はもう少し重いはずですが・・・)。日本のものと比較するとかなり重たくごっついでも・・・これがスタンダードなので、皆、仕方がないと受け入れていると思われます。しかし、そもそも、ベビーカーを畳まないといけないという発想はありません。

電動シニアカートという乗り物はベビーカーよりもさらに大きく、また至る所を走っているため、こちらの大きいベビーカーのサイズがあまり気にならないのでは・・・なんておもっったりもします。

※A型:背もたれを150度以上倒せるようになっているため、フラットな状態のベビーカーに赤ちゃんを寝かせることが可能です。生後1ヶ月という早い時期から利用が可能です。

※B型:赤ちゃんが座った状態で利用することができます。腰がすわっている生後7か月頃から利用が可能です。

車内のベビーカー/車いす専用停車場所がある

電車、トラム、バスには、ベビーカー、車いす用のスペースがあります。特にトラムの場合は、ひと編成につき、数か所そうした場所があるので、一か所が車いすやベビーカー利用者にすでに使用されていても、車両を移動して、そうした場所を利用することができます。バスでは一か所そういう場所があり、大きな乳母車なら2台ほど停車できます。
もちろん、すべての人がこうした専用スペースを使用しないといけない人たちへの理解があるわけではないので、こちらが使用したいと思っても、専用スペースでだべっている若者などはいます。
しかし、専用のスペースには誰も見逃さないであろう、かなり大きなステッカーが貼ってあり(測ったことはありませんが、30㎝以上)、この存在感の故、ベビーカーや車いすの人が来ると、どかなくちゃ・・・と思わせられます。

大きなベビーカーが畳まず停車できるバス・トラム・電車はかなり大きいのか?

ヨーロッパのバスは日本のバスと比較してかなり大きいのではないかと思われましたが、バスの種類によってはそれほどの違いはないようです。一例として、名古屋市交通局によると、大型バス(いすゞ自動車製)の車両全長は、10,430㎜ (10.43m)、車両全幅は2,480㎜(2.48m)、車両全高3,060㎜ (3.06m)、中型バス(いすゞ自動車製)車両全長は8,990㎜(8.99m)、車両全幅2,300㎜ (2.30m)車両全高3,050㎜(3.05m)ほどとのこと。オランダ、ハーグのHTMのバスの場合は、車両全長は40 ft (12.19 m)、車両全幅は102 in (2.59 m)だそうで、長さはオランダのバスの方が長いのですが、幅に大きな差はありません。トラムの場合は、車両の種類によって異なるのですが、車両の幅は、2.35m~2.65mです。これらのことから、オランダのバスやトラムが特別にものすごく大きいというわけではなさそうです。また、多少大きくても、現地の人たちの体の大きさを考えると、妥当という気もします。

しかし。。。

全てがバリアフリーなわけではない

専用のスペースがあり、配慮があると思われる一方で、すべてがバリアフリーなわけではありません。バスは問題ありませんが、古い一部のトラムの車両は、入口が狭く階段があり、車いす使用者が誰かの助けなく利用するのは難しいでしょう。ベビーカーの場合も、二人がかりでベビーカーを持ち上げて乗車しないといけません。現在、ハーグ市内を走るトラムのほとんどがバリアフリーな車両ですが、こうした車両がいまだに存在しています。※2022年末、2023年にはほとんどの車両がバリアフリーの車両に変わるそうです。

日本でのベビーカーに対する否定的気持ちはわかる、しかし、そもそも・・・

狭い車内、専用スペースがなきに等しい

日本のバスや電車狭いうえ、乳母車や車いす用のスペースが狭いため、ベビーカーを停車させている場所が人の同線となってしまうこともあると思います。スペースはありますが、圧倒的に狭い、そして折りたためない椅子が少々邪魔に感じられます。これは、私がヨーロッパの交通機関を使用しているからということもありますが、それでも、車いすやベビーカー使用者が公共交通機関を通常利用するようなデザインではないと感じます。

母親が一人赤ちゃんを連れて公共交通機関を利用しないといけないシーンが多い

母親が赤ちゃんに目を配り、荷物を持って公共交通機関を利用するというのは、負荷が高いと思われます。そんな中、注意していても、うっかり、ひとにぶつかってしまったり、ひとの足を轢いてしまったりということも想像できます。日本のお母さん、マルチタスク過ぎる気がするのは私だけでしょうか。一人で出かけるので、いろいろと大変だと想像します。

公共交通機関が混みすぎ

さらにそもそもを言えば、公共交通機関が混みすぎている、もちろん、日本とヨーロッパ、オランダの人口比と比べる余地もありませんが、出勤時間が重なっていること、また勤務地と居住地に距離があるということも理由かと思います。オランダでは、遠方から通勤している人もいますが、居住地は大体職場から遠くない場所にあります。自転車やバイクでの通勤が可能です。

思いやりは求められない、だから・・・

バス、電車のデザインを変える

子育てを経験したことがない人に、いくらベビーカーでの移動が大変と言っても響かないとおもうし、思いやりの心は強要されるものではないので、物理的にそうしたスペースを作ってしまうのがいいのではないかと思います。もちろん、バスの車内、車いす、ベビーカーのスペースがありますが、固定された椅子が邪魔に思われます。折り畳みの椅子するなどしてもいいのではないかと思います。

育児にまつわる様々な問題を機に・・・男性の参加を促せる社会の仕組み作りを加速する

母親がそういう状況に陥らないことも大切なのではないかと思います。ベビーカーについて文句を言われた人の大半は女性だと思います。また、思うに、文句を言う人の大半が男性で、女性が一人でいる場合に言うのではないだろうかと勘繰ってしまいます。つまり、ベビーカーを押す男がマッチョな男性だったら(笑)・・・これは極端な話だけど、男性もより積極的に育児に参加する社会であれば、もう少し、ベビーカー問題も含めての育児への理解が広がるのではないかと思います。じゃあ、どうやって進めたらいいの?という話は、簡単ではなく、これから時間をかけて変えていく、変わっていくのだと思います。

冒頭のニュースで、日本に子どもを連れて帰るの憂鬱だなぁと思いつつ、国土交通省の調べでは、ベビーカーの子連れに対する理解を示している人が大半であるようで、少々ホッとしました。

ベビーカーを蹴った人、ベビーカーを畳めばいいという人に対しては、交通事故など遭って回復中、あるいは重いインフルエンザ等の直後に、10キロ以上の荷物を片手に赤ちゃんを抱っこして、公共交通機関の乗り降りをやってみてください・・と申したい。(男性ならば、筋力の違いを考えて、重さ20キロぐらいでもいいと思いますが😓)考えが変わるかわかりませんが、これを外出の度に行っている、産後や育児中の女性の気持ちが少しはわかる・・・かもしれません。

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