フィリピンの大学で教えるー教員の労働環境

著者はフィリピンの大学教員時代、最大27時間教壇に立っていました。受け持った生徒数は400人弱。若葉マークの教員、かつ外国人教員としてはなんとも労働時間が長く、プレッシャーでした。そして、学期ごとで契約書にサイン。多忙でありつつも、職の保証はありません。一体どうしてこんな勤務形態となったのか、フィリピンの地方教員の労働環境について説明したいと思います。

フィリピンでの授業の様子
大学の授業の様子
著者の勤めた大学にはユニフォームがあります。水曜日だけ私服の日。

生徒の事情


教員の長時間労働の理由はいくつかありますが、まず生徒の事情。大学の学費支払いは、教科ごとかつ学期ごとです。大体の学校で、一学期中に教科が終了する仕組みとなっており、通年の科目はほとんどありません。

一年授業料を払い続けられる保証がないフィリピン学生とその父兄・親族。半期で終えられるシステムを構築しております。

学校の事情

上記のような学生の懐事情の故、大学としても収入が安定しません。学生は、学費が支払えない、あるいは個人の事情で学校を休学しなければならないという場合は、それも可能です。

それに合わせるように先生も学期ごとに契約書をサインしています。特に12年生の教育のスタートし2016年6月から2年間は大学生が入らぬ故、先生としてはますます厳しい状況です。特に修士号を持っていない教員は、契約の更新が難しくなることが見込まれ(2015年時点の労使の話し合いの場で発表があった)、次の職を探す教員もちらほら。

もちろん、学期ごとに契約書にサインしないといけないのは、契約教員です。契約からテニュアー(大学での終身雇用)となるには、著者が勤めていた大学では最低修士号を持っており、3年間の評価がよかった教員のみとなります。

クラススケジュール

そうした事情から導き出されたのが、一科目、一週間に3時間授業です。優秀な生徒を集めたクラスもあります。その場合は週6時間。1時間半×4回。著者も一度受け持ったことがあります。

ちなみにフィリピンでは幼少期から学校でよい成績をとることを推奨する様々な仕組みがあります。表彰されるというのが最たるものですが、成績優秀者とその他とクラスもしっかり分けられます。これは私立校の話ではなくて、公立校、しかも小学校からおこっています。

大学の時間割と教員の労働配分

教員の授業時間も時間割も月~土曜日。そして朝から夕方までくまなく分散されます。大学は昼夜の隔てなく、一コマ目7時半に始まります。9時終わりです。

大学終身雇用が決まっている教員は、授業時間をあらかじめ学部長と交渉して決められます。そのためおのずと、契約教員の授業時間は早朝と夕方、あるいは夜となります。ご多分にもれず、著者の授業時間は朝一の授業と一番遅い夜授業が組み合わさる日が続いたこともありました。

ひとクラス40~45人。特に一般教養の社会学と日本語はクラス定員ぴったりかそれ以上である場合がほとんどです。

新人教員は、教える教科は3つまで、労働時間については18時間がフルタイムとしてもたないといけない時間ですが、結局は各学部の事情次第。事情というのは、教員数と学生の必須科目との兼ね合い。必須科目が多い、著者の学部、特に著者が教える社会学は、全ての学部の学生がとらねばならない科目。それ故に生徒数は多い上に、時間数も多くなります。

上記の通り、ひとクラス40~45人、そして5~7クラス分ほど受け持ちます。そこに定期的なクイズ、試験などを入れていくと土日を返上しての試験添削、そしてクラスの準備となります。

給与

給与は月4万円周辺で、そこからさらに税金がひかれます。手取りは3万円ほどになります。人によっては、低い場合も高い場合もあります。教員としての労働年数、学歴、受け持ち授業時間から、上下します。
数万円など日本だったら、数日で稼げてしまう額。それでも、フィリピンでの教員職というのは安定職で、地方にしてはまずまずの額となります。

どんな人たちと働くのか?

もし、大学をトップの成績で卒業したら、うちで教えない?とお声がかかるというのも1つのパターン。そうした、ローカルエリートと、共に働きます。

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