日本人が、国外でコミュニティを作らない理由―海外、日本人の微妙な距離感

「日本人って、海外でコミュニティ作らないの?」フィリピン人の夫やコミュニティの友人に、度々質問されます。一方で、海外で生活する日本人の知り合い、友人からは「日本人のコミュニティって何かと面倒くさい」とか、「(海外の日本人とは)なんとなく、距離を置きたい」なんてコメントが聞かれます。実際、異国の特に「こんなところで・・・」というような場所で日本人に遭遇しても、日本人らしいからと声をかける人はどれぐらいいるでしょうか。

海外、日本人の微妙な距離感

これまで、フィリピン、シンガポール、コスタリカ、オランダと生活してきて、緩やかなものを含めコミュニティがあることは知ってます。また、コミュニティが健全(メンバーがコミュニティの一員となることに意義を感じる等ポジティブ)であるケースも見てきましたが、日本人同士集まらない・・・ことはただあります。実際のところ、そもそも集まる必要がない!という声でも。なぜ、集まらない、コミュニティを作らないのか?そして、なぜ他の日本人と距離を取りたがるのか・・・ということについて、考えてみました。

1.「海外に行ってまでなぜ?」:必要を感じない

必要を感じない!と一言で説明が足りてしまうように思いますが、もうちょっと説明が必要です。そもそも、なぜ同国人同士、海外でコミュニティや緩やかな人の集まりができるかということですが、異国の情報を収集したり、定期的に会う人を作ることで孤独を解消したり等ある程度の役割があるからと言えます。
しかし、現在、情報の収集はインターネットで、友人作りは、アクティブな人であれば、滞在地で友人を得ることができるためです。つまり、個人や世帯で必要は完結するので、わざわざ日本人を探す必要はないと感じます。

2.「日本人同士群れたくない!」:滞在先の文化(言語、風習等)を学ぶ機会が限られてしまう!

日本人同士集まると、もちろん、使用言語は、日本語。日本人が2人、3人集まれば、日本的な文化が形成されます。すると、滞在国の文化を積極的に学ぶ機会、滞在国の友人を作る機会が減少、あるいは失われてしまいます。なぜなら、日本人同士が集まることで、ある程度のニーズ(誰かと会いたい、話したい)が満たされてしまうからです。
また、悪いケースでは、滞在国に馴染めていない同国籍の人が集まると、滞在国の悪口大会(笑)になってしまうことも・・・。息抜きは必要ですが、頻度が高くなると、精神衛生上よくないと思われます。日本人の友人を作ることで、まったく滞在国の文化が学べないというわけではありませんが、ある程度のバランスが必要です。

3.「日本に居るみたいで・・・」:日本人同士気を遣って疲れる

海外に居住する理由はそれぞれですが、日本の封鎖的な雰囲気を嫌って・・・という人もいます。そんな中、日本的な人間関係を海外でも維持したくないという人もいるようです。日本的な上下関係、配慮、相手の気持ちをおもんばかること、非言語的な行動から相手の意向を考えること、忖度など・・・日本では日常的に行われているものの、それを海外でまでやりたいとは思わないと感じます。

4.まぁ、会えばそれなりに話すけど:機会がそもそもない

海外での日本人との出会い、避けてはないけど、そもそも機会がないという場合があります。他国からの外国人は、宗教を中心とした緩やかなコミュニティを形成する傾向がある一方、日本人にはそのような場はありません。宗教に属していると、寺院や教会、モスクなどに定期的に通うため、お互い頻繁に顔を合わせます。また、民族毎宗教の場合は、より顕著に特定の国の人が集まります。つまり、日本人同士で何か共通のもの―企業の駐在員世帯、趣味、県人会、大学同窓会・・・などが無ければ、なかなか緩やかな集まりがあるとは言えません。特に個人で、機会を求めて海外に来た人はなおさらです。

5・面倒くさい人と知り合いたくない:「不思議ちゃん」「厚かましい人」「常識が欠如している人」と関わると厄介かも・・・って思う

海外のよさは、日本的なものから解き放たれて、オープンになること。しかし、そのオープンさも度が過ぎると、ちょっと「不思議ちゃん」、辛辣な言い方をすると、「厚かましい」あるいは「常識が欠如」している人と思われることもあります。これは、あくまで受け止める側の感覚にもよると思うことは改めて断っておきますが、外国人同士でも、礼儀はあり、ことの良し悪しの判断は、より明確です。

在外の日本人と距離を置きたい日本人―他国との比較

多様な在外日本人
他の国と比較してビザが取りやすい日本人。なので、渡航費を工面できれば、言い方は乱暴で恐縮ですが、”どんな人”も海外に行けます。そんな理由から、海外で片言の英語も話せず、だまされて困っている日本人(フィリピン)に何度か出会いました。
バックパッカー的に長期滞在を楽しむ日本人、仕事や結婚などの理由で海外移住した日本人、日本人であるがゆえにビザが取得しやすかったことが理由で特定国に来た日本人など色々な人がいます。在外の日本人すべてが、付き合いづらい人というわけではありませんが、いろんな意味でばらつきがあると思います。なので、日本人だから・・・という理由だけで、グループを作るとか、そういうことはあまりないようです。

フィリピン人のコミュニティと比較して
私自身は日本人ですが、夫がフィリピン人であること、そして内面がフィリピン人化されたのか、フィリピン人との方が打ち解けやすく・・在外のフィリピン人コミュニティに属しています(夫と一緒に生活していなかったジョージアでもフィリピン人のコミュニティに属していました)。
フィリピン人コミュニティをみると、ある一定の傾向があります。この傾向を特徴づけるのが、滞在の目的が明確であること。何をやったらだめなのか、線引きがきちんとあります。一般的なフィリピン的常識から逸脱しているフィリピン人にほぼ会ったことはありません。宗教(ローマンカトリック)を母体にしたコミュニティであること、また国籍上ビザが取得しづらいことから、渡航できる人が淘汰されることも理由にあげられると思います。そんな理由もあり、海外でフィリピン人らしい人を見つけると「kabayan ka ba?(同郷人ですか)」と思わず聞いてしまいます。緩いコミュニティの母体があるため、個人としてではなく、グループとして、だれか困っている人がいても、手を差し伸べやすいという利点もあります。ちなみに、フィリピン人から、自己責任だという発言は聞いたことはなく、困ったらお互い様という暗黙の了解があります。

私自身の経験

私も自身も在外で日本人コミュニティに属さぬものの一人です。在外で日本人を避けているというわけではありませんが、現在のオランダの生活環境で日本人と接することはほぼありません。また、上記の通り、私の母体となるコミュニティはフィリピン人コミュニティで、必要が満たされているということも事情の一つです。

コミュニティを見渡しても、コミュニティの中に同郷人(同じ地方出身者)同士の集まり、子どもの有無、年齢、興味と関心から、サブコミュニティがあります。夫の同郷人、またNGO的活動に関心がある人とお付き合いが多い傾向があります。夫の地方に少し生活していたことがあったため、当地の事情を知る立場としては、コミュニティに同化することは、(言語をのぞいて)それほど難しくはありませんでした。

コミュニティによりますが、コミュニティのよさは、物心満たされることです。何かあったらすぐに頼る・・・というわけではありませんが、常に「誰かがいる・・・」というのは安心感を与えてくれます。また、何かアクションを起こしたい!と思った時には、一から人間関係を構築し、一からグループを作る必要がないことは、大変ありがたいことです。実際、こちらでボランティアベースの団体を作りましたが、メンバーはフィリピン人コミュニティに属する人、またそのサブコミュニティにいる人たちでした。そして、コミュニティと在外フィリピン大使館は、つながりがあるため、事務的な事も聞きやすいのがありがたいことです。

だから、絶対にコミュニティはあった方がいい!とは言いませんが、健全な緩いつながりが母国から遠くに生活する同郷人を支えている!と言えるのではないかと思います。なので、気心の知れた同郷人と、健全なコミュニティ、友人関係を持つことができたらそれにこしたことはないと感じます。

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