新しい恋か浮気か?ー離婚制度がないフィリピンという国の男女

50代の男性、20代の彼女が出来、その上子どもまで出来ました。年の差婚、結構なことだと思います。しかし、この話が複雑なのはその男性が既婚者であるということです。
ラテアートでハート型
イメージ、ラテアートでハート型


新しい恋か浮気なのか?

男性(ここではAさんとしよう)は既婚者ですが20代の彼女がBさんがいます。既婚者といいましたが、Aさんは奥さんと長期間別居しており実質の夫婦関係は現在皆無です。

新しい恋が始まったのね、よかった、よかった・・・と言いたいところなのですが、フィリピンでは離婚が制度上認められていないため、別居していても、新しい彼氏や彼女ができた場合、話は大変ややこしいこととなります。

ブログ「フィリピンでは女性の浮気は「罪」なのです」においても説明していますが、男女で適用される法律と罰則がことなり、女性の場合はadultery「不貞・貫通・不倫」(Revised penal code 333)、男性の場合はconcubinage「内縁関係」(Revised Penal Code Article 334)となります。

法的手続きを経て結婚したカップルが、手続きを経ぬまま別居し、その上で婚姻関係以外で男女の間柄になると、法的制裁が加えられます。つまり、単なる「浮気」どころか訴えようと思えば奥さんはAさんを内縁関係にあることを理由とし訴えることができます。

離婚制度がない国

実際夫婦関係がなかったら、早々に離婚したらよいのに?とおもわれます。しかし、上記の通りフィリピンには離婚はありません。

結婚の無効手続き?

しかし夫婦の別離を法的に認定することは可能です。結婚を無効にするという法的な手続きがあります。それはアナルメント(Annulment)と呼ばれる一連の婚姻無効の手続きです。その手続きには弁護士を雇い、夫婦は精神鑑定等をうけ、あらゆる観点から婚姻の無効性を照明していき、最終的に法廷で判事が最終決定します。

この手続きは短くても数カ月、長くて数年を要します。歳月もかかり、弁護士費用などもかさむため、金銭と時間に余裕がない人たちは、正式な手続きをせず、次の「妻」「夫」と実質的夫婦関係を持つことになります。ちなみにフィリピンの現ドゥテルテ大統領も結婚無効手続きをおこなっており、現在の妻は二度目の妻です。

以前、カップルから相談を受けたことがあります。男性は既婚者、しかしその男性曰く妻とはすでに「終わって」おり、彼女との関係をスタートさせたいので婚姻無効の手続きをしたいのだけど、どうしたらいいのかという相談でした。著者、フィリピン人ではないので、こんな質問をされても困ってしまうのですが、簡単な流れ、期間、費用を知っている限り伝え、弁護士と相談することをすすめました。

どうなったのか?結局、その男性は婚姻の無効手続きをせず、妻との関係を維持しているようです。理由は聞いていませんが、その手続きに要する月日と費用の途方のなさ、社会的評価等と彼女との愛を天秤にかけた結果だと思います。結婚を無効にする制度があっても、ハードルは高いようです。

なぜ離婚制度を作らない?

結婚状態で実質的な夫婦関係を築いたら、面倒なことになるのですが、それでも頑なに離婚制度を作らない理由は宗教の故です。国民の80%以上がカトリック教徒ですが、カトリックにおいては結婚は大切なサクラメント(秘跡)です。結婚は大きな恵みであると同時に生涯をとおして実現していく神聖な使命であるため、特に教会における結婚は多くの段取りを経て行われます。

現大統領は離婚の制度化を反対

また、離婚を制度化してしまえば、離婚を容易に選択してしまう恐れがあるため、制度化しない方がよいという議論の傾向があります。現ドゥテルテ大統領は「子どもとカップルに悪い影響がある」として制度化に反対しています。

世論の変化

現在、離婚制度がない国はバチカンとフィリピンのみです。しかし、カトリック系のラジオ番組が1200名を対象にして行った調査によると、39%が離婚法の成立を強く支持し、13%が賛成と、全体で52%が支持しています。また、その中でも若者と女性が離婚法制定を支持する傾向にあります。

他宗教の男女はどうなの?


一方、他の宗教の人(イスラム教徒)は離婚することが可能です。「アナック(ANAK)」という曲でフィリピンのみならず日本でも有名になったフレディー・アギラ (Freddie Aguilar)がイスラム教に改宗した理由は、前妻と離婚して16歳の少女と結婚するためという話があります。また、イスラム教に改宗した友人は夫と離婚し、ムスリムの男性と結婚しています。

離婚法規が下院を通過・・・

2018年3月に離婚法案が賛成票134、反対票57で下院を通過しました。また2019年1月には上院を通過しました。この法律の制定により、再婚が可能となります。また、この法律が制定することで、裁判所が親権の決定に責任を持つようになります。しかし、子どもが7歳以下である場合は、母親が親権を持つことになります。

これまで、離婚に関する法律の制定が議論され、過去には法制定まであともう一歩ということもありましたが、結局制定に至らなかったということがただありました。現大統領がこの法規の成立を反対していることは、離婚法を推進する側にとって大きな懸念となっています。

離婚に至らない夫婦関係を築くことが大切ですが、圧倒的不利益を被る側(子ども等)へのサポートをしっかり含めた離婚を制度化することは大切だと思っている著者としては、離婚法の成立を支持したいところ。今後の成りゆきを見守ります。

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