コペンハーゲン人魚姫像(The statue of The Little Mermaid)は本当にがっかりな観光スポットであるか?

コペンハーゲンに旅行し、これでようやく世界3大がっかり観光スポットが制覇できました。世界三大がっかり観光スポットとは、知名度が高い観光名所にも関わらず、実際その場所にいくとかなりがっかりしてしまう場所をさしています。

その三つとは、ベルギーの首都ブリュッセルにある小便小僧、シンガポールのマーライオン、そしてデンマーク、コペンハーゲンの人魚姫

コペンハーゲンの人魚姫、本当にがっかりなのか?検証したいと思います。

Copenhagen_little_mermaid  コペンハーゲンの人魚姫像
コペンハーゲンの人魚姫像


コペンハーゲンの人魚姫像の背景

デンマークの童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの人魚姫をモチーフにしたブロンズ像です。アンデルセンは人魚姫の他、親指姫、裸の王様などの作者でもあります。人魚姫は1837年に発表された作品です。

「人魚姫」愛の故の犠牲


子ども時代に読んだ人魚姫の話が子ども心にも大変切なく、しかし挿絵の人魚姫がかなり美しく、お気に入りの童話でした。また、ディズニーの「リトル・マーメイド」はとてもあかるく、楽しいものであったため、原作を読まない場合は、ハッピーエンドと思う人もいるかもしれません。しかし大人になり、子ども時代に読んだ人魚姫は、子ども向けにかなりデフォルメされたものであることを知ります。

海の王国の姫は、一目惚れした王子のため、人間となる決断をします。人間になるその代償として舌を切られ、声を失います。流石に、子どもの本ではかなりオブラートに「話をすることができなくなった」と書かれていますが、記述を読むと、ややリアルです。

Stretch out your little tongue, I will cut it off as payment,(略) the witch said and cut the little mermaid’s tongue off – she was mute now, unable to either sing or speak.
(魔女のセリフ)「お前の小さな舌をお出しなさい、これを(人間となるための魔術の)代償として切り落とす」(・・・略)魔女は小さな人魚の舌を切り落とした、これで彼女は、口が利けず歌うことはおろか話すことさえも出来くなった。

また、人間の脚を得たのですが、その脚で歩くときには鋭い痛みが走ります。

Every step she took was, as the witch had said to her earlier, as if she was treading on pointed needles and sharp knives,
魔女がすでに告げていたように、人魚姫が歩をすすめる毎、針と鋭いナイフの上を歩むようである。


王子のためにこれほどの犠牲をはらったのですね。しかし、こんな状態で、どうやって王子と親しくなれるのか、ハンディキャップが多すぎます。

結局、人魚姫は王子を助けたことを告げることができず、王子は他の女性と結婚してしまいます。もし、人魚姫が王子を射止められなかった場合は、海の泡となってしまいます。それを知った人魚姫の姉たちは、人魚姫にナイフを渡し、このナイフで王子を殺したら、また人魚に戻ることができると告げます。

人魚姫は、王子とそのフィアンセが眠るテントに忍び寄り、王子殺害を試みますが、出来ずナイフを投げ出し、自らも身を投げて海の泡となってしまいました。

The little mermaid (略)saw the lovely bride sleeping with her head on the prince’s breast, and she bent down, kissed him on his handsome forehead, (略)looked down at the sharp knife and once more fixed her eyes on the prince, who named his bride by name in his dreams, she alone was in his thoughts, and the knife shook in the mermaid’s hand, but then she flung it far out across the waves, which gleamed red when it fell, so it looked like drops of blood trickling up out of the water. Once more she gazed at the prince with half-glazed eyes, rushed off the ship down into the sea, and felt her body dissolve into foam.
人魚姫は、美しい花嫁は、王子の胸にあたまをのせて眠っていました。人魚姫は、腰をかがめて、王子の美しい額に、そっとくちびるをつけました。
鋭い短刀の切っ先をじっとみて、その目をふたたび王子の上にうつしました。王子は夢をみながら、花よめの名を呼びました。王子の心には花嫁しかいません。短刀が、人魚姫の手の中で震えました。しかし、人魚姫は短刀を波間遠くに投げ入れました。投げた所から赤い光がさし、そこから血のしずくがふきだしたように思われました。もう一度、人魚姫は半分うつろな目で、王子を見ました、その瞬間、人魚姫は身をおどらせ、海のなかへとび込み、身体が泡となるように感じました。


人魚姫には人間のように死なない魂はないのですが、このような「愛」のために自分を犠牲とする行いと持って死なない魂を得るに至ります。死んで、終わりという話ではない所にこの物語の救いがあります。

エンタメでの人魚姫

アンデルセンの人魚姫に着想を得て制作された作品がこれまで何作も発表されてきました。1989年ディズニーの「リトル・マーメイド」は有名ですが、近年では20176に香港と中国合作の「人魚姫」、2018年には「The Little Mermaid (邦題:リトル・マーメイド 人魚姫と魔法の秘密)」として、発表されています。映画が盛んとなる前の時代は、バレエ等の演目でした。

人魚姫の像の誕生


人魚姫のバレエに感銘を受け、世界有数のビールメーカー、カールスバーグ醸造所の創立者の息子カール・ヤコブセンが1909年人魚姫の像の制作を要請、彫刻家エリクセンにより制作され、1913年8月23日公開されました。

このブロンズ像にはモデルがおり、バレエ人魚姫の主役を演じ当時デンマーク王立劇場のプリマドンナであるエレン・プリース。しかし、エレンが裸体のモデルを拒否したため、エリクセンの妻エリーネ・エリクセンが、首から下のモデルとなっています。このエリーネさんの妹さんが岡田眞澄さんのお母さんとのことです。像は、人魚から人間へと変化した様子で足があり、少々のひれが残っています。

芸術テロの標的

この人魚姫、いくたびもの受難を経験しています。京都大学の折田先生像ほどではありませんが、過去にアートテロの標的となり、ブラジャーを描かれたり、頭部が切断されかけたり、イスラム教徒の女性が身につけるへジャブがかぶせられたりといろいろありました。また、海外にも行ったり、デンマークの顔は外交もするようで、海外で展示されたこともありました。

がっかりするか?

がっかりされる理由の一つはいくつかあるようですが、その理由の一つがサイズ。「小さっ」と周りの観光客も漏らしてシましたが、ブロンズ像の高さは1メートル25センチほどで、確かに「小さい」と言えばそうなのでしょう。しかし、数メートルある人魚像はとても想像できません。

像自体よりもその設置場所に問題があるようにも思います。岩の上に設置された人魚像は趣がありますが、そこは絶景ポイントではなく、像の後ろに工場の煙突がみえ、なんともロマンティックな気分台無しです。そして、設置場所が町のはずれにあり、さらに周辺には美しい公園がある以外は何らの施設はありません。
人魚姫の像がある公園
人魚姫の像がある公園
ハーグの友人にコペンハーゲンに行くと言うと、「つまらない町よ」と事もなげに一蹴されましたが「つまらないかどうかは行ってみないとわからない」と返答しました。

実は結構観光客が来ています
実は、がっかりしませんでした。すべての物語がそうであるように制作された時代や作者の背景を反映しているものであるため、それらを知ったあとに見ると、深く楽しめます。

それらの背景を知らずとも、例えば、写真撮影を楽しんだり、人魚姫のロマンがぶち壊しになるような背景にある人間文明の象徴的なものに思いを馳せてみたり「なーんだこんなもの」と言い切ってしまうには勿体ない!

コペンハーゲンを訪れた際にはぜひ「人魚像」をご覧あれ。

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