オランダ総選挙(1) ‐ 台頭する極右政党自由党(PVV)

珍しいこともあるもので、オランダが世界の注目を集めています。注目のその理由は、明日行われる総選挙。

今世界を席巻する大衆政治、それを体現する極右政党の台頭が目立つヨーロッパでその波を止めることができるのか、それともオランダを皮切りにドミノのように極右政党が台頭するのか。フランスの大統領選挙(4月23日、決選投票5月3日)、ドイツの総選挙(9月24日)に先駆けて行われるオランダ総選挙はヨーロッパの政治の行く末を見る、貴重な試金石となっています。

オランダ選挙

オランダは二院制で、下院(150名)と上院(75名)からなる。オランダでは下院に法案提出権などが認められており、国民の直接選挙で選ばれる下院に優位性があります。明日
3月15日は、下院(150名)を選出するための選挙です。

オランダの議会は1918年開始からしばらくは、キリスト教系の連立政権が政権を担ってきました。その後は、「柱状社会」を反映して、過半数をとる政党は現れていません。常に連立政権であり、キリスト教民主同盟(CDA カルバン系政党2党、カトリック系政党1党で結成した政党)は右派の自由党(VVD)は左派の社会民主主義(労働党)と連立を組み、中道政治を作り上げてきました。

キリスト教民主同盟を中心とする連立は、90年代に入って大きく崩れます。キリスト教民主同盟はしばらく政権第一党から離れます。その後2000年代に入りキリスト教民主同盟が再び第一党となりますが、その連立の相手は、ピム・フォルタイン党。ピム・フォルタイン党は、学者であるピム・フォルタインによる極右(本人は否定)政党によって担われました。国民に分かりやすい言葉で話し、オランダ人の内面に深く入り込み”本音”を引き出しました。2002年党首は選挙期間中に暗殺、党首なき政党となり、リーダーを失った党は内紛が起こり、連立政権は5カ月で崩壊しました。

2010年以降は、現政権、マーク・ルッテ率いる、自由民主国民党(VVD)が連立政権を担っています。現在は、自由民主国民党(VVD)と労働党(PvdA)の連立。議席はVVDが41、PvdAが38と79議席を持っています。

影響力を持ち始める自由党(PVV)  

オランダを再びオランダ人の国にする!と公言するウィルダースは2004年、中道右派の自由民主国民党(VVD)を離党して自由党(PVV)を結党。PVV党首ウィルダ―氏は、ウィルダース自由党党首は、反イスラム、反EU、反移民を掲げています。それゆえに、24時間体制の警備をつけており公の場に中々姿を現しません。彼の情報拡散の方法はtwitter、これを通じてこれまでに議会での議論に影響を与えてきました。

https://twitter.com/geertwilderspvv ウィルダ―氏のTwitter
ムスリム女性のヒジャブ着用について、結果としてオランダ下院は2016年12月、一部の公共の場でヒジャブの着用を禁止する法案を可決しており、ウィルダース氏が支持していた通りとなりました。

テレビ討論(3月13日)と首相の記者会見

昨晩、3月13日オランダ放送協会(NOP)で、首相マーク・ルッテ氏と自由党党首であるウィルダーズ氏との公開ディベートが放送され、経済・移民・国としてのアイデンティティについて話され、トルコ外相入国拒否での関係悪化と将来のEUとの関係について中心に議論が展開しました。

■トルコ外相入国拒否問題とは(ちょっと解説)
トルコのエルドアン大統領は3月12日、ロッテルダムでのトルコ系住民集会に参加しようとしたチャブシオール外相の入国をオランダ政府が「治安上の問題」拒否したことを非難し、両国の関係は緊張。トルコでは来月、大統領権限を強化する憲法改正案の是非を問う国民投票が実施される予定で、同氏は欧州に住む多数のトルコ人に賛成を呼び掛けています。(※現トルコ憲法では、行政の主な権限は首相が持っています。)

トルコ側はオランダが謝罪するまで、閣僚レベルの協議を取りやめると宣言。また、イスタンブールにあるオランダ大使館に市民が乱入し、オランダ国旗を引き下ろして、トルコ旗を掲揚するという事件も起こりました。そして、大統領はオランダの対処をナチスドイツのようだと発言。

その発言に対して、ルッテ首相は、大統領の扇動的発言、特にナチス発言の撤回を求め、両者の対立は続いています。この問題の対処で、オランダマーク・ルッテ首相は国としての指針を強く示しましたが、同時に在蘭トルコ人については、ウィルダース氏の久しく訴えている問題であるため、結果としてウィルダース氏に追い風が吹く形となりました。

■ルッテ首相の記者会見
ルッテ首相は3月13日、記者会見の場で「イギリスのEU離脱やアメリカの大統領選挙を思い出してほしい。あのような過ちを再びおかすのはやめよう!大衆迎合主義のドミノを今、オランダで食い止めなければならない。」と訴えました。

さて明日15日の選挙、いったいどうなるでしょうか?
PVVとは連立を組まないとする公言する政党が多いなか、実質PVVが政権を担うそしてウィルダース氏が首相となることはないと見ていますが、主流にならずオランダ政治をそして世論を操っていくことが狙いだとすれば、投票前から既にそれらは達成されていると思います。賢く立ちふるまうウィルダ―氏をかわして政治の右傾化を防ぐにはどうすればよいのか?オランダ人の寛容性の奥に潜む本音を徹底的にあぶりださないといけない時に来ているのではないかと思うのは私だけでしょうか。

ブログ「オランダ総選挙(2) ‐ 自由民主党の勝利、されど危機まだ去らず!


参考サイト
https://www.government.nl


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