「新型コロナウィルス」「COVID-19」「 武漢ウィルス」呼び方、それが問題だ!

世界保健機構(WHO)が3月11日にパンデミックを宣言し、20日以上たちますが、その間、新型コロナウィルスはまたたく間に全世界に広がり、専門家は世界人口の3分の2に該当する人が感染するという試算まであります。

(c)CGTN America
3月18日の記者会見で何回「中国ウィルス」あるいは、特定の国を示唆する発言をしたのかをカウントしたビデオ。

ウィルスの拡散により引き起こされる、保健衛生への危機、社会的困難な状況、経済にもたらされた損害、そしてそれらへの恐怖やいらだちを感じます。こうした中で、感染の発生元とされる中国が初期の対応を誤ったことへの批判、そして、そもそも、(諸説あるが現在の所)中国を起源と言われているウィルスにもかかわらず、なぜ「中国ウィルス」あるいは「武漢ウィルス」と呼ばないのか?という声もあります。

「スペイン風邪」、「日本脳炎」、そこまで古く遡らずとも2012年に流行した「中東呼吸器症候群(MERS)」は、国名こそはないもののその発生地である「中東」が冠されているではないか!とツッコむひとも居ると思います。どうして、COVID-19など、馴染みづらい名前となったのか、また、現在人々はどのようにこのウィルスを呼んでいるのか、まとめました。


命名それが問題だ!ーCOVID-19となるまで


当初、WHOは暫定的な名称として「2019-nCoV」を推奨しました。2019は、ウィスルが発見された年、「n」は新型(novel)、「CoV」はコロナウイルス(corona virus)を指しています。しかし、「2019-nCoV(トゥサウザンナインティーン・ウンコヴ)」とても呼びづらいことから広がりませんでした。

その後、ウィルス学者により組織される、国際ウイルス分類委員会※がウィルスの分離学的知見から、名称を検討し、ウィルスの名称が「SARS-CoV-2」とされました。SARS(サーズ)は「重症急性呼吸器症候群」、CoVは「コロナウイルス」、2は、2番目という意味です。そして、2月11日にWHOがSARS-CoV-2によって引き起こされる病気の名称を「COVID-19」と発表し、各国の主要メディアはこの名称を利用しています。

国際ウイルス分類委員会「International Committee on Taxonomy of Viruses」 (ICTV)※とは、国際微生物学連合 (IUMS) のウイルス学部門下の組織で、分類学的見地から、ウイルスの分類と命名法の認可を行なっている組織です。

COVID-19というネーミングはどこから来たの?

中国、武漢が感染源なのだから、単純に考えると「中国ウィルス」あるいは「武漢ウィルス」と呼んだらよいのではないかと思われますが、WHOは2015年名称におけるガイドラインを設けており、その中で名称に避けるべき言葉を例と共に記しています。

ガイドラインに書かれている名称に含むべきではない言葉

  1.  地理的な場所: 都市、国、地域、大陸(過去に使用された例: 中東呼吸器症候群、スペイン風邪、リフト・バレー熱、ライム病、クリミア・コンゴ 出血熱、日本脳炎)
  2. 人名(例:クロイツフェルト・ヤコブ病、シャーガス病)
  3. 動物または食品の種(例:豚インフルエンザ、鳥インフルエンザ、サル痘、ウマ 脳炎、麻痺性貝毒)
  4.  文化、人口、産業、または職業(使うべきではない言葉として例:職業、軍団、鉱山労働者、肉屋、料理人、看護師)
  5. 過度の恐怖を煽る言葉(例:不明、死、致命的、伝染病)

「中国ウィルス(Chinese Virus)」「武漢ウィルス(Wuhan virus)」は1に該当してしまいます。また、アメリカの政治家が言ったとされる「カンフーのインフルエンザ(Kung flu)」は4に該当します。

病気の名前が理由で、特定の人種、宗教、民族的グループに属する人々に対する差別や反感がおこり、渡航や貿易などへの不当な障壁を生み、家畜の不要な殺害を招いてきたため、これらを避けるためのことでした。

人々は何と呼んでいるのか?

日本のニュースや、政府の公式サイトでは「新型コロナウィルス」という表記が使われています。各国のメディアや政府のウェブサイトでは、WHOの発表したCOVID-19という名称が使われています。毎日ニュースみて、この機械的な名称にかなりなれましたが、ソーシャルメディアで呼ばれる名称、#はそれぞれです。

米国のトランプ大統領は、「中国ウィルス」、ポンペイオ国務長官が「武漢ウイルス」とよんだことが、ニュースとなったことは知られています(これは、背後で中国と米国の政治的なやり取りのあった後のこと)。ソーシャルメディアなどは「#新型コロナウィルス」
と言った中立的な呼び方や、推奨されていない「#武漢ウィルス」「#中国ウィルス」「#中国肺炎」やら、それぞれです。あるいは、CCP coronavirus(中国共産党コロナウィルス)と呼ぼう!とオンラインで請願書を集めて、キャンペーンを行っている人たちもいます。

ちなみに、検索件数で調べていくと、「新型コロナウィルス」の検索結果は約 364,000,000 件 、「武漢ウィルス」では約 47,800,000 件 、「中国ウィルス」では約 58,800,000 件 と言った結果です。

ヘイトをどこまで食い止めることができるのか?

COVID-19、連日のメディア報道で、個人的にはかなり定着した感があります。しかし、この名称もからかいの対象となることは目に見えていて、例えば「COVID-19」をChinese Originated Virus In December 2019(2019年12月に中国で発生したウイルス)であるとか、Chinese-Originated Viral Infectious Disease 2019( 2019年に中国で発生したウイルス感染症)等呼ばれるわけです。どんなに名称から特定の国名を省いたとしても、かならず人々にその特定の国、民族、発生場所等を思い起こさせる誰かがいることは確かです。

新型コロナウィルスの世界的な広がりで、国外では、中国人や中国系と言われる人たちのみならず、アジア系がひとくくりで、差別の対象となっていますが、名称がどこまでこれら差別を食い止めることができるのか?正直わかりません。

ネーミングの力は大きい!でも・・・

一般的に、商品のネーミング(日本語の音の印象、呼びやすさ等)が商品の売上に大きな影響を及ぼすように、名称が与える効果は期待できると思います。「中国ウィルス」や「武漢ウィルス」と呼ぶことを避けることで、直接的に中国籍の人たちに「中国人」=「ウィルス」とならず、そうした罵声を浴びせる輩は経ることが期待されますが、COVID-19と呼ばれて久しい今も、ヘイトが減ったという話は聞きません(そもそも、測定が難しいのですが・・・)。

特に、著者が恐れているのは、ピークが過ぎ去り、人々が「日常」に戻る頃になり、この新型コロナウィルスによってもたらされた健康・経済・社会的な被害をより実感するようになるころ、そのいらだちや怒りの矛先はどこに向かうかということです。

著者は欧州に拠点を置いております。欧州は、現在ウィルスが猛威を振っています。多くの人が亡くなり、多くの人が失業し、経済的な損害を受ける中で、我々アジア人に対する風当たりが強くなること、またそれ以上に暴力を伴った差別が報告されるのではないかと心配しております。

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