大統領施政方針演説=State of the Nation Address、略称SONA(ソナ)が現地時間2017年7月24日に行われました。ドゥテルテ大統領の組閣後初、そして任期2年目の方針演説です。1987年憲法第23章7節の規定により、大統領には1年に1回、議会に対して国の状況を報告する義務があります。
気候変動への対策は急務に行われるべきだが、我々の経済成長を妨げるものであってはならない。我々はまだ産業化の時代には至っていない、我々はその途上にある。それを妨げようとするというのは「愚かだ!」とパリ合意について非難しています。しかし、フィリピンは2030年までに70パーセントの炭素排出量の削減を約束しています。
大統領選当初から訴えてきた大統領有りの連邦制の実現。最終的には国民投票にかけ、またその際にBLL(バンサモロ基本法)もそれに盛り込むべきであると主張しています。フィリピンの地方政治と経済の活性化の起爆剤になりえる連邦制は、これまで多くの政治的な圧力のゆえに深く議論されることなくお蔵入りしていましたので、ドゥテルテ大統領の任期中にその一歩を踏み出せることを願ってやみません。
そして、RH法ことフィリピンの新しいリプロダクティブ・ヘルス法(親としての責任とリプロダクティブ・ヘルスに関する法律:The Responsible Parenthood and Reproductive Health Act of 2012 、Republic Act No.10354)は、避妊の選択肢の保障、中絶した母体の保護(中絶自体は禁止)などを定め、これによって無料または低価格での避妊方法を全国の保健センターで提供されることになり、女性の権利の促進となることが期待されていました。
しかし、フィリピンの憲法には「母の生命と、受胎からまだ誕生しない胎児の生命(the life of the unborn from conception)も等しく保護するものとする」と表記があり、またカトリック教会の強い反対がありました。前大統領べグ二ノ・アキノの署名によって成立した同法を、貧困問題への対策として推し進めていくことを言及しています。
イスラミックステートと戒厳令の延期、マラウィ市の再建
ISを支援する反政府組織との交戦がミンダナオ島マラウィ市で始まって約2カ月、政府軍は現在も最後の武装勢力(100人と約10人の外国人兵士)と交戦中である。それを受けて、先日議会は、ミンダナオ全域に発令した戒厳令を12月31日まで延期する決議を行い、議会の投票の末に延期が決定されました。
約50万人が避難しているが、収容所はその許容量を超え、苦しい生活を強いられています。交戦は終わりに近づきつつありますが、町の再建には莫大な資金が必要であり、また過激な教えがこの地域に根付いていないか、それが今後の再建後の行方を左右することになるでしょう。
麻薬戦争と超法規的殺人麻薬戦争期間中、ドゥテルテ大統領は、幾度となく麻薬関連の犯罪者、ディーラーに対し、公的な場所で脅迫した。大統領は徹底して麻薬ディーラーを一掃することを幾度となく、国民の前で誓いました。
実数はわかりませんが、警察は5,200の容疑者並びに、一般市民が麻薬戦争で亡くなったと発表。うち3,000人が銃で警察と交戦した際の死傷者で、2,000人がバイクを乗り、武器を所持した何者かによる犯行と言われてますが、人権団体が発表した死傷者数は警察の発表以上です。また、大統領が「個人的に」犯罪者を殺害した、あるいは関与した!等の発言、さらにダバオのダバオ・デス・スクワッド(英語: Davao Death Squads、ダバオの死の部隊)と呼ばれる自警団の超法規的殺人に大統領(当時はダバオ市長)が関与した疑いが濃厚でその公聴会も開かれ、大統領の弾劾が試みられましたが、大統領派によりつぶされました。
南シナ海問題と中国
2016年7月12日に下された、南シナ海判決で、中国の訴えは退けられました。南シナ海問題とは、中国が南シナ海の海域や島々の領有権を有すると主張してきた地域と他国との境界線とされる、九段線について、フィリピンが国連海洋法条約の違反や法的な根拠がない権益の確認を常設仲裁裁判所に対して申し立てた仲裁裁判。フィリピンに有利な判決となりつつも、中国との摩擦を避け、中国からの資金援助を引き出すためドゥテルテ政権は判決の尊守を中国に直ちに求めず、実質棚上げしました。
大統領になる前は、フィリピンの排他的経済水域に作られた中国の人工島にジェットスキーで乗り入れて、フィリピン国旗を立てると声高に発言していましたが、その発言はいずこに?
A look at major issues Duterte confronting in his 2nd year
http://newsinfo.inquirer.net/916766/a-look-at-major-issues-duterte-confronting-in-his-2nd-year#ixzz4nkrBXeve
SONA 2017 https://www.youtube.com/watch?v=yFmP-Ie4aAA |
2時間にわたる演説では、犯罪、違法な薬物、政府の汚職の撲滅を主導すると約束しました。また、大統領は、温暖化、早急に対策が急がれるマニラの交通渋滞の緩和策、これまで実現が難しいとされていた連邦制の実現、そして賛否両論あるリプロダクティブ・ヘルス(RH)法の施行についても述べました。
マニラの交通渋滞のひどさは有名ですが、一向に改善する気配はありません。そこで、一度立ち消えとなったパッシグ川のフェリーの活用を推奨しています。立ち消えとなった理由は、フェリーの燃料費が高いためですが、タイのバンコクなどではフェリーや、カナルをボートで結ぶシステムが電車や車の代替として機能しています。実行している国がある故に、実現はそれほど難しくないはずです。数時間の渋滞によって失う損失から考えて、フェリーなど河川の交通網を復活させることは有益なのではないでしょうか。
そして、RH法ことフィリピンの新しいリプロダクティブ・ヘルス法(親としての責任とリプロダクティブ・ヘルスに関する法律:The Responsible Parenthood and Reproductive Health Act of 2012 、Republic Act No.10354)は、避妊の選択肢の保障、中絶した母体の保護(中絶自体は禁止)などを定め、これによって無料または低価格での避妊方法を全国の保健センターで提供されることになり、女性の権利の促進となることが期待されていました。
しかし、フィリピンの憲法には「母の生命と、受胎からまだ誕生しない胎児の生命(the life of the unborn from conception)も等しく保護するものとする」と表記があり、またカトリック教会の強い反対がありました。前大統領べグ二ノ・アキノの署名によって成立した同法を、貧困問題への対策として推し進めていくことを言及しています。
政権2年目、ドゥテルテ政権が直面している課題
政権2年目の現在様々な難問に直面する大統領ですが、以下が就任前後、大きな政策課題となった事項、麻薬戦争、IS(イスラミック・ステート)、東シナ海と、国内の治安問題と外交・安全保障問題が大きな焦点となりました。イスラミックステートと戒厳令の延期、マラウィ市の再建
ISを支援する反政府組織との交戦がミンダナオ島マラウィ市で始まって約2カ月、政府軍は現在も最後の武装勢力(100人と約10人の外国人兵士)と交戦中である。それを受けて、先日議会は、ミンダナオ全域に発令した戒厳令を12月31日まで延期する決議を行い、議会の投票の末に延期が決定されました。
約50万人が避難しているが、収容所はその許容量を超え、苦しい生活を強いられています。交戦は終わりに近づきつつありますが、町の再建には莫大な資金が必要であり、また過激な教えがこの地域に根付いていないか、それが今後の再建後の行方を左右することになるでしょう。
麻薬戦争と超法規的殺人麻薬戦争期間中、ドゥテルテ大統領は、幾度となく麻薬関連の犯罪者、ディーラーに対し、公的な場所で脅迫した。大統領は徹底して麻薬ディーラーを一掃することを幾度となく、国民の前で誓いました。
実数はわかりませんが、警察は5,200の容疑者並びに、一般市民が麻薬戦争で亡くなったと発表。うち3,000人が銃で警察と交戦した際の死傷者で、2,000人がバイクを乗り、武器を所持した何者かによる犯行と言われてますが、人権団体が発表した死傷者数は警察の発表以上です。また、大統領が「個人的に」犯罪者を殺害した、あるいは関与した!等の発言、さらにダバオのダバオ・デス・スクワッド(英語: Davao Death Squads、ダバオの死の部隊)と呼ばれる自警団の超法規的殺人に大統領(当時はダバオ市長)が関与した疑いが濃厚でその公聴会も開かれ、大統領の弾劾が試みられましたが、大統領派によりつぶされました。
南シナ海問題と中国
2016年7月12日に下された、南シナ海判決で、中国の訴えは退けられました。南シナ海問題とは、中国が南シナ海の海域や島々の領有権を有すると主張してきた地域と他国との境界線とされる、九段線について、フィリピンが国連海洋法条約の違反や法的な根拠がない権益の確認を常設仲裁裁判所に対して申し立てた仲裁裁判。フィリピンに有利な判決となりつつも、中国との摩擦を避け、中国からの資金援助を引き出すためドゥテルテ政権は判決の尊守を中国に直ちに求めず、実質棚上げしました。
大統領になる前は、フィリピンの排他的経済水域に作られた中国の人工島にジェットスキーで乗り入れて、フィリピン国旗を立てると声高に発言していましたが、その発言はいずこに?
南シナ海判決に特大の中華人民共和国国旗を広げ抗議する中国人観光客 ハーグ、Peace Palace前で撮影 |
様々な挑戦があるようですが、ドゥテルテ政権も2年目に突入です。議論がある死刑の復活についてもたびたび言及しています。来る数カ月でまたそれらが議論に上ることでしょう。
著者は、ドゥテルテ政権が勧めている連邦制への進展があることを願ってやみません。そして、一日も早く麻薬戦争が終焉することを願うばかりです。
参照リンク
A look at major issues Duterte confronting in his 2nd yearhttp://newsinfo.inquirer.net/916766/a-look-at-major-issues-duterte-confronting-in-his-2nd-year#ixzz4nkrBXeve
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