子どもが幸せな国、オランダ

セーブ・ザ・チルドレンのインデックスによると、オランダは子どもたちが住み、育つ幸せな国トップ5に入っており、またWorld Happiness Report(世界幸福度調査報告)などの調査でもオランダは常にトップ5に入っています。2013年には、オランダの子どもたちは、「世界一幸せな子ども」たちとして、メディアに取り上げられ、注目されました。

「子どもが幸せな国オランダ」と知られて久しいこの頃ですが、なぜオランダの子どもが幸せなのか、改めて考えてみたいと思います。

海岸で遊ぶこどもたち
ぱくたそ(https://www.pakutaso.com) 写真:たつや

ストレスの少ない(小)学校

学校教育でのプレッシャーが少ないのがオランダ教育の特徴といわれています。現在は分かりませんが、宿題がない、あるいは少ないようです。学校教育は4歳から始められますが、読み、書き、などをその時点しっかり教えこむのではなく、あくまで興味を持ったら、勧めるようにしています。

例えば、4歳の時点で読み書き算数に興味を持ったら、教員は教材を与え、こどもの興味に合わせて学ばせますが、他の子どもたちは恐らく他のことをしていたりします。オランダでは、子どもたちが「頭がよくなる」ことよりも、子どもがストレスなく「簡単だと感じること」を大切にしているようです。

幸せな両親と幸せな子ども

オランダは週の労働時間が短いと言われています。パートをうまく取り入れつつも、パートも正社員と同じ福利厚生があるため、正社員と異なるのは、就労時間と、そこから生じる給与差のみとなります。それゆえに、子育て期間中は、仕事の量をへらしライフ・ワークバランスを考えた仕事を考えることができます。正社員でも定時で帰宅できるケースが多いため、親子そろって食事の時間をもつこともできます。

また、女性のみが育児を担うのではなく、父親も育児を引き受けます。著者が滞在当初不思議に思っていたのが、平日の日中、父親が子どもと時間を過ごしていることでした。オランダは日本の発想ー仕事に我々の生活を適応させる、というものとは反対の考え方なのではと思います。生活、家族と過ごす時間に重きを置き、そこから労働状況を作り出す。

自分の意見を表現できる

オランダの子どもたちは、親の言うことを素直に聞くよりも、活動的であり自らの意見を持つことを重要視します。親もそのように、子どもたちが積極的に意見を言うことを促し、聞こうとします。それは、子どもを一人の人間として扱う社会的慣行があるからだと思います。

また、子どもが自分の意見を言えると言うことの背景に、親への信頼と尊敬があります。
「日本とオランダの13歳の日常から見えたもの、中間真一著」のリサーチで、あなたにとっての両親とは?という質問で、オランダで顕著に多かったのが、両親は「自分を信頼してくれている」「幸せそうだ」「意見を尊重してくれる」「尊敬できる」という項目。

そして、親子が共に過ごせる時間が確保されているからこそ、信頼に至る関係を築くことができているように思います。

シンプルな生活スタイル

倹約家のオランダ人、その生活スタイルは至ってシンプル。そのため、お金をかけないことが普通。子どもたちは、昔の日本ながら、そとで自転車をこぎ、公園で元気いっぱい遊び、親が休みの週末は公園にピクニック、サイクリングに出かけたりします。

子どものおもちゃですら、王の日のフリーマーケットで手に入れたようなもの。子どもたちはそのように育つので、回りと比較したりすることがないのだとか。また、子どもたちの間でも「持つもの」「持たぬもの」で比較、差別が少ないと言われています。

外国人から見て、子どもの環境をどう見るか?

オランダで子育てを経験した/しているフィリピン人のお母さん方いわく、自由すぎる、勉強をしっかりしていないから将来が心配、独立する年齢が早すぎる!性に対して開放的だ!と懸念事項があるようですが、教育環境にはおおむね満足という様子です。特に、フィリピン(日本でもですが!)ではお金の有る無しで子どもの教育に大きな差が出ますが、オランダの教育システムではそうなっていません。

日本で実践できることはあるか?

オランダの環境すべてが素晴らしいと単純に称賛はできませんが、日本と比較して、よい部分、生部べき点が多くみられます。最も学ぶべきは、家族生活を基準とした労働環境の改善。せめて定時に親が帰宅でき、子どもと共に過ごせる時間を持てたら、日本の子育て環境は劇的に良くなり、親子ともにハッピーになるのではないかと思います。

しかし、オランダ特有の労働環境、福利厚生のシステム、教育環境が下支えになっている子どもや親の幸せ。これを日本で実現することは難しい!と思われます。政策レベルでの大きな転換がない限りは、親は忙しいため、土日もへとへと。また子ども塾などで忙しく日々を送り、親子で過ごせる時間を定期的に確保することは難しいでしょう。

父親が育児(家事)に参加する時間を増やす
日本の父親は、子どもと過ごす時間の平均が週3時間ほどと言われ、韓国の2.8時間に次いで短い(内閣府)。その時間を増やすために個人の努力でできることは限られてしまいますが、お父さんは平日に1,2回は子どもと食卓を囲める時間を頑張って確保するなどの対処も可能かもしれません。

お父さんの約半数が週49時間は働くという日本の会社で、定時に帰宅することはかなり難しいのですが、それらを実践するお父さんが増えることで、周りの意識も少しでも変わるのではと思われます。また、子どもたちもその日の習い事のスケジュールを避けるようにする等、家族で話し合って決めるというのが、対処策ではないでしょうか。

しかし、親がハッピーで、子どもがハッピーな社会を作るには、いずれにしても労働環境の改善、それに伴う意識改善は急務であると思わざるをえません。


調査について

調査の項目は、5歳以下幼児死亡率、成長を妨げる栄養失調、非就学児童、児童労働、層婚、思春期の妊娠率、紛争による移住、子どもの殺害などが調査の項目に含まれます。
オランダは、適切な幼児期を過ごせる世界37カ国のうちの1つであることがわかります。
オランダは、英国の(22位)、アメリカの(36位)よりも上位にランクされています。

上位10カ国は以下
1. ノルウェイ、スロベニア (スコアがタイ)
3. フィンランド
4. オランダ、スェーデン (スコアがタイ)
6. ポルトガル
7. アイルランド
8. アイスランド、イタリア (タイ)
10. ベルギー、キプロス、ドイツ、韓国

下位10カ国
1. ニジェール
2. アンゴラ
3. マリ
4. 中央アフリカ共和国
5. ソマリア
6. チャド
7. 南スーダン
8. ブルキナファソ
9. シエラレオネ, ギニア (スコアがタイ)

調査の狙い
現在、合計2億6,300万人の子どもが学校に通っていません。そのうちの1億6800万人が児童労働に携わっています。また、報告書によると、1700万人の女児が、10代の出産を毎年与え、健康、教育、経済見通しを危険にさらされています。

参考資料

先進国における子どもの幸福度
2013年12月
https://www.unicef.or.jp/library/pdf/labo_rc11ja.pdf

中間真一、日本とオランダの13歳の日常から見えたもの
http://www.hrnet.co.jp/research/pdf/terra4_3.pdf

内閣府 5.子どもと一緒にいる時間の拡大
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2006/18webhonpen/html/i1315100.html

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