NDFとフィリピン政府の和平交渉延期ー戒厳令の最初の犠牲

昨日OPPAPの和平交渉団から正式に第五ラウンドのNDFとフィリピン政府の和平交渉が延期になったことが発表されました。理由は、ドゥテルテ大統領による5月23日に発令されたミンダナオ島への戒厳令のため、NDF側は武力で応対。戒厳令が解除されない限りは和平交渉は行わない意向を示しました。




第5ラウンドの和平交渉は、5月27日から6月2日の間で予定されていたため、既に両交渉団はオランダに来ており、政府側からの記者会見もオランダ、Noordwijkのホテルにて行われました。


政府側の懸念

政府側の交渉団ドゥレザは、以下の課題と、また深刻な懸念を発表しました。
NDFの軍事組織NPA(新人民軍)によるフィリピン全地域で攻撃、関連する暴力事件が(和平への対話を行っている今も)絶えないこと、和平交渉団であるNDF側のパネルは、実際フィリピンで起こっていることへの影響力がないであろうこと、そして、NDF側が現在起こっている暴力に関して適切に対応しなければ、大統領はいかなる合意にもサインしないと明言していることなどを挙げています。

また深刻な問題は、CPP(フィリピン共産党)が、ミンダナオ島の戒厳令を受けて、政府への攻撃を激化するよう指令を出しているいること。大統領の歴史性とインパクトを無視した戒厳令の発令、”マッチョポリティクス”による暴力が暴力の連鎖を生んでいます。


厳戒令って本当に必要だったのか?

著者は、今現在もテロ組織と交戦が続いているマラウィ市への対応は、軍の特別な作戦展開とインテリジェンスで対応できるはずと考えています。軍のインテリジェンスのユニットは、一般市民にまぎれて情報収集を日々行っています。

ミンダナオは、以下のマップで示すような地域的特性を持っています。異なる反政府組織が点在し、残念なことに今も政府とそれらのグループとの散発的な交戦、あるいは大きく、地域に影響のある氏族間での紛争(RIDO)があり、人々は時にそれらの危険を逃れるため、マニラに移住、あるいは親族の家に一時的に逃れるということがただあります。
ただ、もちろんミンダナオ全体が危ないというわけではありません。


MILF(モロ・イスラム解放戦線), NPA-CPP(新人民軍・フィリピン共産党), ASG(アブサヤフ), その他が点在しているミンダナオ島。しかし、その勢力範囲には異なる勢力が重なり合う地域、犯罪グループも存在している。島の西側はアブサヤフ系のグループ、西側の地域がモロイスラム解放戦線、そして東と北部が新人民軍と共産主義のグループ

治安の安定化を測り、市民の求める平和を実現すべく、アブサヤフグループを除いて、MILFやNPA-CCPなどのグループとは和平交渉が行われていますが、こうした群雄割拠の状況は今も続いています。それを考えると、IS系テロのグループの懸念はあっても、規模を考えインテリジェンス活動で対応できるものであると考えられます。それとも、インテリジェンス活動の結果、その必要性があると言うのであれば、国民に説明すべきでしょう。

なぜ、そこまでして戒厳令を敷きたいのか?

これは、いつもフィリピン国民が絶えず大統領に投げかけるべき質問だと思います。どうせ、”いつも問題があるミンダナオ”の出来事!として考えているうちに、戒厳令は全国に展開される可能性すらあります。


NDFの応対は妥当か?

NDFの歴史、スタンスを考えると今回の交渉への不参加は当然のことで、著者は戒厳令の発令時に予期していました。やっぱり・・・という残念な気持ちですが、これでフィリピン共和国史上3度目の戒厳令の最初の“犠牲”を発生させてしまいました。

NDFは、マルコス独裁政権下でその活動を激化しました。多くの活動家、カトリック教会の神父も運動に身を投じました(NDFのNo2と言われる人物は、元カトリック神父です)。和平交渉は、1987年から開始されていますが、1999年 国民防衛戦線、エストラーダ政権のアメリカ軍との協定Visiting Forces Agreementに反対、また2001年に同団体がフィリピンのテロ団体のリストに掲載されたのを受け和平交渉から離脱している歴史があります。

NDFの和平交渉延期の発表は、同意できます。ただ、彼らの暴力的な行動は決して賛成はできません。

今回の延期がなければ公式・非公式に予定されていた行事がいくつかありました。政党団体のマイグランテによる6月4日のトークイベント、非公式にも行事が控えておりました。それらがどうなるのか、現時点では分かりません。


著者のスタンス

著者自身は、フィリピン人コミュニティでは、限りなくフィリピン人に近い日本人であるため、あくまで外国人という立場を貫き、特定の政党や団体には属さぬ方針です。これはフィリピン滞在時もそう。
あえて聞かれた場合は”プロ・フィリピン”という立場をとり、特定の政党に属さず、加担せず、”フィリピンという国にとってよいと思われることを行う”団体や個人、政治家にはサポートをする立場をとると説明しています。

実はOFWの多くはプロ・ドゥテルテ、そして上記の政党団体マイグランテを支持するOFWは多く、ここヨーロッパでの得票率は高く、さらに彼らもプロ・ドゥテルテです。

著者が不思議に感じるのは、この奇妙な共生関係。ドゥテルテ政権の政治は、軍や警察権力を用いた強権的政治、共産主義のドクトリンと相いれないはず。もちろん、歴史上共産主義が全体主義的政治的体系を持って現れていますが、フィリピンの共産主義ってそういう主張でしたっけ?お互い「暴力」を戦略として使っているという意味では共通なのでしょうが・・・

戒厳令の解除、そして和平交渉の再開を願うばかりです。

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参照

5th round of GRP-NDF peace talks called off; Duterte says no to talks for now
http://www.mindanews.com/peace-process/2017/05/5th-round-of-grp-ndf-peace-talks-called-off-duterte-says-no-to-talks-for-now/

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