[ハーグ観光] ヒューマニティ・ハウス(Humanity House)で避難民・亡命者の生活疑似体験

一見するとカフェのようなおしゃれな作りに、博物館であることが外観から認識されないヒューマニティ・ハウスは、ハーグ市民の憩いの場である野外カフェが広がる広場、ショッピングセンターであるGrote Marktの入り口にあります。

ヒューマニティ・ハウスは体験型の博物館。典型的なオランダ様式の建物の中は、まるで迷路のよう。博物館の大きな特徴は、体験型の展示。来館者は突然の非常事態で、難民・亡命者となります。突然壊される日常から、避難民として逃れ、難民申請していくまで展示物を通じて疑似体験ができます。

登録~亡命者・難民申請者体験

博物館入場者はまずはじめに、氏名・住所・写真撮影し登録を行います。登録情報をもとに、パスポートに似たデザインの身分証明書が発行されます。それを持って、博物館内を歩きます。

Humanity House の入館者登録
ヒューマニティ・ハウスの登録場所
博物館へはみなで一斉に回るのではなく、少人数で館内の展示を見る仕組みになっています。そのため、登録した名前がカフェにあるスクリーンに映し出されるまでは、待機します。

ヒューマニティ・ハウスのカフェ
ヒューマニティ・ハウスのカフェ
カフェの右上のスクリーンに名前が表示するまでここで待機します
名前がスクリーンに表示されたら、機械から発行された登録用紙(展示の最後の方で使用します)カフェ横の階段を地下に下っていきます。そこが博物館の入り口です。

ヒューマニティ・ハウス入り口
薄暗く裸電球一つで照らされる階段を下っていくのはなんとも不気味です。

入り口から少し歩くと、ごちゃごちゃと散らかった家の中の様子が展示。洗濯スペースいっぱいに広げられた洗濯もの、転がっているカバン等。雑然とした部屋、薄暗い照明、ラジオから流れてくる速報で、ハーグの市民は速やかに家から離れ避難するよう放送があります。

散らかった部屋はまさに市民があわてて避難したあと。これをみて2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震後に退去を言い渡された家々を思い浮かべました。

Humanity House 展示 洗濯も半ばに避難する市民
生活臭がする洗濯場は、作業も半ばにして人が去ってしまったことを表しているようです
Humanity House 展示 散らかった部屋
ワインはこぼれ、パソコンやテレビはつけたまま、すぐ戻れるかもしれないと思い避難したのだろうか・・・

散らかった部屋の展示の次は、沢山のドアがある少々不思議な展示。ドアには穴があり、そこからいろんな風景が見えます。破壊された家の風景、人が着の身着のまま避難していく様子、閑散とした通り、積荷が積まれた場所、なんだか分からないけどさびしげな場所。いきなり壊された日常が目の前に現れます。

また、いろんな国の言語も聞こえてきます。そして、おいしそうな食べ物のにおいも。その後の展示は、世界の難民が経験したであろう、事柄を部分的にそして切り取って展示しており非常に象徴的であり、印象的でした。

展示の小さな穴からのぞいた先に広がる光景

入国管理局の前にある小部屋に「あなたは存在しない」というドキッとするような一文があり、目の前の鏡を覗くと、覗いているはずの著者の姿はありません。

避難民になり、自分の住む場所から切り離され、今までの人間関係はなくなり、場所を転々としながら、経済的にも困窮し、ようやくたどり着いた避難先でも安定した生活の保障はありません。難民となり、たちどころに社会から存在しないような存在になってしまう・・・こういう経験をしているのが、難民や亡命者。
姿が映らない鏡
鏡の部屋
「あなたは存在しない」と書かれた表示、鏡の前に立つ著者を映さない鏡。
「私はいまここに存在してない!」と来館者に直感的に思わせます。
やっとのところで辿り着いた先での難民・亡命申請。許可が下りないことも。来館者である著者の書類をファイルに収め、パスポートのような身分証をもって入国管理の面接室のような場所を通り抜けて、常設展示は一巡。


Humanity House 展示 ファイルの部屋
ファイルの保管場所
来館者は、発行された自分のファイルをこのファイルフォルダーに入れます

入国管理国の部屋に通じるドア
この2017年4月末から、オランダに亡命者として渡ってきた人たち個人のストーリーに焦点を当てた展示が行われています。その展示には、いつ自国を離れ、どうやってオランダ来たのか、そのルートがマップとして展示され、そして個々人のストーリーが小さなブースでみられるようになっています。

亡命者・難民のストーリーが聞けるブース
オランダは難民や亡命者の受け入れに対して寛容でしたが、近年は増えるシリア系難民の受け入れの故、アフガニスタンやイラン・イラク地域からの亡命者の受け入れが以前に比べて難しくなったと、知人に聞いたことがあります。

知人は、難民や亡命申請者のサポートをする施設でボランティア活動をしており、そこで会ったイラク人は、帰国後命の危険があるものの亡命者申請の許可が下りなかったといいます。この一例をとってオランダの非寛容さを批判できませんが、シリアからの難民や亡命者が急速に増えたことは事実で、2016年9月時点で6万4千人、2014年はじめには1万5千人だったので、3年弱で約4倍になりました。

まとめ

上記の通り、体験型の同博物館は来館者に強い感覚を引き起こします。文章による説明は一切ないため、問題の背景を知らない人たちはちょっと気後れしてしまうかもしれませんが、展示を見て、聞いて、感性で楽しめる博物館は非常に貴重だと思います。

著者はややもすると、博物館というよりは何かのアトラクションのようにすら感じました。展示は心躍るような楽しいテーマではありませんが、今世界が抱える問題を考えるきっかけを与えてくれます。ハーグにお客さんが来られたら是非、お連れしたい場所です。

ヒューマニティ・ハウス(Humanity House)
ウェブサイト:www.humanityhouse.org
メール:info@humanityhouse.org
連絡先:+31-70 31 000 50
所在地:Prinsegracht 8, 2512 GA Den Haag, The Netherlands
開館日:月曜日:休館日
火曜日~金曜日:10:00-17:00
土曜日・日曜日:12:00 - 17:00
入場料:大人:7,50ユーロ
Museumcard: 無料



Twitter twitter.com/humanityhouse
Facebook www.facebook.com/humanityhouse

Dutch News.nl.(2016).Some 64,000 Syrians are now officially resident in the Netherlands
http://www.dutchnews.nl/news/archives/2016/09/some-64000-syrians-are-now-officially-resident-in-the-netherlands/

Asylum procedure
https://www.government.nl/topics/asylum-policy/contents/asylum-procedure

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