[英国EU離脱] リスボン条約50条って何?(1)

英国のメイ首相は3月29日、Brexit(ブレクジット)に向けて欧州連合(EU)のトゥスク欧州理事会議長に書簡を送り、「欧州連合条約および欧州共同体設立条約を修正するリスボン条約(以下:リスボン条約)」50条に基づいてEU離脱を通知しました。いよいよ英国のEU離脱のための協議が始まっていきます。

EU加盟国在住の身としてEU始まって以来の加盟国の離脱の具体的なプロセス、そして他の加盟国に与える影響、またこれが英国内の問題(アイルランドの問題、スコットランドの問題)の再燃となるのか、気になっています。

英国EU離脱説明ビデオ
The Brexit negotiation process explained
引用:http://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2017/03/29-euco-50-statement-uk-notification/


リスボン条約って何?

昨年2016年6月23日に英国でEU加盟の継続を問う国民投票が行われ離脱派が残留派を上回り離脱が決定しました。しかし、これですぐさま離脱するわけではなく、リスボン条約の50条に基づいて手続きが行われます。しかし、リスボン条約って一体なんなのか、そして50条が意味するものって何か調べてみました。

正式名称は、「欧州連合条約及び欧州連合の運営に関する条約」。2007年に調印され、2009年12月1日に発効されました。これまで3本柱構造*でしたが、EUの統治制度の簡素化、合理化を目指し、それらは一本化されました。ポルトガルのリスボンで発行されたため「リスボン条約」と呼ばれています。

この条約では、機能の効率化のため首脳レベルの最高協議機関である「欧州理事会」、意志決定機関(立法)である「EU理事会」、EU市民から選出される立法と民主的統制機関「欧州議会」、行政機関としての「欧州委員会」、新設でEUにおける外務省「欧州対外活動庁」による国家の枠を超えた独自の仕組みを築きました。

EU独自のガバナンス、日本国外務省ウェブサイトより
引用:外務省(2010年)わかる国際情勢!EU(欧州連合)~多様性における統合、ウェブサイト:http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol53/より


EUの3本柱とは、EUの創設を定めたマーストリヒト条約(1992年2月7日調印、1993年11月1日に発効)にて定義された域内の主要な政策分野を3つに分類し、それぞれを担う欧州連合の構造を柱に例えた枠組み。第1の柱は、EUの基礎ともなっている「欧州共同体」- 経済、社会、環境政策分野。 第2の柱は、マーストリヒト条約に基づく改組、- 外交、軍事分野。 第3の柱「警察・刑事司法協力」- 犯罪対策協力(「司法・内務協力」)



リスボン条約wiki
参考:EUのリスボン条約
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ireland/pdfs/lisbon_09.pdf


リスボン条約50条って何
加盟国が離脱するケースについての記述です。離脱を決めた加盟国は、EU加盟国の代表らで構成されるヨーロッパ理事会(首脳会議)に離脱の意思を通知します。合意内容は、ヨーロッパ議会の同意を得てヨーロッパ理事会が最終決定を行い、同条4項で定める通り、脱退する加盟国を代表する欧州首脳理事会または理事会の構成員は、欧州首脳理事会または理事会の討議および決定に参加しないことが明記されています。3項で交渉が難航し、合意に至らない場合でも理事会が期限延長を認めないかぎり、離脱の通知から2年後にEUの条約の適用が停止となります。正式な離脱は、離脱協定の発効時、離脱国へのEUの条約の適用が停止されます。連合から脱退した国が再加入を求める場合にも応じると、50条には記されています。

この50条に記述される離脱は、いままでのEUでも、そしてその前身であるECCでもなく英国のみならず、EUにとっても大きな挑戦です。

参考ウェブサイト
リスボン条約50条
http://www.lisbon-treaty.org/wcm/the-lisbon-treaty/treaty-on-European-union-and-comments/title-6-final-provisions/137-article-50.html

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