[英国EU離脱] リスボン条約50条って何?(2) - 離脱の争点となること

リスボン条約50条で脱退する加盟国を代表する欧州首脳理事会または理事会の構成員は、欧州首脳理事会または理事会の討議および決定に参加しないことが明記されているものの、英国の外交官は交渉していかねばなりません。

ロンドン 写真:P-fanより


英国離脱で争点となるのは?

英国側の争点は、いかに人の流れを制限しつつ、いかにして金融業などの産業の利益を守れるのか?ということではないでしょうか。

1. 移民問題

移民、英国のEU離脱の大きな理由とされている問題。特に、東ヨーロッパからの移民が英国の健康保険、教育などの恩恵を多く受けていると指摘されていました。ロンドン・スクールオブエコノミクスの調査では、ヨーロッパからの移民の失業率への影響はわずかで、どちらかというと恩恵をもたらしていることが分かっており、離脱派の論拠は崩されてしまいます。

2. 移動の自由
英国人は、ヨーロッパのEU加盟国での居住、就職、ビジネスなどができ、またそれらの加盟国も英国内で同様の恩恵を受けていました。
英国の外交官は交渉にあたり、それらの恩恵を可能な限り維持しつつも、英国への移民の流れを限定したいという思いがあります。

3.貿易
移動の自由であるが故の「一つの市場」。現在32カ国との間で無関税。欧州理事会議長ドナルド・トゥスク氏は、英国に「EUの市場にアラカルト注文(単品で注文する料理)はない」とくぎを刺しています。
同氏はEU単一市場へのアクセスのには、EU域内のヒトの自由移動を含む4つの自由、ヒト・モノ・資本・サービス)が前提となると強調、英国の良いとこ取りを許さない姿勢です。

連携の形を模索するも前例としてあるノルウェーでは、単一市場の一員ですがその対価として、移動の自由としてEUからの人の受け入れをし、財政拠出を行っています。

4.セキュリティISILの脅威にさらされるヨーロッパ諸国、そして先日の英国議会そばでのテロ騒動など、一連の事件、そしてロシアの政治情勢や関係性との問題の故、セキュリティが一番EUと英国で共通項を見つけられるトピックなのでは。everal EU states.

5.金融業英国を本拠地にしている企業がパスポート権(passporting rights)*を喪失。それゆえにEU内の営業所や支社は国別で登録しなければならなくなり、時間と登録のための費用がかかり、結果として企業の負担が増えます。そのため、英国本社のEU圏への移転のため英国では労働機会の損失という可能性も高い。一方で、英語が母語となっている国であるため、金融市場としてのステータスを保つ可能性も高い。いずれにしても、英国サイドはセクターごとの交渉も視野に入れているでしょう。

EUの法律では、加盟国の金融・保険会社は、国別でライセンスを取得しなくても、ブロック全体で、業務を実施し、サービスを販売することができる権利が与えられている。これを「パスポート権(passporting rights)」と呼んでいます。

6.住民のビザステータスの移行問題
120万人のイギリス人がEU圏内で生活しており、320万人のEU国籍者が英国内で生活していると概算されています。英国在住のEUパスポート所有者の処遇については結論を据え置いている様子です。

7. 北アイルランド問題
北アイルランドは、残留派がわずかながら離脱派をうわまった地域の一つ。アイルランドと国境を接する英国領北アイルランド。これまで緩やかであった国境線もこれから厳しくなるようす。そうなると、英国と北アイルランドとの政治的な緊張も高まることが予想されます。


続く>>




*「Brexit」ブレグジット、英国のEU離脱を「Britain=英国」「Exit=出る」にかけて表した造語、

参考ウェブサイト
パスポート権とは何か?
http://www.eu-facts.org.uk/arguments-by-topic/will-uk-financial-services-suffer-from-losing-passporting-rights-after-brexit/

Statement by the European Council (Art. 50) on the UK notification
http://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2017/03/29-euco-50-statement-uk-notification/ 

Article 50
http://www.aljazeera.com/news/2017/03/theresa-set-trigger-brexit-article-50-170329034925333.html



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