知人からのススメ、そしてタイトルに惹かれて数年前に手にした一冊。2011年の発行ながらもまだ新しく感じてしまう。
日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」
日刊マニラ新聞の記者である著者が綿密に行なった取材を元に書き上げた渾身のルポ。
フィリピンに何百人ともいわれる貧困日本人男性。フィリピンパブで出会った女性を追いかけてきた男、偽装結婚でだまされた男・・・本に登場する困窮邦人は5人。それぞれの日本での過去とフィリピンでの現在が綴られている。彼らは日本を“捨てた”のか、それとも日本に“捨てられた”のか。そんな彼らに救いの手を差し伸べたのは、フィリピンでも貧しい人たちでした。
日本外務省の海外邦人援護統計では、2010年に在外公館に駆け込んで援護を求めた困窮邦人の総数は768人、そのうちフィリピンが322人と一位を独走、おそるべしフィリピン。(ちなみに2位はタイで92名、3位はアメリカで62名、4位中国で55名、5位韓国で25人・・)P21
駆け込み人数はこれだけだが、実数はもっと多いことが伺えます。
困窮状態に陥る邦人の理由は強盗にあう、ギャンブルで負ける、ビジネスで騙されるとあるがフィリピンで報告される困窮邦人は、フィリピンパブで出会った女の子に入れあげてフィリピンへ追いかけていった50歳代の男性が多いとのこと。
先日紹介した[映画]フィリッピーナを愛した男たち(1992年) みたいな話です。
数年前、マニラのコミュニティに滞在したときに、[騙された」日本人に会いました。会ったと言いますか、日本人同士なのでコミュニティの人によって紹介されました。来比の理由は尋ねませんでしたが、友人の話とその男性の話を総合してパブの女性を追いかけて来て、騙されたようです。その男性の場合は麻薬の所持・使用の疑いで警察に一度逮捕されているとのことですが、一貫して無罪を主張しているとのこと。
以前に大学生のフリーペーパーYouth Acty!!Vol6で取り上げた「無縁社会」を思い出しました。ひとは、血縁、地縁、社縁(学校)とつながりを持って生きていますが、近年これらは一つを失うことで、脆くもすべて失われてしまうと言われています。失業によって社縁を失い、長年住んでいた土地を離れることで地縁を失い、そして経済的理由などから血縁までも失われてしまう世の中。
この5人の困窮邦人はやはりどれも失ったあるいは自ら手放した人たち。
本書で共感した著者である水谷さんの問題提起。親や自分の生まれ育つ環境を選ぶことはできない。では、選べない中では、幸せは存在しないのだろうか。たとえ貧しい環境に育っても、フィリピン人は家族に囲まれて笑っている。幸せを感じている。少なくて私にはそう映る。逆にお金があっても心の底から笑えない、あるいは不幸や寂しさを感じている日本人は本当はたくさんいるのではないだろうか。その違いは、日本とフィリピンという国や社会的背景の違いだけで片付けられる問題なのだろうか。
日本人が幸せに生きていく上で重要な何かを見失ってしまったのだとしたら、それはなんだろう。家族愛や親族同士の絆、地域社会とのつながり、自分が生まれ育った土地への思い日本という国に対する誇り。それが明確になったところで、今の日本ではたしてどこまで幸せを享受できるだろうか。
考えさせられる書籍でした。
合わせて読んでね>>
フィリピン関係書籍
[書籍] 「フィリピン‐日本国際結婚―移住と多文化共生」‐フィリピン人女性来日の大きな波
[書籍] フィリピン関連必読書― 炎熱商人(上下巻)
[書籍] 日本を捨てた男たち―フィリピンに生きる「困窮邦人」
フィリピン人と結婚(2) - 出席しなけりゃ結婚できない!ファミリープランニングセミナー1
フィリピン人と結婚(3) - 国際結婚と多文化理解に向けて
フィリピン人と結婚(4) - 出席しなけりゃ結婚できない!ファミリープランニングセミナー2
フィリピン人と結婚(5) - フィリピン人との結婚、その良さは?
日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」
日刊マニラ新聞の記者である著者が綿密に行なった取材を元に書き上げた渾身のルポ。
フィリピンに何百人ともいわれる貧困日本人男性。フィリピンパブで出会った女性を追いかけてきた男、偽装結婚でだまされた男・・・本に登場する困窮邦人は5人。それぞれの日本での過去とフィリピンでの現在が綴られている。彼らは日本を“捨てた”のか、それとも日本に“捨てられた”のか。そんな彼らに救いの手を差し伸べたのは、フィリピンでも貧しい人たちでした。
作者: 水谷竹秀
出版社: 集英社
発売日: 2011/11/25
発売日: 2011/11/25
日本外務省の海外邦人援護統計では、2010年に在外公館に駆け込んで援護を求めた困窮邦人の総数は768人、そのうちフィリピンが322人と一位を独走、おそるべしフィリピン。(ちなみに2位はタイで92名、3位はアメリカで62名、4位中国で55名、5位韓国で25人・・)P21
駆け込み人数はこれだけだが、実数はもっと多いことが伺えます。
困窮状態に陥る邦人の理由は強盗にあう、ギャンブルで負ける、ビジネスで騙されるとあるがフィリピンで報告される困窮邦人は、フィリピンパブで出会った女の子に入れあげてフィリピンへ追いかけていった50歳代の男性が多いとのこと。
先日紹介した[映画]フィリッピーナを愛した男たち(1992年) みたいな話です。
写真:ぱくたそ(https://www.pakutaso.com) (c)カズキヒロ |
フィリピンパブで出会った女性にちやほやされて、錯覚して渡比したものの、肝心の彼女には逃げられる、あるいはだまされます。
「俺にもまだ輝ける世界がある」という錯覚から有り金を全て持って渡比してしまう。P22
数年前、マニラのコミュニティに滞在したときに、[騙された」日本人に会いました。会ったと言いますか、日本人同士なのでコミュニティの人によって紹介されました。来比の理由は尋ねませんでしたが、友人の話とその男性の話を総合してパブの女性を追いかけて来て、騙されたようです。その男性の場合は麻薬の所持・使用の疑いで警察に一度逮捕されているとのことですが、一貫して無罪を主張しているとのこと。
「彼らは日本に住めないんですよね。フィリピンが住みやすい。日本では、ああいった人は受け入れてもらえないんですよ。日本じゃ苦しくて生きていけない。こっちじゃ近所の人も『来い来い』と言って一緒に飲み始めて、ちゃらんぽらんな生活が楽しいんですよ。むき出しのリアルが貧困邦人のポートレートのようにさらりと書かれていることに、怖さを感じます。
誰も過去を聞かないし。一生懸命に働いてお金を稼ぐことができない人たちなんだなぁと思って。〔…〕
女、薬にはまっている人が多い。ああいう味を覚えちゃうと駄目なんですよ。人間は堕落していくもんなんだと思いますね。
だいたい、60、70のおじさんを本気で愛してくれる若い女の子なんていませんよ。結局はお金ですよ、お金」p64
以前に大学生のフリーペーパーYouth Acty!!Vol6で取り上げた「無縁社会」を思い出しました。ひとは、血縁、地縁、社縁(学校)とつながりを持って生きていますが、近年これらは一つを失うことで、脆くもすべて失われてしまうと言われています。失業によって社縁を失い、長年住んでいた土地を離れることで地縁を失い、そして経済的理由などから血縁までも失われてしまう世の中。
この5人の困窮邦人はやはりどれも失ったあるいは自ら手放した人たち。
本書で共感した著者である水谷さんの問題提起。親や自分の生まれ育つ環境を選ぶことはできない。では、選べない中では、幸せは存在しないのだろうか。たとえ貧しい環境に育っても、フィリピン人は家族に囲まれて笑っている。幸せを感じている。少なくて私にはそう映る。逆にお金があっても心の底から笑えない、あるいは不幸や寂しさを感じている日本人は本当はたくさんいるのではないだろうか。その違いは、日本とフィリピンという国や社会的背景の違いだけで片付けられる問題なのだろうか。
|
考えさせられる書籍でした。
合わせて読んでね>>
フィリピン関係書籍
[書籍] 「フィリピン‐日本国際結婚―移住と多文化共生」‐フィリピン人女性来日の大きな波
[書籍] フィリピン関連必読書― 炎熱商人(上下巻)
[書籍] 日本を捨てた男たち―フィリピンに生きる「困窮邦人」
フィリピン人との結婚シリーズ
フィリピン人と結婚(1) - 手続き―千里の道も一里からフィリピン人と結婚(2) - 出席しなけりゃ結婚できない!ファミリープランニングセミナー1
フィリピン人と結婚(3) - 国際結婚と多文化理解に向けて
フィリピン人と結婚(4) - 出席しなけりゃ結婚できない!ファミリープランニングセミナー2
フィリピン人と結婚(5) - フィリピン人との結婚、その良さは?
スポンサーリンク
スポンサーリンク