[書籍] 「フィリピン‐日本国際結婚―移住と多文化共生」‐フィリピン人女性来日の大きな波

国際結婚についての書籍はいろいろありますが、フィリピンと日本の近年のつながりを日本人男性とフィリピン人女性のカップルという観点から書かれているのが名古屋学院大学の佐竹眞明さんの「フィリピン‐日本国際結婚―移住と多文化共生」。

この本は「国際結婚が周囲を巻き込んでの国際理解につながるのか」という疑問に完全ではないものの答えてくれているように思います。

この問の設定自体すごく複合的なのですが、夫婦仲のよいカップルになったら、周りが外国人の旦那あるいは奥さんを受け入れ、そしてお互い双方の家族含めて交流し、理解しあえるのか。



書籍:フィリピン‐日本国際結婚―移住と多文化共生


 
作者: 佐竹眞明,メアリー・アンジェリンダアノイ,Mary Angeline Da‐anoy
出版社/メーカー: めこん
発売日: 2006/05

本ではまず、フィリピン-日本カップルが急増した背景、実情、農村花嫁、フィリピン人女性のイメージ、フィリピン人女性と結婚した日本人男性に焦点を当てた異文化体験、フィリピン人女性による地域活動への参加と、データから検証しつつ、日本に未だに根強くある“偏見”-フィリピン人(アジアから来た人たち)はずるい。という概念を解いていきます。

本を書かれた佐竹さんご夫妻も試行錯誤しながら夫婦、家族生活を送ってこられたのだなぁと勝手に思いました。

さて、フィリピン人と結婚する!と聞いて、どういう反応があるのでしょうか?日本人男性の場合だと「フィリピンパブ」などで引っかけたお姉ちゃんと一緒になるのね~と思われるそうです。(実際そのような話を聞いたことが幾度かあります。) 

“引っ掛けた(日本人男性→フィリピン人女性)”あるいは“仕組まれた?!(フィリピン人女性→日本人男性)”というケースはあるのかもしれませんが、実際どれぐらいの件数であるのかはわかりませんし、それぞれの主観です。

在フィリピン日本大使館に結婚届出に行った時、若くてかわいいフィリピン人のお姉ちゃんと、50代後半ぐらいの日本人の男性が届出に来ていました。どこで会ったのかはわかりません。手続きを待っているそのフィリピン人女性、その横で結婚する日本人男性とその友人たちが何やら話しているのが聞こえます。

「奥さん若いね~、いくつ?」 (少々にやけながら。)
「25だよ」
男性は50代後半とのこと。
先日読んだ本の一節をふと思い出しました。
「だいたい、60、70のおじさんを本気で愛してくれる若い女の子なんていませんよ。結局はお金ですよ、お金。」(貧困邦人)

いや、そんなことはない!彼らはアイシアッテイルノダ。結婚するぐらいですから、決意は固いのでしょう。どんな事情で一緒になったのかはわかりませんが、とにかく心の中で「うまくいきますように」と願ってしまいます。なにせ、日比の国際結婚であることは、同じなので、いろんな試練を乗り越えてほしいと思います。


日本人男性×フィリピン人女性、日本人男性がフィリピン人女性と結婚した数5755組(厚生省人口動態2009年調べ)。ちなみにフィリピン女性の国際結婚の国別のデータを見ると、アメリカ5,636人、日本5,146人、オーストラリア1,067人等々続きます(2000年の統計)
配偶者、婚約者の国籍からわかるように、フィリピンが外国、特に先進工業国の男性に女性を供給してきたという“南北問題”的構造がある。つまりフィリピンを含む“発展途上国”=主に南半球の国々=と欧米日本などの北半球との国々にある経済格差が国際結婚という移民・移住の流れを生み出す
 P45。と、本で指摘しています.。
マルクス主義的に説明すると、きっと搾取関係になり、南北問題によって生じている現象を言い表しているとおもいます。社会的不平等は無視できませんが、追記すれば、日本の国内外を問わず、女性の社会動態率は男性よりも高く、社会的適応力は高いため外国籍者との婚姻とその男性の国で生活する率も高まるのではないかとも考えられます。

ちなみに日本人女性がフィリピン人男性と結婚するケースはものすごく低く2009年の調べでは日本人女性がフィリピン人男性と結婚した数156組にとどまっています。ときどき出会う、日本人女性×フィリピン人男性のカップルは、かつて有名であった宗教団体によるお見合い結婚であるという話もちらちら聞きます。

なぜ、日本にこれだけのフィリピン人女性が?ーフィリピン人女性(フィリピーナ)が日本に来始めた背景買春ツアーから、興行の斡旋へ

台湾や韓国から始まった「慰安旅行(売春ツアー)」が国内の強い反対のゆえにタイやフィリピンにシフトしていきました。もちろんタイ、フィリピンでも反対が起こらなかった訳ではなくまたここでも抗議運動が起こりました。

それが日本で大きく取り上げられることで大手旅行会社「慰安旅行」への送客を控えるようになりました。売春ツアーとは大手の旅行会社が日本人の男性対象にフィリピン人女性の「接待・同伴」を目的とした観光ツアーで、実態は団体買春に近いことが行われていたようです。

反対・抗議運動から「観光客」が減ったため、収入減となったクラブや置屋に日本人“観光客”を斡旋していた“日本人業者”がマニラに来た“日本人業者”と手を組んで、日本人→フィリピンという流れから、フィリピン人→日本という流れを作りフィリピン人女性に“興行ビザ”を取らせて日本に呼ぶ流れができました。

興行とは「演芸、演劇、演奏、スポーツ等の興行に関わる活動またはその他の芸能活動」となっている。“興行ビザ”で働く外国人は談笑、お酌、一緒に歌う、手を握る、あるいはそれ以上、接待に従事するおそれがない場所に配置されることになっています。

けど、斡旋する業者は接待させることを目当てにして、日本の入国管理局ですらきっと彼女らが接待に従事させられることを知っているのでしょう。在留資格と現実の乖離が指摘されます。

[映画]フィリッピーナを愛した男たち(1992年) はかなり脚色されていますが、当時の様子がわかります。

農村花嫁

また、過疎化の現状を打開するために農村花嫁、過疎化が進む自治体がフィリピン人女性を日本人農家に嫁入りさせるということが行われてきました。

フィリピンが日本から近く、300年近い植民地の歴史があるため順応力が抜群にいい p71
などがフィリピン人女性が好まれる理由だそうです。確かにフィリピン人女性はフレキシブルです。しかし、上記は国の文化や歴史を無視した発言で驚きを通り越して、怒りしかありません。

小学館のスピリッツで掲載された「愛しのアイリーン」。あくまでコミックですが、少子高齢化、農村花嫁となった外国人嫁の苦悩などの社会問題を取り扱っております。

愛しのアイリーン[新装版] 上

愛しのアイリーン[新装版] 下

作者: 新井英樹
出版社/メーカー: 太田出版
発売日: 2010/12/15
メディア: 単行本
作者: 新井英樹
出版社/メーカー: 太田出版
発売日: 2011/01/20

日本人の持つフィリピン人のイメージ

「フィリピン‐日本国際結婚―移住と多文化共生」にて紹介されている農村花嫁を推奨する役場が作った資料にはアジアの先進国日本のおごりが見られます。

掲載されていた資料を見てびっくりしました。いくつかのポイントが挙げられていましたが②の、国外へ出たことがない、マニラで仕事をしたことがない。勿論マニラを全くしらない女性であること。理由、売春婦ではないことの実証。国外へ出るとお金のために売春するケースが多い。④持病を持っていない、理由の一つは性病でないこと、などなど・・

エンターテイナー、売春行為、違法滞在、お金のために何でもする人たち・・・日本人がフィリピン人と結婚する場合は、「騙されたの」と言われたりすします。フィリピン人はホスピタリティ満点ですから、男女問わずニコニコとして、調子のよいことを言われて、結婚することになったのではないかと思われたりします。いずれにしても、よいコメントは聞きません。悲しい限りです。フィリピンに限らず、タイ人女性と結婚した日本人男性の友人も同じような反応にイラついてるようです。
さて、フィリピン人と結婚した人は「騙された?」のでしょうか。

広く男女は騙し合い、化かし合いというので、広くは騙されたといっても差支えないとは思いますが、国が貧しいから彼らは日本人を騙したり、悪いことをする犯罪予備軍と決め付けるのは短絡的すぎるのではと思います。

アジア系、アフリカ系・・どんな国籍、人種であろうとその人たちに寄り添える人が増える社会が日本にできていけばと思うこの頃です。その小さい国際理解が始まるのが親族関係からなのではと思います。

どうやって偏見をといていくのか、どうやって歩み寄るのか、とくに私の場合は旦那と私の家族が少しでも距離が縮まるように、この本にかかれているような日本人が持つフィリピン人への偏見や誤解の元を知っていくことなどが小さなことですが、できることかと思いました。

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