Marcos is no hero!
これは、故マルコス大統領の英雄墓地埋葬に対する反応です。2016年11月7日、ついに最高裁が故マルコス大統領の英雄墓地(libingan ng mga Bayani)の埋葬について判決を下し、マルコスを英雄墓地に埋葬することが決まりました。
なぜ故マルコス大統領が英雄墓地に?独裁者が英雄であれば、これまでの歴史の独裁者が「英雄」と記されても文句は言えなくなってしまう。
最高裁決定に対して、「法が、感情に勝った」とコメントしたドゥテルテ大統領。マルコス一家との約束を果たし、満足な様子が伺えます。
まずは、現大統領ドゥテルテによる決定のため。ドゥテルテ大統領が故に、マルコス元大統領を英雄墓地に埋葬することを命ずることは、裁量権の重大な乱用とはなされない。また、いかなる法律も埋葬を妨げない。大統領は、権力を公共のためにその領土内で行使することが認められていると結論。
マルコスの遺体はフィリピン国軍の規定に則り、英雄墓地に埋葬されることに。理由は、マルコスは元大統領であり、最高司令官であり、軍人であり、名誉勲章受賞者*でまた国会議員であったため。
不名誉な退役に関しては、英雄墓地での埋葬とはならない。そのため、グループ、市民団体は、EDSA革命で職務、そして国を追われた大統領は、不名誉な退役に該当すると抗議。しかし、これは軍人にのみで、大統領には該当しないと、訴えを退けました。
そして、1992年ラモス大統領時に故マルコス大統領の遺体を亡命先のハワイから故郷のイロコス地方に還すことを許しましたが、遺体の安置場所を変えてはいけないという法的な縛りはないとしています。
つまり、規定に照らし合わせて不可がないので、了承したという法的な技術論で説明しようとしています。
しかし、英雄墓地の意義「大統領、英雄、愛国者のための墓地」から鑑み、そしてマルコス独裁政権時代の傷の故、国民の怒りは収まりません。
フェルディナンド・マルコスは第10代のフィリピン共和国大統領。フィリピンの憲法では大統領の任期は6年、しかし同大統領は21年間、EDSA革命(1986年)に政権が倒されるまで独裁政治を行いました。その間、戒厳令を敷き、反対派を投獄、拷問、殺害。また、不正蓄財も行い巨万の富を築きました。
1986年革命で一家ともにアメリカに亡命、1989年疾患により亡命先のハワイで亡くなります。1992年、当時のラモス大統領の許しを得て、遺体は故郷のイロコス地方(ルソン島北部)に帰還するも英雄墓地への埋葬は許されませんでした。現在に至るまで、腐敗処理された遺体は、マルコス博物館に安置されています。
2016年フィリピンの新大統領に就任したドゥテルテ氏の公約の一つが、故マルコス大統領遺体を英雄墓地埋葬。しかし、国民からの反対は激しく、マルコス政権時の戒厳令の被害者やその遺族の反対、また裁判所への提訴。再度の訴えにも関わらず、上記の決定が下されたのでした。
国民の強い反応の理由は、故マルコス大統領化の圧政と汚職。人権侵害は甚だしく、戒厳令下に活動家、学生とそれと関わる疑いがあるものを誘拐、拷問、レイプ、殺害。国際NGOアムネスティ・インターナショナルによると7万人が収監され、3万4千人が拷問され、3,240人が殺害されたと言います。生存者であっても拷問やレイプの記憶に30年たった今も苦しんでいます。
唇には煙草を押し付けた跡、腕には注射、体はあざだらけ。遺体から臓器は取り除かれており、遺族によれば、性的暴行を隠ぺいするためのものだったといいます。
のちに戒厳令時に誘拐、兵士からかなりの回数レイプをされた女性と話をする機会がありましたが、高齢となる今もその記憶と向き合っています。
30年を経た今もフィリピン政府は、マルコス一家の財の行方を追っています。フィリピン政府が費やした額は220万ドル(2億3千万円)。しかし、取り戻せたのはごくわずか、そして不正蓄財による処罰はなされずに今に至っています。スイスの銀行に蓄財、また政権時代に買収した絵画、海外の土地など、現在もマルコス一家は国に返還していません。
マルコス時代はよかったなどという人に出会うこともしばしばです。マルコス時代はペソも強く、インフラプロジェクト多かったと。また、戒厳令は共産勢力を封じるには仕方がなかったことといい、著者を酷く驚かせます。
マニラ湾にあるCPP、レイテ島とサマール島を結ぶサン・ファニーコ橋などは、マルコス時代の建造物の一例です。現在凍結状態にあるバタアン原子力発電所もしかり。
海外融資で行ったプロジェクトの費用の一部を自らの財産とし、治安維持のためと戒厳令を敷いて、誘拐・拷問・殺害を行ったことを知ってもなお、マルコス時代はよかったと言えるのか?是非マルコス政権はよかったと言っている人に聞きたいところ。
現政権が、麻薬撲滅戦争という名の元で公権力による暴力を許す理屈と似ています。歴史は繰り返されているのでしょうか・・・
もちろん、若い層はそれを忘れ、2016年の副大統領、ボンボンマルコス(マルコス元大統領の息子)が高い得票率で危うく、副大統領になるところでしたが、忘れるには早すぎる+忘れるにはあまりあることです。
と、言わねばならないでしょう。
埋葬の理由は、故マルコス大統領が、大統領であったこと、また一定期間軍に所属していたこと。何より、埋葬理由が現大統領権限なので故マルコス大統領が「英雄」であったからというわけではありませんが、それでも墓地の名前とその設立の由来に問題があります。
人々は、マルコスが埋葬されているという理由のみを覚え、裁判所の判決文のことなど次第に忘れていくでしょう。
マルコス時代の人権侵害や不正蓄財の問題は今も解決されていません。解決を見ぬままに、「英雄墓地埋葬」という事実を形成し、国民を歴史の忘却に導く大統領の選択は完全な誤りです。
また、存命中の妻イメルダ、そして子どもたちにかかる責任も追及すべきでしょう。親の犯した罪を子どもが償うという意味ではなく、4人の子どものうち3人は政界に進出しており、そして独裁政権下で地方行政を担っていました。
れっきとした成人、そして政治にかかわっており、父と母が権力の中枢にいることで多くの恩恵を受けています。
今回の英雄墓地埋葬判決を受けて、ボンボンマルコス議員は「国民の和解が進むことを祈る」とコメントしたそうですが、汚職で得た財を諦めて、謝罪することなしには和解なんて言葉自体が滑稽にさえ聞こえます。
この決定がますます大統領の権威をおとしめることでしょう。国民はある種二分されていますが、これでさらに大統領派と大統領の政策を気にかける人(疑問に思っている人)との亀裂が深まるのではないかと思います。あるいは、これで、この大統領は何かおかしい・・と気づいてくれたらいいのですが・・・
いずれにしても、もし英雄墓地に故マルコス大統領の墓ができたら、墓荒らしが出てきたり、つばをかけたりする人が現れて不思議はないと思います。それを実際やらないまでも、
*マルコス元大統領の名誉勲章授与に対しては、大きな疑問がある。自叙伝で述べたような第二次大戦中の記録はなく、名誉勲章受章に値するのかは大変疑わしいと歴史家は指摘している。
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参照ウェブサイト
PHILIPPINES
Worse than death: Torture methods during martial law
http://www.rappler.com/nation/121365-torture-martial-law-marcos-regime
The $10bn question: what happened to the Marcos millions?
https://www.theguardian.com/world/2016/may/07/10bn-dollar-question-marcos-millions-nick-davies
Supreme Court allows burial of Marcos at Heroes' Cemetery
http://cnnphilippines.com/news/2016/11/08/Marcos-hero-burial-Libingan-ng-mga-Bayani-Supreme-Court.html
Marcos' Medal of Valor 'highly suspicious,' says PH war historian
http://news.abs-cbn.com/blogs/insights/10/18/11/marcos-medal-valor-highly-suspicious-says-ph-war-historian
Marcos' World War II 'medals' explained
http://www.rappler.com/newsbreak/iq/143592-ferdinand-marcos-world-war-ii-medals-explained
マルコスは英雄ではない!
(c) Naval - Ateneo de Naga アテネオ大学、ナガ校やカトリック教会などが共同で行ったデモの様子 学生たちは、「マルコスは英雄ではない」というプラカードを掲げています。 |
これは、故マルコス大統領の英雄墓地埋葬に対する反応です。2016年11月7日、ついに最高裁が故マルコス大統領の英雄墓地(libingan ng mga Bayani)の埋葬について判決を下し、マルコスを英雄墓地に埋葬することが決まりました。
なぜ故マルコス大統領が英雄墓地に?独裁者が英雄であれば、これまでの歴史の独裁者が「英雄」と記されても文句は言えなくなってしまう。
最高裁決定に対して、「法が、感情に勝った」とコメントしたドゥテルテ大統領。マルコス一家との約束を果たし、満足な様子が伺えます。
最高裁の決定とその理由
最高裁判所は、いくつかの点を挙げて、故マルコス大統領の英雄墓地埋葬を決定しました。まずは、現大統領ドゥテルテによる決定のため。ドゥテルテ大統領が故に、マルコス元大統領を英雄墓地に埋葬することを命ずることは、裁量権の重大な乱用とはなされない。また、いかなる法律も埋葬を妨げない。大統領は、権力を公共のためにその領土内で行使することが認められていると結論。
マルコスの遺体はフィリピン国軍の規定に則り、英雄墓地に埋葬されることに。理由は、マルコスは元大統領であり、最高司令官であり、軍人であり、名誉勲章受賞者*でまた国会議員であったため。
不名誉な退役に関しては、英雄墓地での埋葬とはならない。そのため、グループ、市民団体は、EDSA革命で職務、そして国を追われた大統領は、不名誉な退役に該当すると抗議。しかし、これは軍人にのみで、大統領には該当しないと、訴えを退けました。
そして、1992年ラモス大統領時に故マルコス大統領の遺体を亡命先のハワイから故郷のイロコス地方に還すことを許しましたが、遺体の安置場所を変えてはいけないという法的な縛りはないとしています。
つまり、規定に照らし合わせて不可がないので、了承したという法的な技術論で説明しようとしています。
しかし、英雄墓地の意義「大統領、英雄、愛国者のための墓地」から鑑み、そしてマルコス独裁政権時代の傷の故、国民の怒りは収まりません。
マルコス大統領の英雄墓地埋葬問題とは?
フェルディナンド・マルコスは第10代のフィリピン共和国大統領。フィリピンの憲法では大統領の任期は6年、しかし同大統領は21年間、EDSA革命(1986年)に政権が倒されるまで独裁政治を行いました。その間、戒厳令を敷き、反対派を投獄、拷問、殺害。また、不正蓄財も行い巨万の富を築きました。2016年フィリピンの新大統領に就任したドゥテルテ氏の公約の一つが、故マルコス大統領遺体を英雄墓地埋葬。しかし、国民からの反対は激しく、マルコス政権時の戒厳令の被害者やその遺族の反対、また裁判所への提訴。再度の訴えにも関わらず、上記の決定が下されたのでした。
反応―怒る被害者・遺族・国民
怒り、呆れ、そして悲しむ国民によるデモ。そして、「歴史が敗北」したことを悲しむ学者、メディアの反応とさまざまですが、決定に対しては明らかに不服。国民の強い反応の理由は、故マルコス大統領化の圧政と汚職。人権侵害は甚だしく、戒厳令下に活動家、学生とそれと関わる疑いがあるものを誘拐、拷問、レイプ、殺害。国際NGOアムネスティ・インターナショナルによると7万人が収監され、3万4千人が拷問され、3,240人が殺害されたと言います。生存者であっても拷問やレイプの記憶に30年たった今も苦しんでいます。
厳戒令化の被害者―拷問・殺害された女性編集長
マルコス政権時代学生紙の編集長をしていた女性は、紙面でマルコス政権を批判。のち、国軍により誘拐され、キャンプ・クレメの収監施設で遺体で発見されます。遺族は、服毒自殺として軍から報告を受けますが、家族は、女性の体に拷問の跡をみます。唇には煙草を押し付けた跡、腕には注射、体はあざだらけ。遺体から臓器は取り除かれており、遺族によれば、性的暴行を隠ぺいするためのものだったといいます。
潤うマルコス一家とその取り巻き
マルコス一家とその取り巻きをのぞいて潤うことなかった国民経済。マルコス政権20年間に蓄積された富は100億ドル(1兆円)相当。マルコス政権が倒れ、アキノ新政権となった時、マルコス時代の不正蓄財を取り戻すべく、大統領行政規律委員会(PCGG)という組織を立ち上げました。30年を経た今もフィリピン政府は、マルコス一家の財の行方を追っています。フィリピン政府が費やした額は220万ドル(2億3千万円)。しかし、取り戻せたのはごくわずか、そして不正蓄財による処罰はなされずに今に至っています。スイスの銀行に蓄財、また政権時代に買収した絵画、海外の土地など、現在もマルコス一家は国に返還していません。
マルコス時代はよかった?
サン・ファニーコ橋、全長2,600mにおよぶフィリピンで一番長い橋。レイテとサマールを結ぶ。マルコス政権下に日本の援助で建設された |
マニラ湾にあるCPP、レイテ島とサマール島を結ぶサン・ファニーコ橋などは、マルコス時代の建造物の一例です。現在凍結状態にあるバタアン原子力発電所もしかり。
海外融資で行ったプロジェクトの費用の一部を自らの財産とし、治安維持のためと戒厳令を敷いて、誘拐・拷問・殺害を行ったことを知ってもなお、マルコス時代はよかったと言えるのか?是非マルコス政権はよかったと言っている人に聞きたいところ。
現政権が、麻薬撲滅戦争という名の元で公権力による暴力を許す理屈と似ています。歴史は繰り返されているのでしょうか・・・
フィリピン人と歴史への屈辱
現在のフィリピン人は、マルコス大統領は「独裁者」で、フィリピンの発展よりも自らの立場の温存と、身内とその取り巻きが潤うことしか考えておらず、甚だしい人権侵害は大統領がなした数少ないフィリピン人とフィリピン国にとって益となること(?)を帳消しにしてもあまりあることと共有されています。ですので、大統領のこの決定はフィリピン人に対する大きな侮辱で、大きな汚点となるでしょう。もちろん、若い層はそれを忘れ、2016年の副大統領、ボンボンマルコス(マルコス元大統領の息子)が高い得票率で危うく、副大統領になるところでしたが、忘れるには早すぎる+忘れるにはあまりあることです。
故マルコス大統領は決して英雄ではない!
インフラプロジェクト行おうと、華やかな外交を行おうと、マルコス元大統領は独裁者で、
故マルコス大統領は決して英雄ではない!
と、言わねばならないでしょう。
埋葬の理由は、故マルコス大統領が、大統領であったこと、また一定期間軍に所属していたこと。何より、埋葬理由が現大統領権限なので故マルコス大統領が「英雄」であったからというわけではありませんが、それでも墓地の名前とその設立の由来に問題があります。
人々は、マルコスが埋葬されているという理由のみを覚え、裁判所の判決文のことなど次第に忘れていくでしょう。
マルコス時代の人権侵害や不正蓄財の問題は今も解決されていません。解決を見ぬままに、「英雄墓地埋葬」という事実を形成し、国民を歴史の忘却に導く大統領の選択は完全な誤りです。
また、存命中の妻イメルダ、そして子どもたちにかかる責任も追及すべきでしょう。親の犯した罪を子どもが償うという意味ではなく、4人の子どものうち3人は政界に進出しており、そして独裁政権下で地方行政を担っていました。
れっきとした成人、そして政治にかかわっており、父と母が権力の中枢にいることで多くの恩恵を受けています。
今回の英雄墓地埋葬判決を受けて、ボンボンマルコス議員は「国民の和解が進むことを祈る」とコメントしたそうですが、汚職で得た財を諦めて、謝罪することなしには和解なんて言葉自体が滑稽にさえ聞こえます。
この決定がますます大統領の権威をおとしめることでしょう。国民はある種二分されていますが、これでさらに大統領派と大統領の政策を気にかける人(疑問に思っている人)との亀裂が深まるのではないかと思います。あるいは、これで、この大統領は何かおかしい・・と気づいてくれたらいいのですが・・・
いずれにしても、もし英雄墓地に故マルコス大統領の墓ができたら、墓荒らしが出てきたり、つばをかけたりする人が現れて不思議はないと思います。それを実際やらないまでも、
*マルコス元大統領の名誉勲章授与に対しては、大きな疑問がある。自叙伝で述べたような第二次大戦中の記録はなく、名誉勲章受章に値するのかは大変疑わしいと歴史家は指摘している。
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PHILIPPINES
Worse than death: Torture methods during martial law
http://www.rappler.com/nation/121365-torture-martial-law-marcos-regime
The $10bn question: what happened to the Marcos millions?
https://www.theguardian.com/world/2016/may/07/10bn-dollar-question-marcos-millions-nick-davies
Supreme Court allows burial of Marcos at Heroes' Cemetery
http://cnnphilippines.com/news/2016/11/08/Marcos-hero-burial-Libingan-ng-mga-Bayani-Supreme-Court.html
Marcos' Medal of Valor 'highly suspicious,' says PH war historian
http://news.abs-cbn.com/blogs/insights/10/18/11/marcos-medal-valor-highly-suspicious-says-ph-war-historian
Marcos' World War II 'medals' explained
http://www.rappler.com/newsbreak/iq/143592-ferdinand-marcos-world-war-ii-medals-explained
写真
By Spec. 4 Dino Bartomucci - High resolution download from http://www.dodmedia.osd.mil/DVIC_View/Still_Details.cfm?SDAN=DASC8405877&JPGPath=/Assets/Still/1984/Army/DA-SC-84-05877.JPG., Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3197199
By Spec. 4 Dino Bartomucci - High resolution download from http://www.dodmedia.osd.mil/DVIC_View/Still_Details.cfm?SDAN=DASC8405877&JPGPath=/Assets/Still/1984/Army/DA-SC-84-05877.JPG., Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3197199
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