ラマダーン、断食月が始まりました

 先月半ばのこと、規則正しい生活を送っているインドネシア人研究者が昼間頃起きてきてゆったりしているのを見て、具合が悪いのではないかと思わずたずねたところ、その時は断食のために身体を調整しているということでした。

彼はムスリムで、ヒジュラ暦の第9の月であるラマダーンには日中断食をするのですが、そのリズムを作っていたようです。ここオランダは、緯度が高いため夏になると日没まで通常より、かなりの時間があります。夏の間は最大で夜の11:30頃が日没となります。ヒジュラ暦は私たちが使っているグレゴリオ歴とは異なるため、毎年私たちの視点からでは「ずれ」て行くのですが、今年は夏にあたっています。一日約18時間の断食を一ヶ月続けることとなります。
ムスリムの人たちによる勉強会


断食の月は、ラマダンと言われ、この月の日の出から日没までのあいだ、イスラム教徒の義務の一つ「断食(サウム)」として、飲食を絶ちます。ちなみに「ラマダーン」はヒジュラ暦における月の名です。断食といっても1ヶ月間という期間を完全に絶食するわけではなく、日没から日の出までの間に一日分の食事を摂ります。旅行者や重労働者、妊婦・産婦・病人、乳幼児など合理的な事情のある場合は断食を免除されるなど、ひと口に「断食」と言ってもその適用範囲にはある程度の柔軟性と幅を持つと聞きます。その期間旅行する場合は、その期間は追加されるようです。

 断食の習慣は、624年、マッカの大規模な隊商をムハンマドが300人ほどの当時の信者全員と共に襲おうとし、それの阻止にやってきたマッカの部隊を返り討ちにできたことを神の恩寵と捉え、記念したことに始まると聞きますが、ムスリムの友人はこういう期間を設けることで、世の中で食べられない人がいることに思いを馳せることができると言っていました。

 イスラム暦は純粋な太陰暦で閏月による補正を行わないため、毎年11日ほど早まり、およそ33年で季節が一巡するためムスリムは同じ季節のラマダーンを人生で2度経験するそうです。
 ラマダーン月の開始と終了は、長老らによる新月の確認によって行われます。昨年はフィリピンのムスリムの人たちと一緒に仕事をしておりました。断食の開始には親族で一緒にするべきことがあるため、半休が欲しいと彼らは希望して来たのですが、断食が始まる日にちがわからないと言われ、どういうわけかと疑問に思ったのを思い出します。長老・宗教リーダーが、雲などで新月が確認できなかった場合は開始日が一日ずれるそうで、そのため彼らにも正確な日にちがわからないと説明していました。

フィリピン南部、建造中のモスク
断食成立の如何はその行為の意図にかかっていると聞きます。断食をしているのを忘れてうっかり何かを飲み食いした場合は、断食は無効にはなりません。しかし、空腹に耐え兼ねて断食をやめ、飲食物を探したが、日没まで見つからなかったとしてもそれは断食を行ったことにはならないと友人が言っていました。

断食明けを皆で祝う
断食期間中に禁止されている行為は、飲食、喫煙、性行為、投薬(ただし健康上支障をきたす者は断食が免除されるので、投薬もやむをえない)などです。また、自ら口を謹んまないといけないと友人は言います。正しいものを見て、聞いて、人を批判したり、陰口を言ったり、罵ったりするような言葉は言わず、イスラム教徒として正しくすごすべきと言います。一昨年前、ムスリムの若者たちのコーラン勉強会に行っていた時に、ラマダン直前の集まりでその意義の確認がなされ、またラマダン期間中に自分の欠点と向き合うことを其々が誓っていました。

 それにしても世界中のイスラム教徒が一斉に断食をして、試練を共有しているというのすごいことだと思います。ほかの宗教でも断食は行われていますが、勿論皆一斉でも義務でもありません。

 神聖な月が始まりました。

スポンサーリンク

スポンサーリンク

0 件のコメント :

コメントを投稿

Subscribe