2019年11月、ローマ法王が38年ぶりの来日が報じられました。カトリックやそうでない人も多く、ミサに出席し、法王の発言に耳を傾けました。映画「2人のローマ教皇（The Two Pope）」そんなフランシスコ法王が法王となる前後の内面、過去の回想と危機にあるカトリック教会を史実を織り交ぜながら描いたヒューマンドラマ。ドラマは、現フランシスコ法王とベネディクト16世との対話で構成され、回想場面も含まれドラマチック。お正月映画としてNetflixで視聴しました。
のち 、バチカンは多くのスキャンダルに見舞われます。カトリック司祭による性的虐待のスキャンダル、その対応は多くの非難を受けます。
一方、ベルゴリオは枢機卿という立場を辞する意思を個人的に伝えるためにローマへ。ベルゴリオは辞任を伝えるために教皇との対話にのぞみますが、対話はお互いの立場の違いを明確に示す場となり、決裂します。同晩、2人はお互いの考え方の違いを脇に置いて、音楽の話から、どのようにして、神父となったのか、個人的なことについて会話をかわします。しかし、結局ベルゴリオは教皇に辞任の手紙を受け取ってもらうことは出来ませんでした。
再び、ベルゴリオはバチカンのシスティナ礼拝堂で教皇とする機会を得、教皇庁を辞任する意図について打ち明けますが教皇はベルゴリオが教皇を選出する選挙（コンクラーベ）で2位であり、教皇の後継者となる可能性があることを示唆し、辞任の意思を退けます。
しかし、ベルゴリオはアルゼンチンの軍事独裁政権の時代、司祭たちを守ることができず、結局アルゼンチンのイエズス会の首長としての地位を失い、最も貧しい人々の間で普通の教区司祭として10年間奉仕する命令によって追放された過去を打ち明け、法王という立場にはふさわしくないことを述べますが・・・。
" We are losing people"「我々は信徒を失っている」という言葉にあるように、キリスト教では最大の信徒数を誇るカトリック教会ではあるものの、その数は減少傾向にあります。
理由は、文化的な世俗化の進展、教会の儀式等への疑問、信仰を捨てた後にくる新たな自由の感覚、信じ込まされた信仰の否定、宗教を持たずに倫理的な生活ができるという確信、道理にかなった議論や証拠を示されたことで起こる信仰への再評価などが、離教の理由になるとのこと。
映画では、“I believe that giving communion is not a reward for the virtuous,” “it is food for the starving.”ベルゴリオは「聖体拝領は、善良なものに対する“報償”ではないと思っている」「これは"飢える”ものにたいする食事」である。
聖体拝領とは、ミサで受けるパンのことですが、再婚者や離婚者は「離婚者、再婚者へのサクラメントは、夫婦は永遠に離れてはならないというカトリック教義とは一致しない」ため拝領することができません。しかし、フランシスコ法王は「現地の司教が個々のケースを審査してサクラメントを与えるか否かを決定すればいい」として、これまでの神学を覆すような見解を発表しています。
法王が勅令を出せばよいという向きがあるものの、文化や法制度にまたがって存在するカトリック教会にとって、全世界的なルールを定めることは難しいことは容易に想像できます。
投票は匿名でされ、集計後の投票用紙は燃やされます。システィナ礼拝堂に取り付けられた煙突から黒い煙が出た場合は、教皇決まらなかったことを意味します。
現法王フランシスは、２００５年のコンクラーベの候補であり、前法王の次点でした。法王と選出されるためには７７票を得る必要がありましたが、２００５年のコンクラーベでは、現法王は４０票を得ています。
ベルゴリオ枢機卿と教皇ベネディクト16世は、ベルゴリオの引退について話し合あったのか？
そのような史実はなく映画をドラマチックにするための演出とのこと。しかし、司教が定年である75歳に近づくと、教皇の最終処分のために辞任を提出する必要があり、教皇は司教の在職期間を延長するか、辞任を受け入れるか決めます。 （ベルゴリオ枢機は、ブエノスアイレスで育ち、枢機卿として司教職を務めた場所からそれほど遠くない家にあるシンプルなアパートを選び、すでに退職の計画を立てていたといわれています。）
教皇ベネディクト16世はオレンジファンタが好か？
ピアノを弾くときにファンタグラスをよく飲んだようです。 The Young Catholicブログ（2010年）によると、教皇は毎日少なくとも4缶のソーダを飲むほどのファンタ好きだったようです（糖分のとりすぎですね）！ファンタは もともとはドイツで作られた飲料であったためといわれていますが、定かではありません。
アルゼンチンの軍事政権中のベルゴリオの行動の描写はどれほど正確か？
これらのシーンは、ベルゴリオの生涯にの期間とほぼ一致しています。当時、イエズス会は貧困地区での活動を行っていましたが、ベルゴリオは、自分たちの安全のためにスラムでの仕事を辞めるように自分の管轄下にある神父に言うものの、断れています。活動を続けた結果、ジャリックス神父とヨリオ神父が1976年に誘拐、拷問されます。ベルゴリオは彼らを救うことを試みていますが、失敗しています。ベルゴリオは、後にヤリク神父と和解し、映画の一シーンのように一緒にミサを行いました。
聖職者の内面に触れるという意味でも大変意味深いものでした。映画の中での話ですが、ヴェネディクト16世が「I cannot hear His voice（私は神の声が聞こえない）」と告白します。そういうこともあり、それを口に出して言えるのかと、少しだけ驚きました。
宗教的な映画なのかと思いつつもエンターテイメントとして楽しめ、内容・文脈もかなり興味深いものでした。カトリック教会と縁がないという人にもオススメできる映画です。
https://www.americamagazine.org/arts-culture/2019/11/27/two-popes-whats-fact-and-whats-fiction?fbclid=IwAR09WMd_QMprNO3DOkaVkzjI4fJcZaq2CST2E67fGzmVsaIls9Nqm4bNQHI
教皇フランシスコ効果？！フィリピン滞在のローマ教皇
あらすじ
2005年4月、ブエノスアイレス大司教ベルゴリオ枢機卿（現法王フランシスコ）は、教皇ヨハネパウロ2世の死後、新しい教皇を選出するためにバチカン市国に召集されました。ベルゴリオは、一部の教会の刷新、改革を推進する枢機卿によって支持されますが、最終的にはドイツのジョセフ・ラッツィンガー枢機卿が教皇（ベネディクト16世）となります。のち 、バチカンは多くのスキャンダルに見舞われます。カトリック司祭による性的虐待のスキャンダル、その対応は多くの非難を受けます。
一方、ベルゴリオは枢機卿という立場を辞する意思を個人的に伝えるためにローマへ。ベルゴリオは辞任を伝えるために教皇との対話にのぞみますが、対話はお互いの立場の違いを明確に示す場となり、決裂します。同晩、2人はお互いの考え方の違いを脇に置いて、音楽の話から、どのようにして、神父となったのか、個人的なことについて会話をかわします。しかし、結局ベルゴリオは教皇に辞任の手紙を受け取ってもらうことは出来ませんでした。
再び、ベルゴリオはバチカンのシスティナ礼拝堂で教皇とする機会を得、教皇庁を辞任する意図について打ち明けますが教皇はベルゴリオが教皇を選出する選挙（コンクラーベ）で2位であり、教皇の後継者となる可能性があることを示唆し、辞任の意思を退けます。
しかし、ベルゴリオはアルゼンチンの軍事独裁政権の時代、司祭たちを守ることができず、結局アルゼンチンのイエズス会の首長としての地位を失い、最も貧しい人々の間で普通の教区司祭として10年間奉仕する命令によって追放された過去を打ち明け、法王という立場にはふさわしくないことを述べますが・・・。
映画を通じて垣間見る法王庁を取り巻く今
進む教会離れ
映画は、現法王の過去に触れ、内面の旅を描いたものですが、法王庁が今も行っている協会の刷新活動、スキャンダルとなった司祭による性的虐待にも触れています。" We are losing people"「我々は信徒を失っている」という言葉にあるように、キリスト教では最大の信徒数を誇るカトリック教会ではあるものの、その数は減少傾向にあります。
理由は、文化的な世俗化の進展、教会の儀式等への疑問、信仰を捨てた後にくる新たな自由の感覚、信じ込まされた信仰の否定、宗教を持たずに倫理的な生活ができるという確信、道理にかなった議論や証拠を示されたことで起こる信仰への再評価などが、離教の理由になるとのこと。
再婚者・離婚者への聖体拝領問題について
映画の中で、ベネディクト16世とベルゴリオ枢機卿は、カトリックの教義の根幹に触れる問題で議論を交わします。その一つが再婚者や離婚者への聖体拝領。映画では、“I believe that giving communion is not a reward for the virtuous,” “it is food for the starving.”ベルゴリオは「聖体拝領は、善良なものに対する“報償”ではないと思っている」「これは"飢える”ものにたいする食事」である。
聖体拝領とは、ミサで受けるパンのことですが、再婚者や離婚者は「離婚者、再婚者へのサクラメントは、夫婦は永遠に離れてはならないというカトリック教義とは一致しない」ため拝領することができません。しかし、フランシスコ法王は「現地の司教が個々のケースを審査してサクラメントを与えるか否かを決定すればいい」として、これまでの神学を覆すような見解を発表しています。
性的暴力スキャンダルについて
神父による性的虐待については、全世界的に何十年あるいはそれ以前から問題となって久しいものの、これまでのバチカンは、事実の隠蔽とも取られかねない対応をとってきました。現法王は被害者と面談し、また公式な場において、被害者への謝罪をしました。また、会議を招集してこの問題に対処すると決めました。法王が勅令を出せばよいという向きがあるものの、文化や法制度にまたがって存在するカトリック教会にとって、全世界的なルールを定めることは難しいことは容易に想像できます。
法王庁やカトリックの疑問に少し答える映画
純粋に映画として楽しめるものの、カトリックではない限り、設定が少々わかりづらいこの映画。どうやって神父になるのか、司祭やら枢機卿やら階級を示す用語も出てきたけど、一体何のこと？法王ってどうやって決まるの等々は少々おさらいする必要がある気がします。神父までの道のり
神父になるためには約10年かかります。神学校に入学する歳は、高卒が条件ですが、フィリピン等では、高校生活を営みながら、神学を勉強する道もあります。しかし、それらを通過したもの全てが神父となり聖職者の道を歩むわけではなく、途中で辞めるものもいます。ローマ教皇ってどうやって選ばれるの？
バチカン市国にあるバチカン宮殿内のシスティーナ礼拝堂にて、教皇の選出を投票により行われます。参加できるのは枢機卿で、77以上の投票数を得られた枢機卿が教皇になります。投票の様子は一切公開されず、投票期間中、投票者たちは外界との連絡を一切絶ちます。投票は匿名でされ、集計後の投票用紙は燃やされます。システィナ礼拝堂に取り付けられた煙突から黒い煙が出た場合は、教皇決まらなかったことを意味します。
イエズス会とか、フランシスコ会って何？
「修道会」と呼ばれる、カトリック教会内の組織で、異なる教派ではありません。共同生活（修道生活）を送る信者らの共同体で、創立目的や活動分野がそれぞれ異なります。日本で宣教活動を行ったイエズス会は、教育活動、宣教事業、社会正義事業の3つを活動の柱としています。著者がかつて務めていた大学もイエズス会系の大学でした。フランシスコ会は、服従、清貧、童貞を戒律としている会で、聖職者による一切の「所有」を認めていません。映画と史実との違い
ベルゴリオ枢機卿は、２００５年の法王選出（コンクラーベ）の候補者であったか？現法王フランシスは、２００５年のコンクラーベの候補であり、前法王の次点でした。法王と選出されるためには７７票を得る必要がありましたが、２００５年のコンクラーベでは、現法王は４０票を得ています。
ベルゴリオ枢機卿と教皇ベネディクト16世は、ベルゴリオの引退について話し合あったのか？
そのような史実はなく映画をドラマチックにするための演出とのこと。しかし、司教が定年である75歳に近づくと、教皇の最終処分のために辞任を提出する必要があり、教皇は司教の在職期間を延長するか、辞任を受け入れるか決めます。 （ベルゴリオ枢機は、ブエノスアイレスで育ち、枢機卿として司教職を務めた場所からそれほど遠くない家にあるシンプルなアパートを選び、すでに退職の計画を立てていたといわれています。）
教皇ベネディクト16世はオレンジファンタが好か？
ピアノを弾くときにファンタグラスをよく飲んだようです。 The Young Catholicブログ（2010年）によると、教皇は毎日少なくとも4缶のソーダを飲むほどのファンタ好きだったようです（糖分のとりすぎですね）！ファンタは もともとはドイツで作られた飲料であったためといわれていますが、定かではありません。
アルゼンチンの軍事政権中のベルゴリオの行動の描写はどれほど正確か？
これらのシーンは、ベルゴリオの生涯にの期間とほぼ一致しています。当時、イエズス会は貧困地区での活動を行っていましたが、ベルゴリオは、自分たちの安全のためにスラムでの仕事を辞めるように自分の管轄下にある神父に言うものの、断れています。活動を続けた結果、ジャリックス神父とヨリオ神父が1976年に誘拐、拷問されます。ベルゴリオは彼らを救うことを試みていますが、失敗しています。ベルゴリオは、後にヤリク神父と和解し、映画の一シーンのように一緒にミサを行いました。
聖職者の内面に触れるという意味でも大変意味深いものでした。映画の中での話ですが、ヴェネディクト16世が「I cannot hear His voice（私は神の声が聞こえない）」と告白します。そういうこともあり、それを口に出して言えるのかと、少しだけ驚きました。
参照ウェブサイト
‘The Two Popes’: What’s fact and what’s fiction?https://www.americamagazine.org/arts-culture/2019/11/27/two-popes-whats-fact-and-whats-fiction?fbclid=IwAR09WMd_QMprNO3DOkaVkzjI4fJcZaq2CST2E67fGzmVsaIls9Nqm4bNQHI
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