海外旅行・長期滞在、狂犬病ワクチン接種って必要?犬に噛まれたらどうする?ー狂犬病を正しく知ることでリスクを軽減する

海外旅行や海外長期滞在時、狂犬病ワクチン接種は必要か?という質問を受けることがしばし。犬と接することなんてないから大丈夫!と思われますが、厚生労働省検疫所のウェブサイトを参照すると、1か月以上海外に滞在する場合は、狂犬病ワクチン接種することが推奨されているようです。

野良犬が暖を取る様子
トビリシ市内の野良犬。お店の前で丸くなっています。

狂犬病とは

狂犬病は狂犬病ウイルスに感染した動物の唾液等から主に咬傷により感染する致死性の高い人獣共通感染症で、ヒトを含め哺乳類すべてが感染し、狂犬病は一度発症すれば、致死 率はほぼ100%という恐ろしい感染症です。

ほぼ100%とされている理由は、狂犬病発症後に奇跡的な生還を果たしたアメリカの女子高校生やブラジルの少年の症例があるためですがまだ、医学的には明確にそのメカニズムは解明されていないとのことで、犬に万が一噛まれてしまった場合は早急な措置が必要です。

狂犬病の感染から発症までの期間は、一般的には1か月から2カ月。発熱、頭痛、倦怠感、筋 痛、疲労感、食欲不振、悪心・嘔吐、咽頭痛、空咳等の感冒様症状ではじまるため、2006年に狂犬病に感染し発症、のちに亡くなられた60代の邦人男性2名も感冒の症状で病院で受診しています。

咬傷部位の疼痛、知覚異常、筋の攣縮。脳炎症状は運動過多、 興奮、不安狂躁から始まり、錯乱、幻覚、攻撃性、恐水発作等の筋痙攣を呈し、最終的には昏睡状態から呼吸停止で死にいたります。

トビリシの野良犬
日向ぼっこするトビリシの野良犬
犬の耳たぶについているタグは、狂犬病の予防接種を打ったという印。
トビリシ市内を徘徊する野良犬のほとんどはおっとりしており、そしてとてもフレンドリーです。ですが、そういう犬ばかりではないので、ご注意を。

狂犬病ワクチン接種は必要か?

狂犬病にかかった動物に噛まれる等の前に予防のために受けおくワクチンを暴露前接種といい、冒頭で一ヶ月海外(特に狂犬病がよく報告される場所に旅行・滞在する場合)接種が望ましいと紹介したものはこれを意味します。噛まれてしまった後に受けるワクチン接種が暴露後接種です。

暴露前接種

暴露前接種では、ワクチンを4週間隔で2回皮下に注射、そして6-12ヶ月後に追加接種します。そのため、海外への長・中期滞在を予定している場合は、最低半年前からワクチン接種をはじめる必要があります。もちろん、海外の病院でも行っていますが、国内で終えておくと安心でしょう。有効期間は2年間で、費用は15,000円ほど。

有効期間は2年間ですがこの期間犬に噛まれるようなことがあっても接種を受けなくてよいというわけではありません。暴露前接種を受けても、暴露後接種は必要です。

万が一犬に噛まれてしまった場合は、暴露後接種は2回(0、3日)とされていますが、暴露前接種を受けた時期によりその回数が変わる場合もあります。曝露前ワクチン接種が1年以内であれば、曝露後ワクチン接種は2回(0、3日)、1~5年前であれば3回(0、3、7日)、5年以上前であれば曝露前ワクチン接種を行わなかったときと同様に5回とされていますが、いずれにしても、旅行にはいつ、どこで、接種を受けたのかという記録をもって行く必要があります。



暴露後接種

暴露前接種をしておらず、犬などに噛まれてしまった場合は、第1回目を0日として、以降3日後、7日後、14日後、30日後および90日後の計6回皮下に注射しなければいけません。

また、暴露後接種を受ける前に行う措置として、傷を石鹸と流水で15分以上洗うこと。咬傷後24時間以内の処置が必要です。そして一度措置をはじめたら必ず終えること。万が一海外でワクチン接種をはじめ、その途上日本に帰国するようなことがあっても、日本国内の医療機関で必ず接種を終えること。

尚、狂犬病に罹っている犬などの小動物は、10日ほどで死亡するため咬んだ犬が10日以上生存していれば、狂犬病ウイルスに感染していないと判断されるそうです。しかし、野良犬の場合はそれらを確認することは困難です。

ワクチンで感染の可能性はありますか?

狂犬病のワクチンときくと、少々びびってしまいます。なぜなら、ワクチンとは病原体は生きているものの、病原体のウイルスや細菌が持っている病原性を弱めたものだからです!
狂犬病のワクチンについて、専門の先生に「ワクチンでの感染の可能性」を尋ねた所「不活化(微生物やウイルスの持つ増殖機能を化学処理などによって無効化したもので感染性のないように)させたものを使用している」ため大丈夫であると説明をうけました。

ワクチン接種以外のリスク軽減策はあるか?

ワクチン接種が推奨され、流行地に中長期滞在する場合は接種を考えることも肝要ですが、リスクを軽減させることを第一に考えるほうが現実的かもしれません。

まず、野良犬には近づかない。とは言うものの近づいてきた場合で明らかに敵意がないときは、無視してやり過ごすこと。パニック状態になり、間違っても走って逃げたりしないこと。犬は走るものを追う習性があります。そして目を合わせないここと。犬が緊張して、攻撃性が増します。

ただ、明らかに犬が攻撃体制に入っている様子が伺えるときー逆毛(犬の背中の毛が立っている状態)になっている、耳が寝て頭にぺったりする場合等は、注意です。もし、襲われてしまうようなことがあったら、絶対顔と首は守ること。

まとめ

1950年に狂犬病予防法が制定されてから7年後、日本では狂犬病を撲滅することができました。その後、1970年ネパールで狂犬病にかかった邦人が亡くなって以降、邦人の被害者が報告されることはありませんでした。しかし、2006年にフィリピンから帰国した邦人男性が2名狂犬病を発症して亡くなり、実は脅威は去っていないことが再認識されました。

実際、全世界150カ国以で症例が報告されており、95%はアジアとアフリカ地域で報告されており、年間約5万9人が亡くなっています。多くは、貧困層が犬に噛まれた後の対処を遅れたため、発症にいたり、亡くなっていることを考えると、この感染症を正しく理解して、早急に措置を取ることで、感染のリスクを低減することが出来ます。

狂犬病が多く報告される場所に長期に渡り滞在する場合は、狂犬病の暴露前接種を受けることが推奨されています。心配である場合は接種を検討されるのが良いでしょう。しかし、何よりも危険をさける行動をとること、犬を刺激しないこと。万が一噛まれてしまったら、きれいな水で洗い、すぐに病院に行くこと。大丈夫などと決して思わぬことです。

参考ウェブサイト
世界保健機構 https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/rabies

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