[ハーグ観光] 監獄博物館(Museum de Gevangenpoortl)(2) - 博物館の気になる展示物は?

監獄博物館(Museum de Gevangenpoortl)には、通常展示のコーナーとツアーによる解説付きでのみ見学可能な場所があります。そのため、ツアーに参加するのがベスト。

監獄博物館展示物、拘束具
監獄博物館展示物、拘束具


館内ツアー

ツアーは定期的に行われており30~40分ほどで、留置所、伯爵の監房、受刑者の作業場所、屋根裏部屋、拷問用の部屋などを巡ります。

ガイドによる館内ツアー
館内ツアーは平日はオランダ語のみでおこなっており、土日の特定の時間のみ英語で行われます。オランダ語のツアーに参加する場合は、手のひらにのるほどの小さなガイド機械とパンフレットがもらえます。機械から流れてくる説明は英語ですが、館内説明のパンフレットは日本語があります。機械は便利ですが、オランダ語のガイドがガンガン解説する中イヤホンから聞こえてくる英語の説明はかき消えますので、説明は離れて聞くのがよいかと思います。

留置所
留置所は、狭くそして暗く、冬場は寒く、衛生面状態の悪い部屋でした。多いときには15人が収監された留置所はわずか5畳ほどの広さ、そしてトイレもその中にあります。


監獄博物館の監獄の様子


伯爵の監房
お金持ちの囚人用の独房です。コルネリス・デ・ウィットが収監された部屋です。家具は自宅から運び込まれ、暖炉も完備し、おいしい食事と飲み物が用意されていました。費用は、もちろん囚人が支払います。寝心地のよさそうなベッドは、一般の留置所とは天地の差。まるでホテルのような一室にびっくりです。

監獄博物館 伯爵の監房
お金持ちの囚人用の独房
コルネリウスの2週間の滞在費は227ギルダー(当時の職人の一年分の給与に相当します)

拷問監房
自白を引き出すために、明らかに有罪と思われる容疑者に対して口頭尋問以外の方法が許されました。寝台に縛り付けられたまま身体を引き伸ばす拷問、手や足、指などをネジで絞めつけたりしました。

監獄博物館 拷問監房
拷問監房
この当時も拷問による自白は信頼に足らぬとして、容疑者は拷問中とおなじ自白を
拷問後もしなければなりませんでした。



前述のコルネリウスもこの部屋で拷問を受けており、激しい拷問にも身の潔白を貫き「私をばらばらにひきさいてみろ。私のうちにないものはどうやっても出てこない」(監獄博物館、パンフレット)と叫んだと言われています。

日本語のパンフレットによると、裸にされ細い釘を身体に打ちつけられ、後ろに手を縛りあげられたコルネリスは、両足の親指に25キロの重しをつけられ、上下に揺らされました。その後も拷問は続き3時間以上鞭打たれ、身体に食い込む細い糸で縛られました。激しい拷問は、コルネリウスが立って歩けなくなるほどでしたが、拷問官も精神的にまいってしまい、のち死の床でコルネリスの未亡人に許しを請う手紙を書いたのだとか。

現在は、拷問されたら、犯していない罪も認めてしまうことがあり、一般的に拷問による自白は信頼がおかれず、また国際的には国連が「拷問等禁止条約-拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約 」を定め禁止し、国内的には憲法36条*で禁止されています(日本の現在の憲法解釈では死刑は拷問に該当する残虐刑には入らないのだとか)。*日本国憲法36条:公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

博物館の展示物

ガイドツアーの前後に、通常展示物を見ることができます。建物の作りの関係で、建物はいくつもの小部屋に分かれており、まるで迷路のようでそれもまた新鮮に感じます。

拷問器具や処刑に使われた器具
罪の自白を引き出すため、人を罰し、政治的偏向のあるものを再教育させたり、復讐のためなどの理由に自由を奪い肉体的・精神的に痛めつけ、苦痛を与えるための拷問が行われてきました。

サイドのネジで締め付ける仕組みの拷問器具
また、オランダでもギロチンは使われており、博物館に高さ3メートル、幅は恐らく1メートル半ほどのギロチンが展示されているほか、処刑に使われた斧等も展示されています。

死刑は見せしめ、公衆の前で行われました。

判事の部屋
暗い留置所と比較して明るい判事の部屋。このホフ池に面する部屋の窓越しに、民衆に刑罰が知らされました。

監獄博物館(Museum de Gevangenpoortl)の判事の部屋
監獄博物館(Museum de Gevangenpoortl)の判事の部屋は明るく、ホフ池
に面しています。家具もその当時の様子を再現し、美しく留置所と同じ建物にある部屋とは思えません。


この部屋には、天秤を持つ女神の像が置かれています。天秤は法の象徴。しかし、その天秤を持つ女神の目は目隠しされています。

監獄博物館(Museum de Gevangenpoortl)の判事部屋の女神
監獄博物館(Museum de Gevangenpoortl)の判事部屋の女神の天秤
目隠しの女神の意味することは、現在にも通じるかもしれません。


まとめ

権力装置としての監獄は、使用された拷問器具や処刑のための器具を見、明らかに不利に進む政治犯の取り扱い、権力のあからさまな乱用に今も変わらぬ人間社会の一側面を見て暗い気持ちになりましたが、これも歴史の一幕。

訪問者はふと歴史の中での人間の普遍的性質を見、同時に進歩についても考えたのではないかと思います。振り返れば「目には目を」の同害復讐法からはじまった、「逸脱行為」のコントロールは後に法が導入されることで、被害者遺族や個人による直接的復讐から、法に則った裁きを下すようになりました。しかし、それは完全な意味での公正を意味せず、権力者に乱用されてきました。コルネリウスの例などがそれにあたるのではないでしょうか。そうした歴史を経て、現在の三権分立のシステムが導入されました。

そんな歴史の流れを振り返りながら現代のニュースを見聞きすると、また違う気づきが出てくるのではないかと思います。

博物館は、ウィレム5世ギャラリー(Galerij Prins Willem V)に隣接。セットチケットも販売されています。


監獄博物館(Museum de Gevangenpoortl)
ウェブサイト:https://www.gevangenpoort.nl
メール:info@gevangenpoort.n
電話:070-346-0861
所在地:Museum de Gevangenpoort, Buitenhof 33, 2513 AH Den Haag、オランダ
開館日:火曜日~金曜日:10:00-17:00
  土曜日、日曜日:12:00-17:00
休館日:月曜日
入場料:
大人:10,00ユーロ
子ども(12歳以下) 6,00ユーロ
CJP/Cultural Pass 7,50ユーロ
Rotterdam Pass/ミュージアムカード/ICOM/Vereniging Rembrandt: 無料
Ooievaarspas/PEP-pas:5,00ユーロ
Ooievaarspas children3,00ユーロ

団体料金
大人(最低人数15名):9,00ユーロ
子ども : 4,25ユーロ

参照リンク

外務省ウェブサイト
拷問等禁止条約(拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する条約)、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/gomon/





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