家計を支えるフィリピン人の小ビジネス―サリサリストアの謎

フィリピンを旅行すると必ず目にするのが、サリサリストア。サリサリとは「種々の」という意味で、調味料(塩、砂糖)、米、シャンプーや歯磨き粉、洗剤、お菓子やジュースなどを小分けで販売している小売店。

取り扱われている物資は、店舗の規模によりますが多様で、50点から大きなところで200点ほどになります。一般的フィリピン人の多くが利用しており、生活の一部となっています。

至るところで見つけるこのサリサリストア。見ての通り、これで大きく儲けよう!ということになりませんが、本当に家計を助けられるほどもうかっているのか?気になるところです。実際にはコンスタントに利益を出しているところと、そうではないところがあります。最悪のケースではビジネスが立ちゆかず潰れてしまうところもただあります。
sarisari store in the Philippines サリサリストア
サリサリストアに所狭しと並ぶ商品
商品が店頭に並んでいるタイプのサリサリストアは稀です。
大抵は店内にあり、店番の人がお客さんに商品を取ってあげるようになっています

どのような仕組みか、うまくいっていないサリサリストアにはどんな問題があるのか、利益を生み出すにはどうしたらよいのか、それらをまとめてみました。

1. サリサリストアのビジネスの仕組み

仕入れ
商品の仕入れ先は、Pure Gold やSMなどの大手のスーパーマーケットです。個人経営のため、問屋などで安く仕入れられるわけではありません。時に一家で消費するにはかなりの量の商品を購入する人たちがレジに並んでいる姿を目にしたことがあるかもしれませんが、それらの人々、サリサリストアの仕入れという可能性もあります。
稀に、サリサリストアで組合を作り、グループとして問屋からまとめ買いをすることができている場所もあるようです。

値段の付け方
大手スーパーでまとめ買いされた、インスタントコーヒー、スナック菓子、調味料には購入価格に対してプラス1~5ペソほど料金が上乗せされます。例えば、一口サイズのビスケットは10個入りのパックの物をばら売りしサリサリストア価格は7~10ペソ、仕入れ価格は5~6ペソほどです。そう、サリサリストアの純利益はそれほど大きくありません。

良い稼ぎとなる商品はないのか?
とりわけ実入りが大きいビジネスではありませんが、プリペイド式電話にクレジットを送るサービスは、需要が常にある商品です。利用者のチャージ額は10~30ペソほどが平均的(著者がサリサリストアの台帳を調べ、自らも店番をしてみての結果)。

サリサリストアのオーナーは、一日に一度、あるいは数日に一度サリサリストアにクレジットを販売しているお店に行き、1,000ペソ程度のクレジットを購入します。一日で1,000ペソ分のチャージが売り切れることもあります。特にクリスマスなどのシーズンは売れゆきがよいです。1,000ペソの投資に対して100~200ペソほどの儲けになります。

儲かるのか?

上述しました通り、大きな儲けがないサリサリストアですが、うまく運営しているところとそうではないところがあります。うまくいっていない理由はまず、帳簿をつけていないこと、ツケ払いの客が多いこと、仕入れが戦略的ではないことです。また、個別の理由として、家族の構成員が勝手にお店のものを持って行ってしまうことです。家族は支払いません。

しかし、小分けの品々値段は、かなり小さく、シャンプー(6ペソ~)、ジュース200ミリ(10ペソ~)などで、仕入れを差し引いて、一つの商品に対して1~2ペソの利潤を得られることができます。

サリサリストアはつぶれてしまうのではないか?と疑問が湧きます。

はい、実際、商売が成り立たなくなり、つぶれてしまうところが結構あります。単純に薄利多売という理由ではありません。実際、サリサリストアの販売価格は、スーパーの2~6割増しの値段です。うまく商売すれば、店を維持できるどころか、家計の助けになる儲けが期待できます。

2. サリサリストアがつぶれてしまう理由

理由その1:帳簿をつけていない
サリサリストアビジネスは大きな元手も必要なく、家の軒先をちょっと改良することでできます。そして、安売りをしている町のスーパーなどで品物を買いそろえて、店頭に並べてビジネスを始めることができます。

しかし、帳簿つけを行っていない店が多く、お金の出入りの管理が甘く、赤であるのか黒であるのかすらわかりません。
また、売上=儲けと理解している人もいるといい、そのため訓練と帳簿つけの習慣の定着が必要です。

理由その2:つけ払いの客が多い
小売販売であるため、一つ一つの品物の値段は微々たるものですが、それでも支払えない人はいます。そこで出てくるのがツケ払い。ご近所さんであれば、口頭での約束となり、支払いを最終的に行わないお客さんもいます。10人に1人がつけ払いをするというデータもあるのだとか。

ツケは小さいものでは5ペソから100ペソあるいはそれ以上/1人 にもなるときがあり、一日の売り上げが、数百ペソ(小さい店舗では300ペソほど)という店舗もあり、このツケばらいの蓄積がビジネスの存続に大きく関わります。

理由その3:仕入れが戦略的ではない
売れている商品とそうではない商品を売り手側が理解してないこともただあります。売り上げのよいものを仕入れること、また収益率のよい電話のローディング(フィリピンでは電話が前払いの人が多く、電話に通話代をチャージしている人がかなりいます。)などと組み合わせていかないといけませんが、そう意識して行っている人ばかりではありません。

3. サリサリストアのチェーン化?

HAPINOY ウェブサイト
全国に40万店舗はあるサリサリストア、40万のオーナーは日々の暮らしのためにと商売をしているのですが、上記のような理由で儲からず、安定した収益を得ているストアは少なくありません。

そこで、若き実業家がマイクロ・ベンチャーズHAPINOYという団体立ち上げ、サリサリストアの経営者にノウハウを教える、そしてチェーン化に乗り出しています。

上記のような問題点を改善すべく、トレーニングし、サポートすることで、売り上げを伸ばした店もかなりあるようです。

どんな人がお店のオーナーなのか?

サリサリストアのほとんどが家族経営。店頭に立っている人は、主婦、年配の女性であることが多いです。つまり正規の仕事についていない家族構成員が、子育てなどの合間などに店番をしています。

サリサリストアを始める動機はもちろん、家全体の収入増です。サリサリストアで稼げる額は限られているので、この仕事一本で家計を支えているわけではありません。サリサリストアの純益は恐らく2,000~3,000ペソほど。(お客さんがひっきりなしに来ても、田舎のシンプルなサリサリストアですと、純利益は一日100ペソ前後)

例えば旦那さんがトライシクルドライバーである場合、収入が会社勤めのひとのように大きいわけではありませんので、月に数千ペソの収入があることは大きな助けです。
映画「ローサは密告された」でも、主人公のローサがサリサリストアを切盛りし、旦那さんは電気工として得られるわずかな収入の足しとしています。

最後に

サリサリストアは一般市民の経済活動を支えており、個々の店舗が正常に経営と運営を行うことで、多くの人の生活が改善されると思っています。

オーナーの多くは大学どころか、高校すら出ていないということもあります。そのため上記のように簡単な利益計算ができないということもあります。

しかし、そんな人たちもいったん店を持てばオーナーです。そして、大きな収入とは行かないまでも、定期的な収入が入ることで、①日々の生活の出費や子どもの学校にかかる費用が払えるようになり、②ビジネスを通じてオーナー(多くは女性)も自信をつけていきます。

お金はもちろん、日々の生活のため、そして万が一のため、多いに越したことはありません。これは否定しません。しかし、オーナーたちは大概は大きな野心はなく、日々の営みに必要な収入があることを望んでいます。

先月末に、ハーグでフィランソロピーのワークショップに参加し、そこで紛争地での経済活動に話が及びました。紛争地あるいは紛争地に近い地域でどういった経済活動が必要かと話が及びました。援助関係者が、大企業の理解・援助が必要だと言っていましたが、著者は反対はしないものの、なぜ、ビジネスが大規模である必要があるのかと疑問を投げました。「大きい企業が数個入ってくるよりも、小さい企業や個人のビジネスが健全に育つのが先なのでは」ないかと・・・

サリサリストアを見て、生活者の知恵と、可能性を見ました。

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